第4話 国のこと:兵士との別れ:初の異世界ショップ
城門を出て、街へと一歩踏み出した瞬間、足裏に冷たい感触が走った。
(……そういえば)
携太は自分の足元を見下ろした。
裸足だった。
召喚された時から、ずっと裸足のままだったのだ。寝る直前に召喚されたのだから、靴など履いているはずもない。
次々と起こる出来事に気を取られ、足元のことまで意識が回っていなかった。
城の中は石の床だったが、外は石畳。小さな石の凹凸が足の裏に食い込む。
(これは……まずいな)
携太はすぐに振り返り、先ほどの兵士に声をかけた。
「あの、すみません。近くで服と靴を買える場所はありますか」
「服と……靴、ですか?」
兵士が携太の甚平姿を見て、それから足元に視線を落とした。
「あ……」
声に、申し訳なさが混じる。
「気づきませんでした。申し訳ございません」
「いえいえ。俺も今気づいたので」
携太は苦笑した。
「少し距離はありますが、この先に服と靴を扱う店があります。ご案内しますね」
「助かります」
兵士が先導し、二人は街の中を歩き始めた。
城門からまっすぐ伸びる大通り。両脇には白や淡い灰色の石造りの建物が並び、店先もどこか上品に整えられている。
仕立て屋、装飾品店、書店らしき店、馬車の待機所。
雑多な市場というより、落ち着いた商業区といった雰囲気だった。
「この辺りは、ずいぶん綺麗なんですね」
「王城に近い区域ですから。貴族や、城に出入りする商人向けの店が多いんです」
「なるほど。では、値段も高めですか」
「はい。品質は確かですが、最初に入る店としてはおすすめしません」
兵士がそう言った直後、ひときわ立派な店構えの仕立て屋が見えた。
大きな窓の向こうには、刺繍や飾り紐のついた上等そうな服が並んでいる。
「あそこは……見るからに高そうですね」
「ええ。今の所持金で一式そろえると、かなり減ってしまうかと」
「初日から全財産を溶かすのは怖いですね……」
「もう少し手頃で、腕の良い店があります。そちらへ参りましょう」
携太は高級そうな仕立て屋を横目に、兵士の後についていった。
行き交う人々の服装も、この世界らしい。
男性は上着にベスト。女性は落ち着いた色のロングスカートや、ワンピース風の衣装。質素なものもあるが、どれも携太の甚平とは明らかに違っていた。
(そりゃ見られるよな)
携太は自分の袖を軽くつまんだ。
「そういえば、この国の名前って聞いてもいいですか?」
「はい。ここは、スラタニクス王国にある、王都スラタニクスです」
「王都……。だからああも大きな城があるんですね」
「ええ。王城を中心に、いくつかの区画が輪のように広がっています。外側へ行くほど、商人や職人、一般の方々の暮らす区域になります」
「では、俺みたいなのは外側の方が性に合いそうです」
「住みやすい所が早く見つかるといいですね」
しばらく歩くと、先ほどの店より少し落ち着いた雰囲気の一軒が見えてきた。
看板には「仕立て屋エルフィン」と書かれている。
店の前には、色とりどりの服や靴が並んでいた。派手さはないが、どれも丁寧に手入れされているのが分かる。
「こちらです」
兵士が店を示した。
「ここで、服と靴を購入されるとよいでしょう。店主は腕の良い仕立て屋です」
「ありがとうございました。助かりました。また会えたら、その時はちゃんとお礼します」
「お気になさらず。どうか、お元気で」
兵士は丁寧に頭を下げた。
携太も頭を下げ返す。
そして、店の扉に手をかけた。
異世界での、最初の買い物。
少し緊張しながら、携太は扉を開けた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
裸足のまま異世界の街へ出ることになった携太は、まず服と靴をそろえることにしました。
次回は、異世界での初めての買い物です。
続きも読んでいただけると嬉しいです。




