2-53 人魚の肉
俺と真美子は、1週間ほど暇なので”勇者試練のダンジョン”でレベル上げをした。
裕也が結構レベルアップしてたから、俺は真美子を猛特訓した。
1週間後、公園の隅で吹雪裕也と落ち合った。
女性の取り巻きが6人も出来ていた。1日1人かよ!
聞いたら、全員愛人でも構わないだと!
イケメンとは、どんなチートより勝るものだなと、改めて思った。
早速、人魚の国の近くの浜辺に直行した、有料転移ゲート魔法陣があったので、それを使って飛んだ。
もちろん、取り巻きの女性は邪魔になるから置いて行った。
◇
人魚の国に近い浜辺は、まるでリゾート街。
南の観光地の”ワハイイ”と違って、この浜辺は大人の町だ。
らぶなホテルやカジノもある。
浜辺を歩いていると更にビックリだ。
人化した人魚がいっぱい歩いていた。
しかも、逆ナンしている。俺も逆ナンされてみたいが、イケメン限定だと地元の人が言ってた。
人魚は種族繁栄のため、子種を求めているのだ。
この世界の人魚は、人化が出来てその人化の持続時間は12時間。魔法で化ける。
人族との区別は耳の形。この世界の人魚は人化しても耳に水かきが残っている。
これじゃ、耳を甘噛み出来ない。まあ、出来る機会が無いけどな。
「それじゃ、師匠行ってきます。」
と裕也は、自信ありそうなドヤ顔で人魚をナンパに行った。
裕也とは、明日午前中10時頃に、この浜辺で待ち合わせだ。
俺は人魚がどんな美人の集まりかと周りの人魚たちを見ていた。
やはり結構美人だ。でも真美子に怒られてまでナンパする気はない。
キョロキョロしている俺に、真美子は俺の腕に胸を押し当ててきた。
可愛いもんじゃないか、俺に浮気しないでとアピールしている。
これからカジノに行って遊び、そのあと真美子とらぶなホテルに行きたかったが、別件があった。
◇
俺と真美子は、ブルーダイアモンドとは別に、人魚の肉を食べた場合の不老不死について調べに向かった。
不老不死になれば、真美子が魔王を倒さなくても良くなるからだ。
「情報屋の話だと、この路地の裏の店だな。どうする?真美子は一旦帰って俺一人で行くか?」
「ううん、付いて行くわ。サングラスとマスクそしてかつらを付けるから、顔とかばれないわよ。」
「そうだな、でも注意してくれよ。真美子に何かあったら俺・・・」
「心配性ね。もう私LV1711だし、索敵魔法とかも覚えたし、大丈夫よ。」
「そうだな。それじゃ行くよ。」
「はい。テツさん。」
情報屋から仕入れた情報によると。その店には人魚の肉が売っている。
俺達はマスクとサングラス、銀髪のかつら、そして上級の認識阻害ペンダントを付けて、路地裏のさびれた店に入って行った。
店内は一見お土産であったが、俺は店に入る証文を店員に差し出した。店員は俺達を、店の奥の部屋に案内し始めた。
「どうぞこちらに。」
俺達は、その店員に付いて行き、奥に部屋に入った。
奥の部屋はお風呂みたいな水槽があって、そこに人魚が泳いでいた。
よく見るとその人魚たちは、手や足が欠損していたり、胸の一部の肉が無くなったりしていた。
そして、全部の人魚が奴隷紋を刻まれていた。
「だんな、先に言っておきますが、体に合わない場合は、そこにいる娘みたいな体になりますぜ。また、不老は手に入れられますが、不死に関しては、首を切られたり心臓を潰されたりした場合は無理です。もちろん病気もかかります。」
水槽の脇に座っていた娘が立ち上がって、マントと頭巾を取って顔と体を私達に見せた。
「わ」「な」
俺達はその娘のただれた皮膚と頭髪の半分抜けた頭に驚いた。
「店員さん、あの状態は回復魔法でも治らないのか?」
「ええ、回復魔法も回復薬も効きません、また呪詛の類じゃないので解呪も効きません。」
「それで、良く人魚の肉が売れるな。」
「ええ、そりゃ、5人に1人は効きますので。」
5人に1人か、真美子には使わせられない。
とりあえず話しを続けるか。
「で、人魚の肉は何処にあるんだ?」
「目の前で御座います。新鮮な人魚から切り取ります。」
ひどいな。しかし、新鮮じゃないと駄目なのかもな。
「そうか、それで、水槽の人魚は、欠損とかケガとかしているんだな。」
「ええ、そうです。」
「回復魔法とかで治療しないのか?」
「それは、欠損がひどくなりすぎてから治療に行きます。それにこの商売ですからね、最上級回復魔法は、口の堅い人物に頼むので、更に高額になってしまいますから、なるべく治療してないんですよ。」
「なるほど、治療はしているんだな。」
「はい。」
後で回復魔法かけたいな。一時的だが少しでも楽になればいいからな。
真美子は俺に小声で言った。「テツさん止めましょうよ。これちょっとひどいわ。」
俺は小声で、「ああ、止めるけど、ちょっと待ってね。」と言った。
そう、人魚の解析と情収集、その能力、性質の改変をしてみたい。
そして、出来れば、あのただれた皮膚の女の子を治したい。
「店員さん、ちょっと人魚とその子を見せてくれないか?あと、ちょっと結界を張るけど、目をつぶってくれ。」
俺は店員にお金を少し渡した。
「はい。どうぞ。」
と店員が言ったので、俺は、ただれた皮膚の子に近寄った。
そして、オリジナルの結界を部屋全体に張り、ただれた皮膚の子に触れて、解析と情収集を始めた。
結界は念のためと、もしかしたら一部”侵食”をするかもしれないからだ。
ただれた皮膚の子の体の遺伝子は大幅に変化していた。
これじゃ回復魔法を掛けても同じ状態になる。つまり、ただれている状態が正常の状態だ。
この子を治すには、体全部の細胞をいじらなければならない。現在の俺には無理だ。
念のため人魚のところに行き、同じく手を触れた。
なるほど、”不老不死”になるには、人の方に適合因子があるか無いかで決まるのか。
人魚とただれた女の子の情報を採取したが、これは”不老”に見えるだけで、実際は年を取るのが遅くなるだけだ。
不要だな。
俺は部屋の結界を解き、店員に言った。
「今回は遠慮しておく、見物料はいくらだ?」
「はい。そうですか。では見物料は、白金貨1枚でございます。」
ちょっと高い。そうだな。
「店員さん、人魚を最上級回復魔法で治療すれば料金をまけてくれるかな?」
「へ?最上級回復魔法出来るんですか?だんな。」
「ああ、出来る。」
「それでしたら、全部の人魚を治してくれたら、料金はタダでいいですよ。」
「よし、乗った。」
俺は全ての人魚を最上級回復魔法で治した。どうせ回復魔法はかけるつもりだったからな。
「これは凄いです。だんな。もしよかったら、また、治してもらいたいほどですよ。」
いやもう来ないだろう。俺はその言葉を無視して言った。
「それじゃ。帰るよ。」
「あ、だんな、この店のことは、」
「ああ、大丈夫黙っているから。」
「はい、ありがとうございます。またのお越しをお待ちしています。」
俺達は店を後にした。
尾行が付いて来たので、俺は真美子を抱いて転移で飛んだ。こうやって逃げるのは、あらかじめ打ち合わせていた。
俺の転移は痕跡が残らないから大丈夫。しかし、念のため数回転移を繰り返し、途中で変装を解いた。
そして俺と真美子は、一気に転移で一旦中央国家の宿屋に戻った。
◇
宿の部屋で、一息ついた真美子は俺に話をした。
「人魚の肉はダメだったわね。5人に1人だけ成功じゃ嫌だわ。それに、人道的にも使いたくないわ。」
真美子には人魚についての詳しいことは黙っておこう。まだ、俺の能力のことを話すのは早いからな。
「そうだな。やっぱり、魔王を倒すことがいいかな?」
「そうね。魔王を倒しましょう。」
「それじゃ、レベル上げだな。」
「そ、そうね。そう言えば、テツさん、人魚に最上級回復魔法はどうせかけるつもりだったんでしょ。」
「ああ、そうだな。お金関係なしにね。」
「でも、あの人魚可哀そうだったわね。」
「ああ、でもあれを店から助けたら、その関連の組織をすべて潰さなきゃならないからな。」
「そうね。厄介だわね。」




