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第66話 貴族としての気概


ティアーナがディオス領存続を希望してから三日間、目まぐるしく過ぎていった。


アーナス男爵夫人は領民に戦況を発表し、戦地の領兵の代わりに戦地に赴く老人を五百名募集した。戦況の噂はすでに広がっていたためか大きな混乱もなく、意外にもすぐに募集枠以上の希望者が集まった。わずかな報酬を目当てに志願してきた者が多く、ほとんどが女性、それも老婆だった。戦地の家族を早くディオス領へ戻してあげたい、そんな思いもあったようだ。


アーナス男爵夫人は、ディオス領主邸の広間で作戦会議を開いた。冒険者側からはタカシとセルマ、そして奴隷紋を入れているカリン、ミオ、メグが出席し、ディオス領側からは夫人の他に娘のティアーナも出席した。アーナス男爵夫人の後ろにはメイドのイーアス、ティアーナの後ろには栗毛の少女が立っていたが、護衛のようなもので会議に参加しているわけではないようだ。


会議が始まって早々に、ティアーナから獣人族を攻撃したことへの謝罪がなされた。簡単なものではあったが、貴族から奴隷への謝罪としては異例のことだった。


次にアーナス男爵夫人から戦況が説明され、今後のディオス家の方針が示された。そして、戦地から騎士を含む兵士が帰還しても、魔物の対応はタカシたち冒険者に任せることで合意された。これにより、タカシの懸念材料だったティアーナや騎士によって仕事が奪われる心配が当面なくなり、タカシは安堵するのであった。


タカシから、魔物討伐の進捗状況と一時避難している村民の帰還日について説明がなされた。帰還日に関して、アーナス男爵夫人から一週間前倒しするよう指示が出た。タカシはセルマと相談し、一週間の前倒しを了承した。


現在タカシたち冒険者が使用している拠点の村は村人が戻るため、拠点の移動が話し合われた。候補地について議論され、壊滅した十七の村のうち、魔の森に面した四つの村の使用許可が出た。アーナス男爵夫人から、魔の森からの魔物流出を絶対に起こさないことへの厳命があった。


会議は特に問題なく終わった。ティアーナは謝罪以降、借りてきた猫のように静かに会議を聞いているだけだった。


会議の後、アーナス男爵夫人から王国と獣人族との戦争についての雑談があった。今回の戦争は虎人族長ガリウスの手引きで、ガリウスのライバルにあたる獣人族二部族から五部族を殲滅するものだったが、王国は終戦を目指して落としどころを探しているとのことだった。


珍しくミオが口を開いた。「氏族長選出において、ガリウスのライバルだった族長はガリウスの軍門に下りました。それによって氏族長はガリウスに決まりましたので、獣人族の内乱はないと思われます」


アーナスは目を見開き、ミオの情報に驚いて「情報に感謝します」と短く礼を言うのであった。


三日後、ティアーナは五百人の老人を連れて、複雑な顔で戦地に戻るのであった。その行進は遅く、とても戦地に向かう集団には見えなかった。


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