2-61 西南の魔女
その後も、俺と真美子は”勇者試練のダンジョン”でレベル上げをしていた。
俺はダンジョンの中ボスクラスと戦ううちに魔法戦で苦戦する様になった。
そこで俺は、ある魔導書を書いた西南の魔女に会いに行こうと思い真美子に話した。
「テツさん、何でその西南の魔女に会いたいの?」
「実は、”勇者試練のダンジョン”攻略でちょっと行き詰っちゃって、並行魔法術式起動改を学びたいんだ。」
「それって、その魔導書を読んだだけじゃ分からないの?」
ある程度は出来ているんだが、少しアレンジするのに実際のオリジナルの使用が見たい。
「そうだな、出来れば実際の使用を直接見てみたいんだ。」
「その並行魔法なんたらってなくちゃダメなの?」
「ああ、”勇者試練のダンジョン”のガーディアンがその並行魔法術式起動改を使っているみたいなんだ。」
「それ、人造聖剣があっても厳しいの?」
そうだな、人造聖剣、もしくは覇者の剣Ⅴがあれば違ってくるな。
「いや、人造聖剣があれば要らないが、今後別の世界に渡った時必要になるかも知れない。」
「わかったわ。」
そして俺と真美子は、西南の森の中にいる西南の魔女に会いに行った。
魔女の屋敷は結界やガーディアンで守られていた。
しかし、結界を散々研究した俺には意味が無かった。
そして、魔女の屋敷の入り口のフロアで、俺達は40代と思われる魔女に出会った。
◇
俺はその魔女と話し始めた。真美子にはこの話の最中は警戒の役を頼み、また、黙っていてもらった。
「降参だよ。あんた凄いね強いし、それに、あたしゃの結界術がこうも簡単に破られたのは初めてだよ。しかも逆に結界に囲まれちまうとはね。」
俺は結界に囲んで、魔女を逃がさないようにしていた。
「そうかい。それはありがとう。ところで西南の魔女って貴女でいいのか?」
「そうよ、あたしだわよ。あたしが西南の魔女ダロシーネさ。何が欲しいんだね、私の命?それとも財産?」
「いや、俺は、貴女の魔導書を読んで、並行魔法術式起動改を教わりたいと思って来たんだ。」
シンシーアの書庫にあった魔導書のうちの1冊だ。
「ほう、並行魔法術式起動改かい、でも、あんたの技量ならあの魔導書を読めば出来るんじゃないか?」
確かにある程度は出来たんだがな。
「いや、細かい感覚とかが分からない。実際、使ってみたが、取り込んだ魂がすぐ離れてしまうんだ。」
「そこまで出来てりゃあたしゃ要らないわね。あんた、恐らく注意事項の④を守っていないね。」
やっぱりそこか。
「ああ、そうだな。だけどありゃ無理だ。何か方法が無いか?」
「無理だねわね。お互いが同意しないと無理なのさ。もしくは波長が合っていれば出来なくもないが、そうじゃないと使い切りだわね。」
「やっぱりそうか。」
「せっかくだから、並行魔法術式起動改を見せてくれないか?あ、俺が触れた状態でね。」
「それを見せたら、帰ってくれるのか?」
「ああ、それが知りたかったんだ。」
「わかったよ。見せてあげるわね。」
俺は西南の魔女ダロシーネの肩に触れた。そして、ダロシーネは並行魔法術式起動改を使った。
造形魔法などが並行して切れ目なく行使された。目の前で一瞬で人形が出来た。
俺は解析と情報収集が終わったのでダロシーネの肩から手を離して言った。
「ありがとう。ダロシーネさん参考になりました。」
「ちょっと待ってよ。あんたもしかして転生者かい?」
いま、読んじゃったけどダロシーネさんは2度目の転生で、普通は思い出さない前世の記憶を思い出したみたいだ。そこから来る勘かな?
「いいえ、違います。」
「そうかい。」
詮索しないように釘を刺しておこう。
「お互い。あまり深い所は、踏み込まないようにしましょう。ダロシーネさん。」
「そうだね。」
あと、謝礼をしておこう。
「御礼に、この宝石を置いて行きます。」
俺は、ブラックダイアモンドの小さい原石を置いた。
ダロシーネは結構、喜んでいた。
その後、俺と真美子は宿屋の部屋に戻った。
◇
部屋で真美子は、俺をさっきのやり取りについて聞いてきた。
まあ、真美子には術式の内容は言って無いから、色々疑問が生じるだろう。
「テツさん、それじゃ、並行魔法なんたらって、危険なんじゃない?それに取り込んだ魂とか、お互いが同意とか波長とか?」
「わかった解説する。」
俺は真美子に分かるように説明をした。
並行魔法術式起動改
①同時にいくつもの魔術、技能等を行使できる。
②その行使には、外部の魂を取り込んで、魂を使役して実行させる。
③魂の数だけ、魔法や技能が同時に行使できる。
④魂と行使者のお互いの同意があるか、波長が合うかしないと、一度きりで、取り込んだ魂が離れてしまう。
あと、真美子には説明しないが、この並行魔法術式起動改は”十勇者ミッション”で使用していた魔術の基本概念でも構成されている。
つまり、並行異世界の基本の概念で作られている術式だと思われる。しかも、契約後はイメージによる魔法なので、俺にもってこいの魔法だ。
真美子は微妙な顔をしている。
とりあえず、④が出来ないから、この術式は中止だ。
「真美子、俺は、並行魔法術式起動改は保留にする。今後は、魔獣大陸でレベルアップを考えるよ。」
「わかったわ、それ、使わないのね。安心したわ。」
真美子はほっとした顔で俺を見つめた。
「いや、危険じゃないから。」
「でも気持ち悪いもの。」
そこかよ。気持ち悪さか!
「そ、そうか。」
「そうよ。」
「あと、真美子が”勇者試練のダンジョン”Eパートクリアして、覇者の剣Ⅴを手に入れてくれたら、もしかすると俺が”勇者試練のダンジョン”の攻略が出来るかしれない。」
「テツさん、Eパートクリアしてなかったの?」
それも話してないな。
「いや、覇者の剣Ⅴを取ってないだけだ。Eパートから覇者の剣を取ると、神に情報が行ってしまうらしい。」
「そんなこと誰から聞いたの?」
「ダンジョン作成者にだよ。」
「そのダンジョン製作者って、何処に居たのよ。」
「ちょっとダンジョン内で会ってね。今はもう会えない。」
真美子は眉をしかめて俺を見ている。
「後まだ、色々隠してない?」
「隠してないよ。」
「ほんと?」
「ほんとだよ。」
「それじゃ嘘だったら、しばらくマッサージもさせてあげないから。」
それは困る。仕方がない。
「わ、わかった。後は、たまに俺が作る食事に精力剤をタンマリ入れてある事は黙っていた。そんな事くらいだよ。」
「え、その精力剤って私も食べてるわよね。」
「ああ、食べてるよ。」
「それって、どういう作用があるのよ。」
「精力増強と、ちょっとムラムラするだけだよ。」
「もう、次から食べないから。」
言うんじゃなかった。




