第5話 シバタサン
荒宿マンション。
三階。
黒木アンの部屋と城之内ほうかさんの部屋は、隣同士。
黒木アンの部屋。
ピコン。
スマホにメールが届く。
[今日は、大変でしたね。
ゆっくり休んでください。
おやすみなさい。
愛するアンさんへ]
ほうかさんからのメールだ。
「何で、いつもメールなのよ」
自分のベッドで横になりながら、不満をつのらせる。
恋人同士なんだから、会って、おやすみなさいって。
瞳を見て、言ってほしい。
ほうかさんは、奥手なワケでは無い。
積極的で、優しい人だ。
だから、いつでも見つめていてほしい。
「ほうかさんは、私だけの恋人…」
ゆっくり目を閉じる。
第5話 シバタサン
荒宿デパート。
警察によって、封鎖が厳重になっている。
「従業員の柴田を追いかけまわす動くマネキンが、どんどん空から振ってくるんだ」
「あらら」
「総数30体」
「あらー」
「多いですね」
動くマネキン=幻身は、非力である。
取っ組み合いになれば警察官一人でねじ伏せられる。
しかし、壊せない。
ダイヤのように硬い。
霊力探偵の黒木アンなら、ムチで壊せる。
「霊力探偵に、壊していただきたい」
警察官たちは、敬礼した。
「行くわよ。覚悟しなさい」
ビシッと。バシッと。
「ほうかさんと仲良くする時間が欲しいわ」
ビシッと。バシッと。
「アンさん。僕なら、いつでも、あなたを想っていますよ」
「じゃあ、見つめていて」
ビシッと。バシッと。
十数体は、壊した。
霊力は、消耗しているが、ほうかさんへの想いは、つのっている。
「愛して、ほうかさん」
ビシッと。バシッと。
「愛してますよ。アンさん」
「貴方しかいないのよ」
ビシッと。バシッと。
総数三十体を壊した。
さすがに、疲れた。
「大丈夫ですか。アンさん」
ほうかさんが、支えてくれる。
「ありがとう。ほうかさん」
アンは、ほうかさんに身体をあずける。
ギシ…ギシ…ギシ…。
【シバタ…サン…】
黒いマネキンだ。動いている。
「あら、BOSSのご登場かしら」
アンには、まだまだ、余裕がある。
霊力が高すぎる。
それが、アンの取り柄だ。
「この子も壊すのか…」
柴田さんが、前に出てきた。
「壊すわよ」
当然、アンは壊すつもりだ。
「オレは、マネキンが好きで、よく話しかけてたんだ」
「あら、そう」
「マネキンが壊れるのを、これ以上見たくない」
「そうなんですね」
「ほうかさん。聞いては駄目よ」
アンは、ムチを構える。
「あんた、やりすぎだよ」
「褒め言葉ね」
ムチを振り上げる。
ビシッと。
バシッと。
黒いマネキンが壊れる。
デパートのマネキン大量出没は、解決した。




