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第7話 アンの恋人

5年前。

黒木アン。中学生。

荒神神社で、巫女をしていた。


「荒宿の教会で、幻身が出た。除霊してほしい」

城之内神父から依頼だ。

アンの父の黒木アラガミが、これを引き受けた。

修行のため、アンが指名された。


荒宿教会。

動くマネキン=幻身は、大きな毛布でぐるぐる巻きにされていた。

「これを、壊してしまうのですか?意思ある存在ではないのですか?無慈悲ではありませんか」

城之内ほうか。高校生。

神父のひとり息子。

十字架を持って、神に祈り続けている。


「これは、幻身よ。意思などない人形だわ」

「…」

巫女服姿のアン。制服姿のほうかさん。

目が合う。

「可愛い巫女さんの方ですね」

ほうかさんは、微笑んだ。

「え、あ、そうね」

アンは、優しい声に、穏やかな眼差しに顔が熱くなる。

「全ての存在に、慈悲を」

ほうかさんは、神に祈った。


「壊すわ」

バコッと。

アンは、動くマネキンをなぐりつける。

動くマネキンは、壊れた。


第7話 アンの恋人


「私は、黒木アンよ」

「僕は、城之内ほうかといいます」

カッコいい高校生。そんな第一印象。

父のアラガミも、母を、第一印象から好きだと決めていた。

こんなカッコいい人と仲良くなりたい。


「何という無慈悲でしょうか」

崩れたマネキンの前で、神に祈りはじめるほうかさん。

聖職者っていうのかな。

一応、言おう。


「幻身には、意思がないの。祈ってあげる必要は無いわ」

「駄目です。祈りをささげなくては」

「優しくする必要なんて無いのよ」

「優しくします。…それとも、あなたが優しくしてほしいのですか?」

「それは、優しくしてほしいわ」

「…」


黙り込むほうかさん。


「あなたは、優しさをほしがっているのですね」

「え?」

「僕が、あなたに優しくします。お付き合いをしませんか?恋人同士になりましょう」

「え、ええ?」

男の人に、告白された。

しかも、カッコいい年上の高校生。

「アンさん。あなたを救いたいのです」

それから、アンとほうかさんは、恋人同士になった。


黒木霊力探偵事務所。

「思えば、一目惚れなのかしら。私の」

アンは、紅茶を飲む。

ほうかさんとは、荒宿教会の幻身出現で出会った。

5年前だ。

「天龍川さんとは、幼なじみなんですよね」

ほうかさんは、食器を拭いている。

「ただの知り合いよ。天龍川さん、当時の警視総監の息子さんだったから」

天龍川さんは、帝都の平和を守る警視総監の家系。

荒神神社との接点も深かった。

巫女として育ったアンは、天龍川さんに先に出会っている。

「私は、天龍川さんを好きじゃないの」

「そうですか」

「気にしているの?」

「いいえ。僕は、アンさんを救いたいのです」

はじまりの気持ち。

悲しい人形破壊をする女の娘を救いたかった。

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