教室に帰って、そして文化祭も終わり
どう二つのカップリングのこの後の時間を過ごしている様子を描くのかどうか悩みましたが、彼らが居てくれました。ありがたいです。
この二人の恋の進展を祈りつつお客の注文を捌いているメンバーは、話題には出さないものの、二組のカップルが誕生か?!っという件を承知な者同士で目が合う。
女子生徒も男子生徒も同じで、自然と笑顔が溢れて言った。
「上手くいくと良いね」
「うん」
「ああ」
そんな和やかな彼らに井岡が言う。
「ここの売上も黒字になると良いな」
彼らは笑って、
「あはははは」
「いえている」
と同意して、「頑張ろう!」と励まし合った。
しばらくすると、二組のカップルが戻ってくる時間となる。彼らを率先して送り出したクラスのメンバーが告げる。
「もうすぐあいつらが帰ってくるぞ。どんな雰囲気でも明るく接客する店員のようにテキパキと行くぞ」
「おう!」
「了解」
「わかった」
「そうだね」
「確かに」
口々に笑顔で答えるメンバーの表情を見て、これなら安心だと思ったのか彼らに告げたメンバーは大きく頷いて、井岡の肩を掴んだ。
「こっちは頼んだ」
「ああ、任せろ」
そんな掛け声をした後に、さっそく立川と相手の彼女が帰ってきた。彼女と普段話をするクラスメートが駆け寄って、彼女に寄り添う。
「おかえり。大丈夫?」
「うん。大丈夫」
その返事を聞いて満足しているのかいないのか、彼女を抱きしめるようにしてから立川へ視線を向けた。
「で、どうなの?」
「その付き合うことになった」
立川としては長い付き合いと思っているなか、腕の中の彼女に視線を向ける。すると、頬を赤らめて彼女も頷いている。その姿を見届けた他のメンバーは「おめでとう」と祝う。
そして、
「何かあれば言うこと」
と彼女に向って伝える女子生徒の肩をさきほど裏側のメンバーに声をかけたメンバーが、
「確かにそうだが、立川もだぞ」
「あ、ああ」
と男子生徒同士のやり取りの後に、他の男子生徒のメンバーが駆け寄って伝える。
「さぁさぁ。ご両人。おめでたいが、今は文化祭の真っ最中。メンバーとして持ち場について頑張ってくれよ」
「ええ」
「ああ」
「じゃ、後で」と言って立川が彼女から離れて、裏側に移動した。
井岡と直ぐに目が合う立川は、大きく頷いてからお礼を言った。
「俺は何もしていない」
「いや、なんていうのか。巡り巡って井岡が応援していたことが役に立った」
「そうか。さぁ、もう一組の無事に笑顔で戻ってくるのを祈りつつ、頑張るぞ」
「ああ」
そうして立川も注文品を用意して文化祭にアルバイト店員のようにして体を動かし、盛り上げ始めていたころ、クラスのメンバーへ廊下で接客しているメンバーから声がかかった。
「もう一組のカップルが戻ってきたぞ」
みながざわついた。
さきほどの立川たちの様子を見ていたお客さんも、一緒に来店した友人同士で何やら楽し気に、立川たちを見て話をしていた。
その客たちも
「カップル?!」
と浮足立つ気持ちで、教室の出入り口である扉の方を、何やら連れと話ながら注目している。
立川と内田が裏側から現れる。後ろに内田も居た。
教室の入り口に姿を現した鈴木とミノルの表情は和やかだった。鈴木とミノルが彼ら立川たちと目が合うと、照れた表情を見せて、鈴木とミノルが一度視線を合わせた後に、彼らに向かって頷いて見せた。そして、鈴木がミノルの右手を掴んだ。それにミノルは驚くも、破顔して鈴木の左手を握り返して、軽く前後に降った後、彼らにその繋いだ手を見せるように前に出して”見ろこれが答えだ”と示した。
ミノルの今までにない笑顔に立川は涙が溢れる思いがこみ上げてくることに、戸惑いつつも、ぼそりと「良かった」と安心したようで、二人に駆け寄って、
「おめでとう」
と涙をにじませながら祝った。
涙をにじませるので、ミノルは焦り、
「立川は?大丈夫だった?」
と声を掛ける。と立川も破顔して、鈴木とミノルに、
「俺たちも付き合うことになった」
と告げた。
立川の涙目にミノルは自分と親しくしてくれてきていた友人の休憩時間に入ってまもなくの廊下で二人並んで歩いている姿を思い出す。立川が珍しく何やらどうしたらいいのか悩んでいる横我を見ていた。その表情のままに相手を見て、階下に移動していった。
ミノルは立川がアプローチも出来ていなかった中での付き合うことにあったと言う事実に改めて、友人がどれほどの勇気をもって相手に自分の好きな気持ちを伝えたのかを想像すると堪らなくなった。
「お、俺はお前は見直した。いつも世話になっていて信頼も凄さも分かっているつもりだったけれど。今はもっとなんて言ったらいいのか。人として本当に凄い人物だと感じている。お前は本当にすごい!」
「ははは、なんだそれ」
と立川は照れているようだった。
ミノルは立川の相手のところに向かうと、
頭を下げた。
「立川を宜しくお願いします」
「えっ。その、こ、こちらこそ。その宜しくお願いします」
その姿に立川も顔を赤くして、鈴木は呆れてしまいつつ羨ましく思った。自分もそういう風に言われたい。
教室の中は拍手喝采で盛り上がった。まるで誕生日を祝う客に遭遇した他の客まで手拍子をして祝う店内のような雰囲気になった。
男子生徒が教室中に聞こえるようにいう。
「ありがとうございます!!本日我らのクラスで目出度いことに二組のカップルが成立いたしました。暖かく見守ってください。それでは、彼らも文化祭をさらに満喫していただくべく、持ち場に戻って他のメンバーとの交流をさせていきたいと思います。それでは、件の諸君。持ち場に戻りたまえ」
「は、はい」
「ええ」
「ああ」
「わかった」
その彼らの持ち場に戻っていく様子にお客たちも落ち着きを取り戻して、連れ同士でおしゃべりに興じながらデザートを食すのを楽しんでいく。
裏側に戻ると、「おめでとう」と「ありがとう」の言葉が飛び交った後は、アルバイト仲間の仕事をする姿のような雰囲気になった。
そんな感じで二日間の文化祭は過ぎていく。あっという間にその期間は終わりを告げて、集計をしていたメンバーから、
「黒字になった。辛うじて」
という報告を聞いたクラスのメンバ―は後片付けをしながらホッとして、片付けの手も意欲的に動き出して後片付けの終了時間まで彼らは楽しんだ。
もちろん、二日目の休憩時間もカップルはカップルで過ごしたり、途中で出会った友人とも楽しく文化祭の中を巡って楽しんだ。
クラスの生徒たちの会話に当然のように文化祭の持ち場でのことについての話題と共に二組のカップルが誕生した話題も昇り、それを偶然通りかかった担任の先生が驚愕して、
「二組もか?!」
その担任の教師と一緒にいた他のクラスの担任の先生も、その先生へいう。
「おめでとうございます」
「おめでとうって、俺はあいつらのオヤジか?」
するとそれが生徒の笑いを誘った。
先生の言い分だと、ひとつのクラスで一組カップルが成立すること自体たまに起こることだろうが、同じクラスで二組は稀だという。
そんな彼らの話のタネになっているとは知らない彼らカップルの二組は、それぞれに相手と一緒に下校していこうと帰っていく。
そんな彼らの後姿を見送る内田のそばで井岡がぼそりと言った。
「思ったよりも上手くいったな」
「えっ。応援していたの?」
「ああ、俺の楽しい思い出の青春の一ページとなるべく、彼らの気持ちに気が付いた時から、応援していた。俺なりのアシストが功を奏した時は爽快だった」
そう井岡が満足げに言って、移動して行く。
「じゃ、俺も帰るから」
「ええ」
「また明日」
「ええ、また明日」
内田は彼らカップルが教室に戻ってくる時に感じた心のうちのもやもやについて、一瞬向き合おうとして、焦ったようにやめて、帰り支度を整えて、
「私も帰ろう。じゃ、お先」
と言って、帰っていった。
自然と足早になる。向き合わないようにしたはずのそのもやもやの正体を心のうちのもうひとりの幼い自分が向き合っていってしまったようで、自然と涙が溢れてきた。
そう、本当に想いを寄せていた相手が居たことを無かったことのようにして過ごしていたことを思い出したのだった。
相手はミノルでも立川でも井岡でもない。全く違う学年の男子生徒出会ったが、その男子生徒には意中の相手がおり、その意中の相手からお付き合いの承諾を得たと喜んでいる姿に遭遇してしまったのだった。
自分の失恋を知った内田は、いつの間にかその悲しみを友人に伝えることもなく普段通りに振舞っている間に、自分の中で無かったことになってしまっていたのか忘れていた。
それを今思い出したのだ。
鈴木がミノルに対して想いを寄せているようだと知った自分は何をしたのか。鈴木を煽るようにしてミノルのそばに寄っていって見せつけたのではなかったか。
「最低だ私」
後悔する自分に気が付いていて声を掛けたのか、
「内田さん」
と声がかかる。
その声の主は会田と大岡だった。
「な、なに?」
会田は大岡に、
「我々で包もう」
「ラジャー」
とやり取りをすると、内田を中心にして二人で包み込む。
「な、なに?!」
という内田に大岡が言う。
「泣いても良いよ」
「そう、私たちがガードするから」
「心の声を叫んでも良いよ」
「一緒に”あー!”とでも叫んでキャンセリングするから」
「な、何言って・・・・・・」
という内田の瞳には涙が滲んでいた。口がわなわなと震え出す。その震えは腕にまで伝わったようだ。
それに気が付いた会田と大岡は、内田の腕をさすって温めようとした。まるで内田を含めて小動物が暖を取るように一緒になってお互いを温め合っているかのようだ。
内田の声にならない声が漏れ聞こえてきた。
「うん」
「うん」
と二人が肯定する。
背中をさすりだす大岡が、「辛かったね」と声を掛けると、とうとう内田は声を抑えて会田に抱きついて泣いた。
会田と大岡は通り過ぎる下校していく生徒に、「大丈夫です。構わず行ってください」と声をこっそりかけながら、
内田の背中をさすりつつ、
「うんうん、そうだね。くわしく分からないけれど、きっと貯めこんじゃっていたんだね」
「私たちが聞いているよ。詳しくわからなくてもそのことに気が付いたよ。もう大丈夫だよ」
と慰める。
内田は心行くまで吐き出すように泣いたせいか。泣き終わると幼い表情を見せてにっこりと笑った。
その表情を見た会田と大岡は、ホッとした。
そして念のためにと、会田と大岡は自分たちの持ち物を取り出して渡す。
「一日貸してあげる」
「そうそう。返さないとか意地悪言ってもダメだよ」
「そう、なんせ同じのがあるから、私らにダメージあるけれど軽ダメージだから」
「そ、そう」
「お守りだから。今日の君に家に帰る間も帰ってからも寝ている時も守ってくれるから」
「そうそう」
何かのキャラクターの小さめのぬいぐるみキーホルダーとアニメのキャラクターのキーホルダーだった。
「お、お守り?」
「そうそう。彼らが守ってくれるから」
ぬいぐるみを示して、
「この子はみんながオブラートに包んで口では言わなさそうなこともずばりと言ってくれて、時には励ましてくれることもあるキャラだから」
「こっちの丘君は、お兄さんだけれどお母さんみたいに世話をしてくれたりしてくれるようなキャラクターで温もりを与えてくれる優しく見守り導いてくれるから」
「そ、それは凄いね」
「そうそう。それを思い出して。もやもやして自分でも嫌だなぁこんなこと思うなんてとなったら、特にこの彼女と彼を見て、今言った彼らの性格的特徴を思い出して」
「そうだよ。そうすると、必ず彼らが叱咤激励してくれるから」
「はははは。あ、ありがとう。しばらく借りるね」
「しばらくか、ま、仕方ない」
「そうだね。我々にはまだまだ彼らが居るからね。大丈夫、気にせずに借りて」
「何だったら」
「頂戴」
「流石内田さん」
「復活して来たね」
「良かった良かった」
「仕方がないね。特別サービスだよ。ね」
「うー、こうして私の手から旅立つときがくるとは」
「ははははは。一緒に帰ろう」
内田の提案に二人もついて歩く。
内田を真ん中にして会田と大岡が一緒に、帰っていく。
校門を出た時に、道路に設置しているミラーがきらりと光った。北風が吹き始めたのか、夕暮れの風は少し肌寒い。木々の葉っぱたちはまだ青々とした緑色で、風にこっそり揺れていた。
立川の勇気のある行動を想像したミノルは思わず涙ぐむほどでした。そして内田の事情。何かあるかもと思っておりましたが、まさかこういうことだったとは。描いている私もドキドキしたものです。先生もビックリしている姿描けて良かったです。先生とも仲の良い学校の雰囲気が出ていたのなら嬉しいです。




