199.いっぱい点数上げちゃうっ!
3日目……。この日は第2プログラム・魔法戦略(個人)が開催されていた。この種目は各学年から30人から選ぶことが出来る種目だ。
ポイントは集団戦よりもやや劣るぐらいの獲得数ではある。しかし上位を総なめしてしまえば他の学年を大きく引き離すことができる。
この試験では5回の魔法攻撃でゴーレムにどれだけの傷をつけられるかが試験の目的となっている。しかし単に傷つければいいという話ではなく、その場その時の場面で最適な魔法を打つことが重要になってくる。
初めの1回は練習としてカウントされ、そこから5回を1回ずつ審査員が得点をつけていく方式
だ。
「48」
「20」
「36」
「ん〜ゼロ!」
4人の審査員が得点を言い、その得点の平均点を1つの点数とするようだ。ちなみにこれは50点満点ではなく100点満点なのでこの生徒はあまり良くない評価をされたみたいだ。
「はっ!」
「96」
「92」
「98」
「う〜ん、100!」
高得点を叩き出したのは聖人ルーアン。やはり聖人ということもあり魔法の扱いには長けている。
「やったー100ですか!? 審査員さん優しー」
ルーアンは審査員に愛嬌を振りまきニコニコと手を振る。
「やっぱり120点!」
「「「ねーよそんな点数!」」」
デレデレな審査員にその他の審査員が総出で突っ込む。
「エフィレちゃんはどーかな……って!?」
爆発音が聞こえたと思ったらゴーレムが消滅していた。審査員たちもビビり散らかしていて点数を伝え忘れる。
エフィレが消滅したゴーレムを見て首を傾げていた。
「これで……いいのかな?」
「聖人エフィレ様。魔法とは周囲の影響や環境を考慮すべきです」
「そうなの? でも、一撃で決めれるなら……そっちのほうがいい」
ルーアンは「確かにそうだけど!」と心で叫び崩れる。自慢の魔法の技術でさえ彼女に負けっぱなしである。
「エフィレ様、0点です」
「そっか。次はうまくやる」
左手に込める魔力はうまくいかせる気はないようだった。
────
「試験は盛り上がっているようね」
人気のない会場の裏手に彼女らはいた。
「こういうところ苦手かも……」
「うん苦手……」
耳を塞ぐゼプト、カトラはささっとズゥーヴァの後ろに隠れた。
「あなたたちったら勘弁してちょうだい。いつまでも子どものフリはできないのよ?」
「亜神教会と執政たちの動きが活発になってきているから、悠長にごっこ遊びしてる暇はないってこと?」
「そういうこと?」
「そういうことよ。ゆっくり攻略するのもいいけれど、今は時間がないの。依り代召喚を利用するのもアリではあるけれど、私たちの計画が複雑になってしまう」
「やっぱり直接連れてくるのがいい」
「直接連れてくる〜」
因縁の相手であるフルリエル。それをどう扱うかが今回の分岐点となっているようだ。
殺してしまう選択肢、解放する選択肢、あちら側に残したままにする選択肢……どれも良いメリットはあるがいずれ選択する時が来る。
「一度全女神を解放してみせたけど、一時的なものだったわね。まああれで解決するとは思っていなかったもの」
「偶像を増やして女神の力を強める。簡単なやり方だけど、その分解決されやすいのが難点だね」
奥からもう1人、レオがローブを纏って現れる。
「あら、もう帰ってきたの? 進捗は?」
「怪しいと思ったところは全部調査した。けど警備が厳重な部屋には流石に単騎では入れなかったかな。どんな執政がいるのか、どんな亜神教会幹部が潜んでいるかわからなかったからね」
「いい判断ね。けれどいきなり現れたあのオリジンと言う装置、ザバルタ学園には類似の召喚装置があったわよね?」
「装置は全く別物だね。今回から新規導入された装置みたいだけど、ほとんど情報がない。どこで製造されて、どういう素材を使っているのかもわからない。けど1つ言えることはあの装置は執政の実験道具の可能性があること」
「彼のことね」
彼とはニュールリストのことだろう。
「良心的な研究者とは言い難い彼だけれど、腕は確かね」
「もしもこの試験が彼の実験の1つなら……もしかすると亜神降ろしの計画を裏切る可能性がある」
ゼプトとカトラは暇になったのか、上下に動くレオの尻尾で遊び始めた。
「もふもふ〜」
「もふもふ〜」
2人とも彼女の尻尾にしがみつき抱きしめる。
「ちょっと、今いいところだから後でにして」
「ふふっ、あなたは本当に子どもに好かれるわね」
「嬉しくないね。犬扱いされてるみたいで嫌だからさ」
しかし満更でもない様子のレオ。
「それで、正確なニュールリストの位置は把握してる?」
レオは首を振った。
「巧妙なやつだよ。分身を使って本体はうまく隠してる」
「でしょうね。これからの計画だけれど、ドンにはまだ内緒ね」
「うん」
「彼、興味があればすぐに突っ走るから」
「確かに興味を向かないはずがないもんね──」
するとカトラが耳を立てて音を聞き始める。誰かが近づいてきているようだ。
「女性の足音……それになんだか物凄く怒ってる。近づきたくない……」
「こちらに興味がないならいいけど」
「だめ……気づかれた。こっちに向かって走ってくる」
カトラは廊下側の方へ視線を向け、レオの後ろに隠れる。
「カトラの耳で聞こえる距離から気づくなんてね。一体誰なのか確認するのもあり」
次第に走る音は全員に聞こえ、カッカッという足音は大きくなっていく。そしてほぼ近くに来たぐらいのところで足音が止む。
ゆっくりと歩いているようだ。4人から見える位置から角を曲がればその人物に会える。
「あ……」
ぬうっと角から姿を見せたのは目の血走ったセリアの姿だった。4人に気がつくと視線だけを彼女らに向けていた。
そしてゆっくりと顔を向け4人の顔を見る。
4人からしたらヤバい人が睨みつけている状況。セリアからしたら怪しげなローブの人物が4人。
しばらくセリアが動きを止めているとズゥーヴァから話しかける。
「あら、ガレオスの聖人様じゃない。こんなところで一体何の用かしら?」
セリアは一歩前に出る。
「私……私はただレインくんを探しに来ただけです。昨日の夜から会っていなくて……それにどこにもいないんです。けど近くにいるのは確実。もしかしてあなたたちが彼を攫ったんですか……?」
キリッと鋭い視線でズゥーヴァを睨む。
「彼女完全に殺る気みたいだよ。うまいこと言わないと変なことに巻き込まれる」
「わかってるわ。私たちからしてみれば何のことか全くわからないもの」
セリアは無言で腰の剣に触れる。
一触即発の状況。
「何のことかわからないわ。私たちは会場の警備をしているの。不審な人物を見かけたら直ぐに上に報告するようにってね。そのレイン?って方が攫われたんだとしたら私たち警備員の誰かが捕捉しているんじゃないかしら?」
「……納得しました。今あなたたちに剣を抜こうとした私を許してください」
といいつつもセリアは剣から手を離していない。
「ええそうね。私たちは何も知らないわ。何に怒っているのかわからないけれど」
「そうですか。──ここにはいない、か」
すると彼女は興味を失ったのか背を向けて去っていった。
「聖人セリア。かなり荒れてるみたいだね」
「依り代としての器が限界を迎えているのでしょう。いつ壊れてもおかしくはないわ」
「でも制御仕切っているみたいだけど?」
「ドンがまた何かしたんでしょう。依り代の器に異物を混ぜて何をしたいのかしら?」
彼女らにドンの考えはわからないようだ。




