第4話 デパートマネキン
荒宿シティ。夜景レストラン。
「今夜も、美しいよ。レディ」
ワイングラスをかかげる天龍川さん。
その目線の先には、漆黒のドレスを着たアンがいる。
「夜景が綺麗ね。ほうかさん」
アンの視線の先には、ボサボサ髪でスーツ姿のほうかさんがいる。
「夜景より、アンさんの方が美しいですよ」
ほうかさんは、アンを見つめている。
アンとほうかさん。二人の世界がある。
これを、ながめるのも、三角関係の醍醐味だと、天龍川さんは思っている。
アンをいつか、自分の方に振り向かせるつもりはある。
しかし、愛するレディの幸せこそが、天龍川さんの望みでもある。
とにかく、三人で、レストランで食事を取っている。
三人だけの打ち上げだ。
ピコン。
天龍川さんのスマホにメールが届く。
[警視総監。
夜のデパートで、
幻身出現の情報あり]
「大変だ。レディ。指名だ」
天龍川さんとの打ち上げでは、まだ、何も口にしていない。
オーダーもまだだ。
「行くわ」
「僕も行きますよ」
第4話 デパートマネキン
荒宿デパート。
警察が、デパート内を封鎖している。
「霊力探偵だから」
「その助手です」
顔パスで、内部に入る。
「さあ、どこかしら」
「どこでしょうね」
ドレスとスーツ姿の二人。
「デパート従業員の柴田です」
真面目そうな男の人だ。
屋上から、動くマネキンが降ってきて、店内に侵入したという。
三体。
「三体ね。多いわね」
「早速、来てますよ。アンさん」
止まったエスカレーターを、ゆっくり動くマネキンが降りてくる。
「本当に、早速だわ」
ドレスの腰ベルトにつけた丸まったムチを右手で広げる。
ギシ…ギシ…。
【ホント…サッソク…】
「いつもの、声真似ね」
ギシ…ギシ…。
【シバタ…サン…】
「え?」
幻身=動くマネキンが、人の名前を呼んだ。
従業員の柴田さんの元へ、進んで行く。
「うわあああ」
柴田さんは、あわてて、外に逃げ出す。
ギシギシ…。
【シバタ…サン…】
動くマネキンは、その後を追って、外に向かう。
「ちょっと、一般人をねらうのはやめてもらえるかしら」
「一般人に、迷惑をかけてはいけませんね」
「一気に、解決させるわ」
アンは、ムチを振り上げる。
ビシッと。
バシッと。
動くマネキンは、崩れ落ちる。
これが、後二体いる。
ビシッと。バシッと。
ビシッと。バシッと。
アンは、見事に、全三体の動くマネキンを壊した。
「ちょっと、疲れたかしら」
「ゆっくりでもいいんですよ」
「急がなきゃ駄目よ」
「確かに、急ぐべき時もありますよね」
アンとほうかさんは、見つめ合う。
デパートの危機は、去った。
しかし、この危機には続きがあった。




