第52話 獣の皮
タカシは九層で一人、ひたすら狩りを続けた。少しでも食費の足しにしようと、資金集めを重視した無茶な狩りだ。陽が沈むまで狩りをして、一日の収穫を冒険者ギルドに持ち込むと、獣の皮がまさかの買い取り拒否だった。
ディオス領に行く前まで高騰していた獣の皮が、このタイミングで買い取り拒否。ギルドの受付嬢に食い下がり、理由を問い詰めた。受付嬢は詳しい理由はわからないが、在庫過多による買い取り拒否で、ギルドの倉庫にも山積みになっているため仕方がないとのことだった。
獣の皮は様々なものに加工されるため需要がなくなることはないが、今までの高騰の方が異常だったようだ。受付嬢が言うには、買い取りが再開されても以前のような高額には戻らず、銅貨百枚程度になるのは間違いないとのことだった。「低層でのドロップ品としてはそれが適正価格です」と付け加えられた。
タカシは集めた獣の皮を家に持ち帰り、シャロンに買い取り拒否されたことを話した。それは、今まで獣人奴隷の育成と資金調達を同時に行えた狩り場が使えないことを意味した。二十四名もの獣人奴隷の食費や衣服を整えることができない、つまり生活が成り立たない可能性が出てきた。
(二十四名は多すぎた、完全に自分の首を絞める結果になってしまった……)
タカシはシャロンと生活費について話し合った。現状、奴隷二十四名と人間二名の食費が一日三食で銀貨百枚程度かかっているが、これは奴隷たちの体力回復を願って毎食肉か魚を入れての額で、通常なら一日二食で銀貨三十枚でも待遇がいい方だった。奴隷商であれば一日一食で銀貨五枚程度かもしれない。しかし、タカシは食費は削りたくないと考えていた。ディオス領まで無事に届けられなければ、買った意味がないからだ。
当初の考えでは、フード付きマント、靴、服、ショートソードを六名分購入し、四交代で迷宮で狩りを行い、高騰している獣の皮を売って人数分の装備を整え、体力をつけてディオス領へ向かう予定にしていた。しかし、このままでは六人分の装備を揃えてしまうと食料を買う金がすぐに尽きる。当然、ディオス領までの旅に必要な食糧を買うこともできない。無理をして十一層より先に進むことも考えたが、獣人奴隷をいきなり十一層で戦わせることはできないし、六人の獣人奴隷を人気の狩り場で使うのはリスクがありすぎると考えた。低層の狩り場は本当に都合が良かったのだ。
シャロンは獣の皮を見つめながら、「私が獣の皮を使って靴を作ってみましょうか?」と予想外の提案をしてきた。きれいにできるかはわからないが、シャロンの亡くなった夫は腕のいい皮職人だったため、ある程度作り方を知っているとのことだった。
タカシは驚きながらも、もしそれが実現すれば高価な中古の靴の費用が節約でき、大幅な予算削減になると考えた。試してみる価値はある。二人は靴製作に必要な道具について話し合った。




