↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/30

文化祭準備、当日から二日前

忘れていたけれど、文化祭を迎えていなかったので、迎えられるように準備期間残りあと二日ということにしてみました。

 ミノルが文化祭のために作成するアイテムは数えるほどにまで進んでいた。簡単な軽作業を数工程すれば完成するものばかりだ。


「俺、これは自分で作る。ありがとう、みんな」

「うううん」

「わかった」


など声が返ってきた。中で、


「それじゃ、これとこれを使うだろうから、はい」


と言って内田が道具をミノルの傍に移動させた。


「あ、ありがとう」

「いえいえ。張り切って作っちゃって」

「ああ」


そういう二人の会話を鈴木はちらりと見ていた。

 そんな二人と鈴木の様子を、井岡や立川そして残りの二人の女子生徒も見守っていた。

 ミノルが作業に取り掛かり、内田も自分の作業に取り掛かったところで、鈴木をはじめとしたメンバーもそれぞれの作業に取り掛かる。

 残っていたアイテムを作るのは本当に簡単だったようで、ミノルはこの日の文化祭準備時間が終わる前に終わらせることができた。予定作業時間の半分もの時間が残った。


「他に手伝えることある?」

「じゃ、こっち来てくれ」


ミノルが立川に声を掛けると、立川がミノルを呼んだ。


「なんだ?」


ミノルが近づく。すると立川が用紙を見せた。そこには文化祭前日の準備の時間にどの位置にどのアイテムをどう飾るのかが書き込まれていた。


「あ、これ。そうか、これこうなるのか」

「そうそう。それを一応ひと通り説明させてくれるか?」

「分かった」


 一枚の用紙を二人で見て確認しながら、アイテムの飾り方を説明して確認している。自然二人の距離が近いからか、会田がぼそりと傍に居る大岡に立川とミノルを見ながら呟いた。


「二人は?」

「あるよりのある」


 井岡にはこの会話の意味が解らなかったが、鈴木には分かったようで、顔を真っ赤にして立川とミノルを見た。その鈴木の反応を見た井岡は、察した。ろくでもない類の話しなのだろう、と。

 鈴木が会田と大岡に向かって咳払いをする。二人は顔を赤くする鈴木を見て、鈴木に近づいた。

 会田は唐突に鈴木に質問した。


「立川相手と内田相手。どっちが嫌?」

「答えたくありません」

「なるほど。前提を否定しないわけですね」

「本当だ」


深く頷く会田と大岡に鈴木は声を上げそうになるのをこらえて、鈴木からも距離を縮めて二人に声を掛けようとした時、大岡が言った。


「影ながら応援しているよ」

「そうだな。影で悪いが応援はしている」

「なっ!?」


 その三人の女子の内緒話に気が付いた内田が、


「なになに?」


と近づくと、鈴木は。


「何でもないわよ」


と引き下がって自分の作業に集中する。すると、会田と大岡が内田に向かって、


「あの二人のカップリングはありだと思いますか?」

「なに、それ。もう、そういうの好みなの?」

「まぁ、読みはしますね」

「そうだね。私も」

「そうなんだ」

「交友関係広くはなくてもそのよく特定の友人と一緒だから、さぁ」

「あぁ、それで暇つぶしも兼ねてそういう話題を話していたわけね」

「そう」


 井岡は何も言わなかった。その代わり、鈴木を呼んで作業の進捗と文化祭前日の準備の段取りについて話し合い始めた。その様子に、話し込んでいた三人の女子生徒も自分たちの作業を再開させる。

 その間に大方の説明は終わったのか、ミノルと立川は二人とも井岡たちの元を訪れた。


「俺たちにも前日の動き教えてくれるか?」


 ミノルが井岡たちにお願いをする。すると井岡と鈴木は頷き、メンバーに声を掛けて前日の流れについての説明をして確認をしていった。

 少し進んだところから、他のグループで担当している人たちも加わって、クラス全員での準備の大きな流れを話し合う時間となった。

 文化祭の準備はこの日を入れて後二日だ。そのことをクラスの文化祭実行委員が告げると、立川の横でミノルがぼそりと呟いた。


「忘れてた。もうそれくらいになるのか」

「おいおい。休んでて感覚狂ってたのか?」

「すまん」

「俺がなんとか説明していたわけ分かってくれたか?」

「ああ、分かった。前日の明日も頼む」

「ああ、分かってる」


 この二人のやりとりをすぐ後ろで聞いていた内田は、会田と大岡の話しを思い出し、想像した。そして少し頬を染めて、うつむいて、両手で顔を覆った。

 内田は思った。

 鈴木の様子がミノル君に対して不自然に見える時があった。それで試しにミノル君の傍にわざと寄っていって、体をくっつけた。

 すると鈴木は明らかに不機嫌な表情を見せたのだ。それを見て確信した内田は、その様子が面白かったのか自分でも分からないがミノル君を手伝った。するとやはり鈴木の機嫌は悪くなった。

 自分の頭の中ではそのことでいっぱいであったが、まさか会田と大岡がもたらした話しから自分が想像したものは完全にお付き合いをしている二人の様子であった。単純に今まで読んだことのある恋愛もののお話しのイチャついているシーンを二人に変えて想像したに過ぎなかった。しかし内田は、すんなりと迷うことなく大人なシーンすら浮かぶような自分に恥ずかしくなったのだ。

 と同時に、なんら不自然がないと思った。そんな自分に内田は赤面したのだった。

 その後から内田はミノルの傍にあまり寄らなくなった。すこし避けていると言ってもいい。特に立川と一緒に居るミノルの姿を見ては、内心キャーと小さく叫んでいた。頭の中に思い浮かぶのは、恋人になっている立川とミノルの姿だった。

 内田は会田たちのもとを訪れていう。


「あなたたちのせいで、頭に二人の恋人姿が浮かんで、困るんだけれど」

「自分にしてみたら」

「だめよ、自分よりも彼が良いと思っちゃうもの」

「わーお」

「それはそれは」


 会田と大岡は両手を合わせて内田を拝んだ。


「南~無~」

「拝むな」


 どういう内容の話しをしているのかは分からないながらも、同じクラスの女子生徒たちが、拝んだり拝まれたりして楽しそうにしている姿を見た、同じクラスの男子生徒が笑った。すぐそばなので、彼女たちもその彼が笑ったことに気が付いた。


「どんな話?」


と聞く男子生徒に、会田が言う。


「まだ君は無事だ」

「ん?なんのことだ?」

「清いままで居て」

「なんだ、それ。俺は一般的な男子生徒くらいな感じだぞ」

「いきなりのカミングアウト」


と会田が言うと、その男子生徒の隣に居た男子生徒が言った。


「すまん、忘れてくれ。お前も真面目に答えてるな」


と謝った。その姿に、会田と大岡の頭の中では、読んだことのあるお話しのカップリングのどのカップリングみたいにしたら二人は似合うのか。囲碁や将棋の千手を読むように頭脳の機能を活用して瞬時に結果をたたき出した。

 二人は見つめ合い、同時に同じ本のタイトルを口にした。

 盛り上がる二人に自分の存在が置いてけぼりにされてしまった男子生徒は、隣の男子生徒の肩に寄りかかる。

 そのときますますこの二人の女子生徒たちは、


「もう!もう!」

「ね!ね!」


と楽しそうであった。その姿に、内田は徐々に冷静になっていった。この二人の気持ちは分からなくもない。己もどんなキャストならこのお話し楽しいのか想像して楽しんだことはあるから。

 ただ、それを他人がしているのを見ていると、徐々に冷静になって考えられるようになった。

 ミノル君に対して自分よりも立川が隣に立っていることを推した自分には、鈴木のライバルとしてミノル君を恋人として求めるのはと考えると、答えは、そんなこと”ありえない”と出た。ミノル君には悪いが自分には彼を恋人にとは望まないとはっきりと答えが出た。

 すっきりした内田は、この日の準備時間が終わってクラスのみんなが徐々に帰宅していくのに合わせて、帰っていった。


「ドラマ見よう」


 彼女には彼女の楽しみが別にあった。ただそれだけだった。恋愛のドラマでキャーキャー言っている方がはるかに健全だし背徳感もないし堂々とそのことについて話ができる。家に着くのが楽しみなようで笑顔で歩いて帰っていく。

 ミノルは立川と井岡と共に、帰り支度をして一緒に帰っていった。鈴木はその後ろ姿を見ていた。後ろに居る立川に声を掛けようとして後ろを振り向いたミノルと鈴木の目が合った。


「鈴木さんも一緒に帰る?」

「うん。待ってて、今行く」

「うん」


 ミノルから鈴木を誘ったことに立川は内心ガッツポーズをしていた。己の友が女性に自ら声をかけた。大きな進歩である。

 井岡が言った。


「立川一緒にちょっと付き合って欲しいところがあるんだが」

「ああ、いいぜ」

「悪いが、急いでいるから立川を借りるからな」

「あ、ああ。帰りはどうするんだ」

「別々になると思う」

「なんだそうか。わかった。じゃ、また明日」

「ああ、また明日」

「立川行こう」

「ああ」


 井岡に連れられるようにして立川が去った後に、鈴木がやってきた。


「あれ、他の二人は?」

「ああ、用があるって言って先に行ってしまって。帰りは別々だって。だから悪いけれど俺と二人だけれど、大丈夫?」

「ああ、ええ。問題ないわ」

「そうか。じゃ、帰ろう」

「ええ」


 ミノルと二人で一緒に帰宅するというこの様子を会田は眺めていた。明らかに鈴木の眼差しが輝いたように見えた。


「ほう」

「なに?」

「鈴木さんに春が来たみたいだ」

「わーお。青春だね」

「ああ。今その相手と二人で下校デートで帰っていった」

「青春の一ページだね」

「我々も我々なりの青春の一ページを飾ろう」

「本屋さんに寄るの?」

「その前にショップによる。推し活収納のファイルをゲットしたい」

「分かった」


 二人も笑い合うと帰り支度を整えて、一緒に下校した。

 クラスの教室には、黒板の前で、文化祭実行委員を先生や他の生徒が話を聞いてあげていてアドバイスやねぎらいの言葉を送っている。

 下校を促す音が鳴り響くと、彼らも帰り支度を済ませて帰路に着いた。






若い頃にキャーキャー言ってお話しに出てきたキャラクターでのカップリングの話しを友達と少しはしたことあるのは私です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。