第8話 デザイア
黒木霊力探偵事務所。
ピコン。
スマホに、メールが届いた。
[指名だ。レディ。
高級宝石店に、
幻身出現。
解決を期待する]
「天龍川さんからのメールね」
アンは、紅茶を飲む。
「高級宝石店ですか。それでは、無理ですね」
「何が、かしら」
「アンさんへの、贈り物に宝石を」
「もしかして、結婚の…」
「すみません。高級な宝石には手が届きません」
「あら、残念だわ」
アンとほうかさんは、見つめ合う。
恋人同士に、それ以上の言葉はいらない。
気持ちが、重なっているのを感じる。
しかし、“幻身狩り”に行かなくてはいけない。
第8話 デザイア
荒宿高級宝石店。
いつもの如く、警察に店内は、封鎖されている。
顔パスで、店内に入ったアンと助手のほうかさん。
高級な宝石を守るため、動くマネキンは、すでにビニールでぐるぐる巻きにされていた。
「荒宿支店店長の柴田です」
アンは、名刺を渡される。
「幻身騒ぎだの言っていますが、非力なので、制圧することは出来ますが…」
幻身=動くマネキンは、ダイヤモンドのよう硬い。
破壊が出来ないのだ。
霊力探偵のアンならば、霊力で壊すことが出来る。
ギシ…ギシ…。
【シバタ…サン…】
「うわ」
「また、しゃべったぞ」
動くマネキンを押さえつけていた警察があわてる。
ギシ…ギシ…。
【シバタ…サン…】
「柴田店長のことを言っているのか」
「何なんだ」
警察は、押さえつける力を強くする。
しかし、非力なため、あらがうことは阻止できる。
「以前にも、デパート店員の柴田さんの名を呼んでいましたよね」
「ほうかさん。よくおぼえているわね」
アンは、右手で闇色のムチを腰のベルトから外す。
「関係ないわ。ただ、壊してあげる」
警察が、離れたのを確認して、ムチを振り上げる。
ビシッと。
バシッと。
動くマネキンは、壊れる。
「さよなら」
「うわあ」
高級宝石店の店内の植木鉢から、動くマネキンが、生み出されていく。
めずらしい、幻身=動くマネキンの出現シーンだ。
ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…。
【シバタ…サン…】
動くマネキンは、次々と増えていく。
「ちょっと多すぎよ!」
ビシッと。バシッと。
ビシッと。バシッと。
連続してムチを振り続ける。
しかし、動くマネキンは、出現し続ける。
キリが無い。
ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…。
【シバタ…サン…】
動くマネキンは、出現をやめない。
「やはり、柴田という人物に、反応しているのですよ」
ほうかさんは、高級宝石店の柴田店長を連れて、外に出た。
「出現しなくなったぞ」
警察が言う。
確かに、動くマネキンの出現は止まった。
「どういうことよ」
ビシッと。バシッと。
アンは、残存する動くマネキンを壊し続ける。
最後の一体。
「待ってください」
ほうかさんが、動くマネキンをかばうように移動した。
「え?」
アンは、ムチを振り上げたまま止まる。




