第51話 獣人奴隷24名と人間2名
タカシは家に戻り、シャロンに二十四人の獣人奴隷を買ったことを伝え、受け入れる用意を一緒に始めた。この家に新たに二十四人もの獣人奴隷がやってくる。特に問題なのは、庭の杭に繋がれていた五人だ。衰弱が激しく、ベッドで休ませなければ命にかかわると考えた。ダイニングにあったテーブルと椅子を部屋の隅に寄せ、奥の寝室からベッドを運び出す。まだ動ける十九人の奴隷は奥の寝室に、衰弱した五人とタカシ、そしてシャロンが手前の部屋でベッドに寝ることにした。
「シャロン、奴隷たちは衰弱しているから、消化の良いものを作っておいてくれ」と指示を出して、ディオス邸へ向かった。ディオス邸から幌付きの馬車を二台出してもらい、貧民街の奴隷商へ行って二十四人の奴隷を乗せた。真夜中の大移動だ。物音をなるべく立てずに、タカシの家への二十四人の受け入れに成功した。
タカシは、玄関を入ってすぐの部屋のベッドに衰弱した奴隷五人を寝かせ、奥の部屋に残りの十九人を入れて話しかけた。
「突然だが……俺が主人のタカシだ。冒険者をしている。お前たちの仕事は……俺の言うことを聞くことだ。とりあえず……物音を立てずに静かにしろ」
「お前たちの仕事は……俺に奉仕することだ……それは譲れない……」
タカシは壁にもたれながら、途切れ途切れに意識をつなぎながら奴隷たちに命令した。その様子を横で見ていたシャロンが「タカシ様、後は私がやりますので、一度お休みになられた方が……」と声をかけた。
「あ……ああ、そうだな。少し疲れた……」
タカシはベッドに倒れ込むように横になり、すぐに意識を手放した。
翌日の昼頃、タカシは目を覚ました。これほど長く眠ったことは異世界に来てからなく、自分でも驚いていた。周りを見回し、昨夜の出来事を思い出す。起き上がって台所にいたシャロンにおはようのキスをして、食事を頼んだ。シャロンが食事を用意している間に、奴隷たちの様子を確認する。
奴隷たちはなぜか全員服を着ておらず、タカシを見て怯えているようだった。奴隷商にいた時よりずっと汚かったはずだが、水浴びをしたようで多少きれいになっている。ベッドに寝かされている五人は熱があるのか、おでこに濡れた布が当てられていた。
シャロンがパンと野菜スープをテーブルに置いた。
「いろいろやってくれたようだな、ありがとう」
「獣人奴隷の現状と、家のルールを説明しておきました。それと、三人ずつ交代で水洗い場で体を洗わせました。奴隷服は汚れと臭いが取れなかったので漬け置きしています。そのため全員裸になっています」
「ああ、よくやってくれた」
タカシは食事が終わると、改めて奴隷たちを観察した。ベッドで寝ている五人のうち四人は熱があり、苦しそうだ。残りの一人は顔色が良さそうだった。奥の寝室にいる十九人は全員裸で床に座り、怯えている。
「タカシだ。昨日は突然ですまなかったな。混乱していると思うが、奴隷商にいるよりはマシな生活ができると思っている。ただ、俺に抱かれるのがどうしても無理なら言ってくれ。奴隷商に帰れるようにしてやる」
タカシはまじまじと獣人奴隷たちを見た。昨日は病的なほど痩せ細っているように感じたが、改めて見ると痩せてはいるものの、それほどではないように感じられた。ただ、体力的にすぐにディオス領へ移動するのは難しいと考えていた。
タカシとシャロンは台所の前で奴隷たちについて話し合った。「体力を戻すために食事の質を上げよう。一日三回、パンと野菜くずのスープに肉や魚を入れてくれ」タカシは、この人数分の食器を揃えることを考えると頭が痛かったが、必要な出費と割り切った。
手元に残っている金貨は八枚。できれば食器に金を使いたくなかった。服と靴と食糧、最低限必要だと思っているものだけでも予算オーバーだ。奴隷二十四名と人間二名、合計二十六名分の食事だけで金貨八枚がすぐに尽きてしまいかねない。
「今後の作戦は、奴隷たちの体力を回復させ、一緒に迷宮で金を稼ぐしかない」
その日から、タカシは資金稼ぎのために一人で九層での狩りを始めた。




