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第61話 シスターリオン


教会は、町の中心から少し離れた場所にあった。王都の教会に比べるまでもなく、小さく質素な印象だ。教会の裏には、さらに質素な木造の建物がある。飾りもなく窓もない倉庫のような建物で、入り口付近では複数の子供たちが話をしたりじゃれ合ったりしている。直感で孤児院だろうとタカシは考えた。


タカシが教会に入ると、祭壇で作業をしていた金髪で髪の長い修道服の女性が、こちらに気づいて笑顔を向けてきた。タカシは笑顔を返し「はじめまして。魔物の討伐依頼を受けている冒険者パーティーでリーダーをやっているタカシです。留守の間、リオンさんに仲間が回復魔法をかけてもらったりとお世話になったと聞いたので、お礼をと思いまして……」丁寧に挨拶するのであった。


この女性がリオンだった。二十代前半の笑顔が可愛く、話しやすそうな雰囲気がある。彼女はタカシに挨拶を返し、魔物討伐の労をねぎらってくれた。しかし、タカシが距離を縮めようと近づくと、リオンは少し後ずさりして警戒が感じられた。イーアスが余計なことを吹き込んだのだとタカシは勘ぐった。


だが、ボアの肉を差し出すと「子供たちが喜びます」と笑顔で近づいて受け取った。その様子を見て、タカシは内心勝ったと笑顔になった。


リオンは、ディオス男爵がSクラス冒険者だった頃、同じパーティーにいた僧侶ローガンの娘だという。ローガンは、ディオスが叙勲されて領地をもらった時にこの領地の司祭として赴任した。現在、司祭のローガンはリオンの兄と共に領軍として戦争に参加している。その領軍の壊滅の知らせが届き、男爵の娘ティアーナとリオンの母セシリア、他五百名が救援に向かった。そのため今は、リオンが一人で教会と孤児院を見ているとのことだった。


タカシもまた、リオンの労をねぎらった。


「遊び盛りの子供たちの世話は大変でしょう。彼らも修道士になるのでしょうか?」


「才能がある子には、その道もあります。ただ、ほとんどの子は一般の仕事をするようになりますね」


「僧侶にも才能が必要なのですね」


「厳しい修行で神聖魔法が使えるようになる人が多いですが、何となく使える人もたまにいるんですよ」


「どうやったら神聖魔法が使えるのか、よくわかっていないのですか?」


「教皇は、神様を信じ、より身近に感じ取れる人ほど神様からの恩恵を受けやすいとおっしゃっています」


「なるほど……」


「お忙しいとは思いますが、毎朝の祈祷などを通じて信仰を深めてください」


タカシはあわよくば神聖魔法を使いたいと考えていたが、信仰と言われると具体的にどうすればいいのかわからず、リオンの勧めに対して曖昧な返事をするのであった。


その時、教会の両開きの大きなドアが勢いよく開いた。開けたのはイーアスだった。イーアスはタカシに走り寄り、荒い息のまま言った。


「ティアーナ様が、戻られました。絶対に領主邸には近づかないでください」


(殿下が戻ったなら、男爵は無事だった?いや、そうとは限らないか……。ただ、間違いなく具体的な情報がわかったはずだ)


「ティアーナ様に、挨拶はしなくていいのか?」


「あなたは、自分の立場をわかっていないのですか?」


イーアスは殺意をむき出しにしてタカシを睨んだ。タカシはイーアスの真意はわからなかったが、これ以上怒らせたくない思いから引き下がった。


「わかった、しばらく領主邸には近づかないようにする!だが情報は欲しい。戦場の状況を教えてもらえるか?」


「ある程度わかりましたら、こちらから知らせに行きます……」


イーアスは妥協する形で、嫌々ながら承諾するのであった。


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