第14話 奴隷紋
朝食後、シャロンの機嫌はすっかり直っていた。
(奴隷紋を入れるのに機嫌が直るなんて、絶対におかしい……)
タカシの価値観では理解できないシャロンの行動に、ため息しか出なかった。
二人は奴隷紋を入れてもらうために奴隷商へと向かった。タカシは受付の胡散臭い笑顔の男の案内を断り、シャロンを連れてサイロンのいる地下へ向かう。世話好きで好印象だったサイロンなら、話が通じやすいと考えたからだ。
サイロンは、タカシとシャロンの姿を見て、シャロンが何か粗相をしたのではと勘ぐったのか、険しい顔になった。
「よう、兄ちゃん。どうした?シャロンが何かやらかしたか?」
タカシは軽く首を振り、適当な挨拶もそこそこに本題へ入った。
「シャロンに奴隷紋を入れて欲しいんだ」
サイロンは予想外の話に間の抜けた顔をした。だがすぐに、勘ぐったようないやらしい笑みを浮かべ、タカシの脇腹を肘でつついた。
「兄ちゃん、やるねぇ……これも若さってやつかあ。金貨三枚かかるぜ。魔法士を呼んだら返金はできないからな。シャロン、いいのか?無理やり言わされたり、心から受け入れる準備ができていなければ、魔法は弾かれる。そうなったら主人に恥をかかせることになるし、二人の関係も最悪になるぞ」
シャロンはまっすぐサイロンを見つめ、答えた。
「大丈夫です。奴隷紋を入れてください」
その強い意志に、サイロンは軽く口笛を吹き、タカシを再び肘でつついて言った。
「色男だねぇ。こりゃ、俺も負けられないな」
サイロンは魔法士を呼びに店を出ていき、二十分ほどで灰色のローブを深くかぶった男を連れて戻ってきた。顔は見えないが、中年男性のようだ。
魔法士はタカシとシャロンに奴隷紋についての説明をし、入れてもよいかの確認を取った。シャロンは力強く返事をしたが、タカシは納得しきれていないような小さな声で了承した。
魔法士はタカシの血を採取し、シャロンを連れて少し離れた場所へ移動した。最終確認だろうか、二人は何か話している。
シャロンは上着を胸元からずらし、谷間が大きく見えるようにした。魔法士が呪文を唱え始めると、シャロンの左胸が肌を焼くように光り、奴隷紋が刻まれていった。
奴隷紋の魔法は対象者に痛みを伴うようで、シャロンは歯を食いしばって堪えていた。魔法が終わると彼女は小さくため息をつき、魔法士によって首輪が外された。シャロンは首輪のあった場所を擦りながら戻ってくる。奴隷紋を入れると首輪は不要になるため、外されるのだそうだ。
家へ戻る道すがら、シャロンはいつもの笑顔で話しかけてくる。しかしタカシの脳裏には、フラッシュバックのように、鬼の形相になったシャロンの顔がちらついた。
(こんなに美人なのに……あんな顔をするなんて……)
タカシは自業自得だとわかっていながらも、複雑な思いを抱えたまま家へと戻った。




