表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐敗は神罰ではありません 〜保存と冬支度から始める、寒村の生活改善〜  作者: 高山 墨人
雪解けと記録

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/99

第44話 針金の輪

ガルドは曲がった針金をまっすぐにしていた。


作業小屋の台に針金を置き、小さな槌で少しずつ叩く。強く打ちすぎると折れる。弱いと曲がりが戻る。


見ているだけなら簡単そうだった。


実際にアルノがやると、すぐ曲がった。


「力を入れすぎだ」


ガルドが言う。


「入れないと曲がらないです」


「入れ方が違う」


説明は短い。


カインが横で笑う。


「アルノ、不器用だな」


「お前もやれ」


「俺は見て覚える派」


「逃げるな」


結局カインもやって、同じように曲げた。


リナはその様子を見て、少し得意そうにしている。


「二人とも下手」


「言うなぁ」


アルノとカインの声が重なった。


作っているのは、壺に布を掛けるための輪だった。春市で手に入れた短い針金を曲げ、布の上から押さえる。木の蓋ほど立派ではないが、虫や埃は入りにくくなる。


「これ、水桶にも使える?」


アルノが聞くと、ガルドは首を振った。


「水には向かん、錆びる」


「乾いた物だけか」


「そうだ、道具は場所を間違えると先に悪くなる」


それも保存の話だった。


便利そうに見える物でも、使う場所が違えばかえって駄目になる。


ガルドは針金の端を内側へ折り込んだ。


「切った端を外へ出すな、布も手も裂く」


リナが真剣に覗き込む。


「手も?」


「切れる」


「じゃあちゃんと内側」


リナは慎重に輪を持ち、乾いた壺へ布を掛けた。


少し緩い。


「落ちる」


「最初はそうなる」


ガルドが輪を少し締める。今度は布が落ちなかった。


リナは満足そうに頷く。


「加護、逃げにくそう」


「加護は分からんが、虫は入りにくい」


ガルドが言う。


それで十分だった。


壺に布を掛け、針金の輪で押さえる。


小さな工夫だ。だが、それだけで中の種や薬草は少し守られる。


アルノは歪んだ輪を見た。


完璧ではない。


でも、この家には完璧な道具より、今使える物が必要なのだ。


輪が一つできると、リナはすぐに別の布も持ってきた。


「蜜の器にも?」


アルノが聞くと、リナは真剣に首を振った。


「蜜はいつもの布でいい、匂い変わったら嫌だから」


「こだわるな」


「宝物だから」


カインがまた笑う。


けれど、リナの言うことも少し分かった。何でも同じ布で包めばいいわけではない。薬草の匂いが付いた布で蜜を包めば、蜜まで薬草の匂いになるかもしれない。


ガルドも短く言った。


「入れる物で布を分けろ」


「布、足りないです」


「だから全部はできん」


また全部は無理だった。


アルノは輪を二つだけ作ることにした。一つは種の壺。もう一つは乾いた薬草用。蜜はリナの言う通り、今までの布のままにする。


便利に見える工夫も、増やしすぎると管理できない。それも少しずつ覚えていくしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ