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腐敗は神罰ではありません 〜保存と冬支度から始める、寒村の生活改善〜  作者: 高山 墨人
蔵守りと冬の帳面

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第61話 棚の奥

保存棚を直しても、全部がうまくいくわけではなかった。


それが分かったのは、三日続けて雨が降った後だった。


朝、リナが棚の奥から壺を出そうとして、小さく声を上げた。


「アルノ兄、ここ冷たい」


アルノはすぐに手を入れた。


棚の奥の板が、少し湿っていた。


表側は乾いている。壺の口も布で覆ってある。棚の下も上げてある。壁からも離している。


それでも、奥に湿りが残っていた。


嫌な感じがした。


肉はまだ臭っていない。薬草も黒くなっていない。けれど、このまま続けば、持たなくなるかもしれない。


「カインを呼んでくる」


リナが走りかけたので、アルノは止めた。


「先に中のものを出そう」


「うん」


二人で棚の中身を一つずつ出す。


壺。干した薬草。布袋。小さな木箱。母が使っていた古い籠。


出してみると、奥に置いていた木箱の底だけが冷たかった。


アルノは眉を寄せる。


見えるところは整えた。


でも、見えない奥はまだ弱い。


それは、今までの改善が足りなかったということだった。


昼前、カインとガルドが来た。


ガルドは棚の奥に手を入れ、黙って板を見た。


「壁の向こうが冷えてるな」


「外ですか?」


「裏に水がたまりやすい。雨が続くと、こっちまで冷える」


家の外へ回ると、壁際の土が湿っていた。水が流れきらず、低いところにたまっている。


アルノは足元を見た。


棚だけでは足りなかった。


家の中を整えても、外から湿りが寄ってくる。


「溝を掘るか」


ガルドが言った。


「水を逃がす。深くは無理だが、壁から離せる」


「俺もやる」


カインがすぐに言った。


「リナも」


「お前は泥を運ぶくらいにしとけ」


「できるもん」


リナは頬を膨らませた。


アルノは、棚から出した木箱を見ていた。


中身は無事だった。


でも、少し遅れていたら分からなかった。


見つけられたから良かっただけだ。


フィアナが来たのは、その日の夕方だった。


湿った板と掘りかけの溝を見て、彼女は静かに言った。


「棚だけではなく、家の外も見る必要があるのですね」


「はい」


アルノはうなずいた。


「中だけ整えても、外から湿ります」


フィアナは帳面に書きながら、小さくつぶやいた。


「蔵守りの作法に、外回りの灯という言葉があります」


「外回り?」


「蔵の中だけでなく、外を一周する作法です。今は祈りのために歩くとされています」


アルノは濡れた土を見た。


「それも、確認だったのかもしれません」


フィアナはすぐには答えなかった。


ただ、泥のついたアルノの手と、湿った壁際を交互に見ていた。


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