第28話 獣人少女の新たな決意
キャロとカリンを迎え入れてから、三ヶ月が過ぎようとしていた。
最近、二人に元気がない。何か悩んでいるようだが、タカシには心当たりがなかった。狩りも変わらず楽しんでいるし、スキンシップを嫌がっている様子もない。尻尾を見ると、むしろ喜んでいるようにすら見える。なぜなんだろう?シャロンやセルマに聞いても曖昧な返事ばかりで、結局よくわからなかった。行為の最中は元気なのに……。最近、何か特別なことをしただろうか?考えてもわからない。もしかして、俺に飽きたのか?うーん……。
数日経っても、二人の様子は変わらなかった。ところがある夕食後、突然キャロとカリンがタカシの座っている前までやってきた。普段は皆でテーブルを囲んで食事をしている。最初はセルマがよく喋っていたが、獣人の二人がテーブルで食事をするようになってからはキャロとカリンの方がおしゃべりだった。そんな二人が元気をなくしていて心配していたのだが、タカシの前に立った二人は元気というより、どこか気が張っているように見えた。
二人は椅子に座っているタカシの横で土下座し、大きな声で言った。
「お願いがあります!」
タカシは「はぁ?」と気の抜けた声を出したが、すぐに気を取り直した。
「前にも言ったよな?お前たち二人は俺の奴隷だ。奴隷になった時点で、交渉できるものなんて持っていないだろ?話にならん」
きっぱりと言い放つタカシに、カリンは言い切った。
「あります!」
タカシは驚いたが、すぐに考え直して「いや、ないだろう」と結論付けた。
「いいえ、あります」
今度はキャロが言った。二人は真剣な顔でタカシを見上げ、口を揃えて言う。
「心です!」
予想外の答えに、タカシは気が抜けた。
「いやいや、形のないものを交渉の材料には……」
言いかけたところで、タカシは二人の意図に気づき、きっぱりと否定した。
「ダメだ」
しかし、二人は引き下がらなかった。
「お願いします。奴隷紋を入れますから、お願いを聞いてください」
二人はそう言って、床に頭をつけた。そんな二人を見て、タカシはシャロンに目を向けたが、シャロンは目を合わせようとせず、うつむいていた。
タカシは息を荒くしながら言った。
「俺は、奴隷紋で縛ってまで、お前たちの心が欲しいとは思っていない」
お互いが引かず、睨み合う形になった。
そんな状況に、セルマが口を挟んだ。
「とりあえず、一度要求を聞いてみてはいかがでしょうか?」
タカシは「まあ、物によっては叶えてやらんでもないし、聞くだけは……」と、二人に要望を言うよう促した。
二人は顔を上げ、カリンが話し始めた。
「私たち以外に、獣人奴隷を六人買ってほしいです」
予想外の要望にタカシは驚き、逆に興味が湧いた。
「どうして奴隷が欲しいんだ?それも六人も」
カリンが言うには、水洗い場で他の奴隷たちをよく見かけるのだという。顔見知りもいたが、ほとんど全員といっていいほど皆傷つきやつれており、奴隷服もボロボロに破れて、ほぼ全裸の子までいる。明らかに虐待されている中で、自分たちはまともな服や食事をもらっているのが申し訳なくなったそうだ。
「待て。獣人奴隷は数百人はいる中で、数名を救っても意味がないだろ。その代償が奴隷紋というのもどうなんだ……意味がない。見なければいい。もう水洗い場には行くな」
タカシはシャロンとセルマに、二人を水洗い場に行かせないよう指示を出した。
「たった数名救っても、毎週五十人前後が追加で送られてきているんだ。忘れろ。お前たちは知らないかもしれないが、奴隷を持てるのは六人までだ。だから残り二人。俺は、お金を貯められるだけ貯めて、スーパーレアのさらに上を狙えないかと考えている」
タカシはあえて、奴隷紋のシャロンも奴隷としてカウントして説明した。
「だから、無理な相談なんだ。忘れろ。お前たちにできることなどない」
タカシはきっぱりと言い放ち、一人でベッドへと向かった。




