表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐敗は神罰ではありません 〜保存と冬支度から始める、寒村の生活改善〜  作者: 高山 墨人
雪解けと記録

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/99

第45話 棚の高さ

バルナ婆さんの薬草小屋で、棚の足上げが始まった。


新しい棚を作るわけではない。古い棚の下に木片を足し、床から少し離すだけだ。


それでも婆さんは、朝から機嫌が悪そうだった。


「まったく、棚まで口出しされるとはね」


「嫌ならやめる?」


アルノが聞くと、婆さんは鋭く睨んだ。


「誰がやめるって言った」


やる気はあるらしい。


春になって床の冷えが緩むと、小屋の下段は湿りが溜まりやすくなっていた。下に置いた草束の端が黒くなり、匂いも少し重い。


「床から離すだけで違うと思う」


「思う、ね」


婆さんは鼻を鳴らす。


「まあ、前に間を空けたら少し良かったからね、一段だけなら試してやるよ」


ガルドが棚を持ち上げ、カインが木片を差し込む。エルクは黙って草束を移していた。


アルノも手伝おうとすると、エルクが軽い束を渡してくる。


「それ持て」


「気を使われてる?」


「落としそうだから」


「否定できないな」


リナは婆さんに頼まれ、乾いた葉と黒くなった葉を分けていた。


「この端、少しだけなら使える?」


「薬に少しだけはないよ」


婆さんの声は厳しい。


「悪い所は悪い、迷ったら除けな」


リナは真剣に頷いた。


食べ物なら、悪い所を切って使える時もある。だが薬草は違う。人に飲ませる物だからこそ、少しの迷いが怖いのだろう。


棚が少し高くなると、下に影ができた。床と草束の間へ、細く空気が入る。


「これだけ?」


カインが言う。


婆さんはすぐ返した。


「これだけで変わることもあるんだよ」


アルノは棚の下を覗いた。


手のひら一つ分の高さ。


本当に小さい。


でも、草束が床へ直接触れていた時とは違う。湿りに逃げ場ができたように見えた。


「全部やる?」


リナが聞く。


婆さんは首を振る。


「まず一段だけだ」


アルノは少し笑った。


「一段だけ」


「そうさ、全部やって失敗したら、全部見放される」


試すなら小さく。


この村で何かを変えるには、たぶんそれが一番合っている。


棚を上げた後、婆さんはすぐ草束を戻そうとはしなかった。


「乾いた風を通してからだよ」


そう言って、小屋の戸を少し開ける。


外の風が入ると、薬草の匂いがゆっくり動いた。今まで下に溜まっていた重い匂いが、煙と一緒に薄く流れていく。


リナはそれを見て、小さく鼻を鳴らした。


「前より息しやすい」


「草のためにやってるんだよ」


婆さんは言うが、少しだけ満足そうだった。


エルクは外に出した草束を、種類ごとに並べ直している。口数は少ないが、こういう時の手は早い。


「エルク兄、間違えないの?」


リナが聞く。


「匂いが違う」


「全部草の匂いだよ」


「違う」


それ以上説明しない。


けれど、リナは真剣に草を嗅ぎ比べ始めた。すぐに顔をしかめる。


「分からない」


「そのうちだ」


エルクの返事は短かったが、少し優しかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ