第21話 運命の時
気づけばタカシの貯蓄は、金貨三枚にまで減っていた。
セルマという新しい奴隷を迎え入れたことで、次の奴隷を受け入れる自信がついた。残り五人分の奴隷を迎える準備のため、家具や食器、雑貨などを一気に揃えたからだ。
タカシの生活は格段に豊かになった。何もない殺風景だった部屋が、生活感のある部屋へと変わった。
食事も、奴隷たちの夕食には肉か魚料理を一品つけるようにした。お金は一度使い始めると止まらず、水のようにさあっと流れ出てしまう。
しばらくは生活面には手をつけず、次こそはスーパーレアの奴隷を購入するため、金貨五十枚を目標に貯めようと心に決めた。
幸いなことに、今は獣の皮の買取価格が高騰している。セルマ曰く、下手に九層より下の中層に挑むよりも稼げているらしい。金貨五十枚という目標も、不可能ではないと思える。
タカシは、獣の皮が高く買い取られている間に少しでも多く稼ごうと、セルマと共に普段よりも長く九層に籠って狩りに励んだ。
セルマの装備を整えてから、早くも三ヶ月が過ぎた。タカシの貯金は、金貨二十七枚になっていた。
一時的に貯金は減ったものの、獣の皮の高騰のおかげでそれ以上に稼ぐことができた。
「来月か再来月には、確実に金貨四十枚だ!」
タカシは鼻息を荒くして、目標達成を誓った。
迷宮から出ると、空はすっかり暗くなっていた。シャロンを待たせすぎたと反省し、タカシは急いで家に帰ろうとした。無限にモンスターが湧く九層だが、ハメ狩りをしている場所は安全地帯の小部屋の近くだ。休憩を挟みながら長時間狩りをすることが可能で、つい時間を忘れてしまうのだ。
冒険者ギルドで獣の皮を売り、大通りに出たその時、数台の大きな馬車がタカシの横を通り過ぎた。タカシは思わず息をのんだ。
大きな箱のような形をした馬車。二つある小さな窓には鉄格子がはまっており、一目で奴隷輸送用だとわかった。
そして、窓から見えたのは、首輪をした女奴隷たちだった。その頭には、獣の耳があった。
タカシは興奮に震えた。ずっと探していた獣人族の女奴隷が、タカシの目の前を横切ったのだ。
セルマに先に帰ってもらい、馬車を追いかけた。
馬車は、いつもの奴隷商の前に止まっていた。すでに奴隷たちの移動は終わっているようで、馬車の中は空だった。
タカシは荒い息を整え、逸る心を抑えながら奴隷商へと入った。
店内に罵声が響き渡っている。地下のサイロンがいる方からだった。タカシは急いで地下へと続く階段を駆け下りた。
地下室はいつもと違い、大勢の奴隷たちの声で騒然としていた。獣人奴隷たちは二つの牢屋にぎゅうぎゅうに詰め込まれ、入りきらずに溢れている。奴隷の数はおよそ百人といったところだ。そして全員が、垂れ耳と尻尾の可愛い犬の獣人だった。
タカシはサイロンに挨拶もせず、興奮した声で尋ねた。
「この奴隷は、いつ買えるんだ?」
サイロンはタカシの存在に今気づいたようで、「ああ、来てたのか」と呟くように言った。そして少し考えてから、驚くべき条件を提示した。
「今すぐでもいいぜ。二人で金貨一枚だ。好きなのを選びな」
「マジで?」と大きな声を出しそうになったが、タカシはこの状況では早く選んで帰った方が良さそうだと判断した。若くて美人な奴隷を探し、すぐに「あの子がいい」と指差した。
サイロンは鉄格子をガンガンと叩き、タカシが指差した奴隷に牢屋から出るよう大声で合図を送った。しかし、その奴隷はもう一人の奴隷と手をつないで出てきた。サイロンは予想外の展開に困惑した表情を浮かべた。
もう一人も可愛かったので、タカシは迷うことなく「この二人を買う」と言い、金貨一枚をサイロンに渡した。
サイロンは素早く手続きを済ませると、タカシに忠告した。
「奴隷教育してないから、気をつけろよ」
「じゃあ、今は忙しいからまた今度な」
そう言い残し、再び奴隷たちが詰まった牢屋の方へと戻っていった。




