第3話 その時がやってきた!奴隷商へ
金貨十枚。
タカシが異世界転移してから、五ヶ月が経った。
メインの狩場も3層を卒業し、6層へと移っていた。
来る日も来る日も真っ直ぐ迷宮に向かい、真っ直ぐ貧民街の家へ帰る。ひたすら6層に潜り、ひたすらモンスターを狩り続ける。それはもう、効率を極めた作業だった。
その結果、ついに金貨十枚まで貯まった。金貨十枚あれば一般人なら三~五年は生活できる。それを五ヶ月で稼ぎ出せる冒険者とは、命の危険さえ度外視すれば、なかなか美味しい仕事だ。
「これで……」
タカシの脳裏には、思い描いてきた夢の光景が広がっていた。美しい亜人種の少女たち。彼女たちに囲まれ、まるで王様のように暮らす自分。そう、異世界に来たからには、ハーレムは絶対条件だ。
タカシは奴隷商へと向かった。奴隷商はメイン通りから一本外れた場所にあった。
扉を開けると、受付カウンターに男が立っていた。店内は奴隷を扱っているとは思えないほど小ぎれいで、冒険者ギルドよりも上品な雰囲気さえある。
「いらっしゃいませ。お客様、お探し物は?」
カウンターの胡散臭い男がにやにやと話しかけてきた。その笑い顔は、いかにも悪徳商人といった風情だ。冒険者ギルドの受付嬢の方が百倍ましである。
「えっと……奴隷を買いに来たんですが、金貨十枚で買える女奴隷はいませんか?」
タカシは緊張しながら答えた。
「ノーマル・レア・スーパーレアとございまして、金貨十枚ですと、レアランクまでのお取引となります」
男はタカシを二階へと促した。階段を上がってすぐ、施錠されたドアを開けると、広い大部屋に十名ほどの女奴隷が椅子やソファーに座っていた。
「こちらがレア奴隷たちになります。優れた容姿はもちろん、算術、歌や踊り、武術など、特別な才能を持つ者ぞろいです。ノーマル奴隷よりも優れた一芸があるため価値が高く、この大部屋での生活が許されております」
タカシは部屋の中をじっくりと見渡した。だが、そこに獣人やエルフといった亜人種の姿はなかった。
「あの、獣人とか、亜人種は……?」
タカシが尋ねると、男はにやりと笑い、こう言った。
「申し訳ない。金貨十枚では、亜人種はお求めになれません。そもそも亜人種が住む土地はここから遠い上、彼らには奴隷制度がないため、市場に出回ることはめったにございません」
タカシは愕然とした。言われてみれば、この街に来てから一度も亜人種に会ったことがない気がする。
「そんな……」
タカシは膝から崩れ落ちそうになった。せっかく金貨十枚も貯めたのに。五ヶ月間、ひたすら作業に没頭したのに。獣人奴隷購入という完璧な計画を立てたつもりが、予想外のところで挫折してしまった。




