第29話 キャロとカリンの作戦
その後、キャロとカリンが奴隷紋や同族奴隷の購入について話を蒸し返すことはなかった。しかし、二人の態度は大きく変わった。
二人はタカシにべったりとくっつくようになった。タカシの腕を胸に押し当て、手を握り、どんな時も一緒についてくる。奉仕の時は格別だった。二人で全身を使って奉仕してくれる。元々スーパーレアレベルの美人な二人だ。そんな二人の心が入った奉仕は、タカシの脳をとろけさせた。
至れり尽くせりの二人に、タカシは何かをしてあげたいと考えるようになっていた。しかし、それが二人の仕掛けた罠であることはわかっていた。いや、二人もそれを隠そうとしていない。それでも、共に過ごす時間の長さと濃密な行為に、タカシはこんな二人を裏切りたくない、報いてやりたいと考えるようになっていた。
そんなある夜、キャロとカリンが寝静まったのを見計らって、タカシはシャロンとセルマに相談を持ちかけた。大きなため息をつき、テーブルに顔を伏せる。しばらくして顔を上げ、二人に「どうしたらいいと思う?」と唐突に尋ねた。
二人は何の話か理解していた。セルマが逆に問いかけた。
「タカシ様は、どうしたいのですか?」
「できれば二人の要望を聞いてやりたい。金額的には不可能ではないし、獣人奴隷は優秀だから欲しい気持ちもある。ただ、次の奴隷は魔法使いかレンジャーを考えている。魔法使いは不可能に近いが、それでも手に入れたいんだ」
タカシは力強く言った。
「サイロンが言うには、奴隷紋をつけた奴隷はカウントされないらしい。だから、俺が持てる奴隷はあと三人になるんだ」
その言葉に、シャロンが口を挟んだ。
「タカシ様、もしキャロとカリンが奴隷紋を入れれば、持てる奴隷は五人になるのではないでしょうか?」
「ああ……そうか。いや、獣人奴隷は戦争奴隷という括りになるから、どうなんだろうな」
タカシは考え込んだ。奴隷枠の問題だけではない。
「この部屋に獣人が六人も追加で住むのは難しいだろう?住まわせるなら引っ越しも考えないといけないし、生活費はどうする?全員で十一人だ。どうしても狩りの効率が落ちるし、何か新しい仕事も考えないといけない……」
タカシは次々と問題点を挙げた。
「獣人族が八人、人族が三人となると、少し不安が出てくるだろ?」
「そうですね」
セルマはタカシに同意し、続けた。
「戦争で無理やり奴隷にさせられ、人族に強い憎悪を抱いている者もいるでしょう」
「それは考えられますが、そこはキャロとカリンに面倒を見させてはいかがでしょう?」
シャロンが提案すると、セルマはすぐに同調した。
「なるほど、奴隷紋を入れているキャロとカリンなら裏切らないし、適任ですね」
タカシはさらに条件を付け加えた。
「ただ、俺は新たに購入した奴隷だからといって抱くぞ。それがキャロやカリンの母親だろうと関係ない。これだけは譲れない」
セルマは笑い、シャロンは静かに同意した。
「タカシ様、二人の要望を叶えるために、まず具体的に動いてみてはいかがでしょうか。それでも無理だったと結論を説明すれば、二人も納得するのではないでしょうか?」
シャロンが妥協案を提示した。
「え、つまりどういうことだ?」
タカシは頭をかきながら考えた。セルマが、これまで挙がった問題点を整理し始める。
「まずは奴隷枠ですよね。獣人奴隷が奴隷紋を入れれば奴隷としてカウントされないかどうか。変わらず奴隷ならば、購入できる枠は二人か三人になりますから、彼女たちも諦めそうですね。次は住居でしょうか。十一人が住める家を買うか借りるか、相場なども調べないといけません。それと、生活費をどう稼ぐかですよね。狩り以外にも稼げる方法を見つけておかないと、何かあった時に十一人分の生活費や人頭税で奴隷落ちになりかねません。あとは奉仕に関してですが、これはキャロとカリンに説得させればいいです。そこは二人とも理解していると思います」
「問題点が整理できたな。まず俺が奴隷商で、獣人族の奴隷紋について聞いてくる」
タカシが言うと、シャロンが続いた。
「住居は私が調べます」
「新たな仕事に関しては、ギルドに聞いてみます」
セルマが答えた。
すべてがきれいに役割分担できたことに、タカシは安堵した。
「無理して二人に合わせる必要はない。どちらかといえば、二人を説得するために調べると考えてくれ。じゃあ、明日また報告会をしよう」




