アイデア案の素材の買い出しという名の戦い
買い出し、クオリティーと予算、代替え案あなたはこういった場面でどこに「ああ~!」と思い悩み悔しさを感じましたか?またクラスメートのアイデアの凄さや管理の凄さなどどんなものを感じて文化祭の準備をしていましたか?それらを思い出すきっかけになって楽しんでいただければと思います。
メンバーの買い出し班で訪れた店は、学校のそばにある文房具店だった。文房具の物なら大抵のものが揃うと噂されている。店の外観は昭和後期を思わせるもので、店の入り口も横スライド式になっていて来店していものが自らの手で扉をスライドさせるものになっている。センサーを使用して自動で扉が開くタイプのものに慣れていて、この店の扉のシステムに気づかないお客がたまに現れる。
ミノルも立ち止まって扉の上部を見ている。黒いところに赤などの淡い光が現れてセンサーが反応しているのか分かる部分があるはずだ。そう思って上に視線を向けて止まっている。
「なにやってるの?」
ミノルのすぐ後ろに居る内田が尋ねた。
「これセンサーが壊れてる」とミノルが内田に言うと、内田は目を丸くしてミノルを避けて前を見て扉の様子を確認して言った。
「ミノル君。これ自動扉じゃないよ」
「えっ」
と驚くミノルの他に鈴木と立川も「えっ」と言っていた。立川が内田を見た後にミノルを見る。ミノルの表情は通常と変わらないことにどこかホッとする立川。そして立川の前に居る鈴木に視線を向けるが、すぐ前にいる人物で前方を見ていて後ろからだと表情を確認しずらい。
立川が驚いたポイントと鈴木が驚いたポイントが同じだったら。そう思った瞬間立川の中で稲妻が走ったようだった。
”あの鈴木が、ミノルを!!?”
そう思うと立川の体の動きが油切れしたように、カクカクプルプルと動いて、前の鈴木の肩に手を置いて、立川は鈴木に「本気なのか?」と質問しようと動いていた。
その立川の手が鈴木の肩に届く前に、彼らの前方でミノルは内田に「手動だから自分で開けなきゃ」と言われて、「ああ、はい。ごめん、ありがとう」と自然に会話をして教えられている。そうして文具店の扉は開かれた。
-ガラガラガラ
扉の開く音がすると同時に、ミノルたちが聞いたこともないメロディの音が鳴った。
ミノルは進んでいく。内田は上を見る。「不思議な音楽だね」と言っている。
「昔からある店にはこういう音が多いらしいよ」と鈴木が情報を与える。
「すみませーん」と立川が店の奥に居るだろう店主へと声をかける。そんな立川を最後尾にいる会田たちに押されながら入店する。
「入ってよ。私たちも入りたいんだから」と。
「おお、すまん」と立川が全体を前進させた。
しばらくすると「はいはいはい」と痩せたおじいさんとおばあさんが出てきた。
「すみません。お邪魔します」
ミノル他挨拶して頭を下げた。
「ああ、すぐそこの学生さんたちかい?」
「はい、そうです。今日は文化祭の出し物を作るための材料を買いに来ました」
「ああ、文化祭の買い出しね」
「そうです」
「もう、そんな季節かい」
「ええ、まぁ」
「どんなものが欲しいんだい?」
「えーっとそれなんですが」
みんなの手にあるデザイン案をそれぞれノートを開いて店主に見せる。
「ああー、ちょっと待ってな」
と言って店主が老眼を取り出してかけて、それぞれの案を眺める。眺めてくれているものに対して、みんなの意見として上げられているものを伝える面々。
緊張している学生の彼らを察したおばあさんが、傍に居るミノルに声をかけた。
「あんた頑張ったんだね。こんなに案を描いて」
「は、はぁ。ここで頑張らないとと思って」
「そうかいそうかい。大切な心だ。やるねぇ」
「いえ、えーっと。た、立川」
「俺に助けを求めるな。ちゃんと世間話を成立させているから安心して世間話を続けろ」
「はははははははは。そうかそうか。坊はそういうタイプの子か。わたしゃ、嫌いじゃないよ」とふふふふふと笑って居るおばあさんに、タジタジになっていく。内田や鈴木に見られているうえに会田たちにクスクス笑われているのでミノルは緊張した。
「緊張せんと、おじいさんにアイデアの素材について相談しなさい」
「は、はい!」
ミノルはおじいさんの方を向く。
おじいさんはミノルの案を全て見ると、おもむろに立ちあがって店にある商品をそれぞれ取り出す。後ろにミノルが付いてきていないことを知ると、
「坊、付いて来な」
と言って手招きした。
「は、はい。今行きます」
そう言ってミノルがついて行く。おじいさんはその様子をみて頷いてから、手にした商品をミノルへと渡す。そしてまた違う棚に行って、商品を取り出す。そしてまたミノルに持たせた。
そうしていくつかの商品を渡し終えると、さきほど居た場所に戻って来て、一つ目の案のページを開いて、ミノルに説明をし始めた。
「この部分はこれを使うといい」
「ああ、土台」
「そうだ。こっちの方が安上がりだが破れやすい上に水に弱いし、ペンで書くなら、50円は高いがこっちの方が映えるし、少しすれ違う時に擦れても破れにくいし水に少し強い。雨の日の湿気に影響を受けにくい」
「うーん。確かに俺たちのクラスの出し物は飲み物など取扱うからな。万が一を考えてこっちにするか?」と立川がでもなぁと思いながら提案する。
「ちょうどいいとこどりの間は無いんですか?」
と鈴木が尋ねると、おじいさんが「ちっ」と舌打ちをした。ビックリするメンバー。
「しっかりしたお子さんだ」と言うと、
おじいさんはまた棚へと移動するので、ミノルはついて行く。取り出した一枚は真っ白い紙ではなく少し青みがかった白色だろうか、取り出してきた。
手を出して受け取ろうとしたミノルを無視しておじいさんはミノルの横を通って元の位置に戻ってきた。
さきほど紹介していた白い画用紙の中でも水に強い商品の横に重ねるようにして並べて置いた。
「これがあんたが言う、その商品だ」
「いいところと、値段は?」と鈴木が臆さずに尋ねた。
「先ほどよりは水に弱いがまだマシってやつだ。値段は30円高いくらいだ。どうだ」
「色みが青みが買った白でこっちのほうがお化け感が出ていいんじゃない?」
と内田の意見に、ミノルはデザイン案とこの紹介された色画用紙を見比べて頷いた。
「確かに。真っ白で一番安い紙だと小学生や中学生とか優しい感じがする」
「そうね。確かに」と鈴木。
「それは言えてる」と立川が同意した。
会田たち二人も頷いて「ホラー感出るし目立つね」と賛同した。
「確かにただの白よりも存在感あるから怖い印象とかホラーとかハロウィン感が出るかもしれないな」
「じゃ、きまりじゃな」
「いや」とミノルが言う。
「それだとおばけだけ浮いちゃうんじゃないか?」
「じゃ、白?」
と内田が聞き返す。
「うーん」と言って、おじいさんが取り出してきた当たりの棚に行って、白色の色画用紙をいくつか見てみるミノルの姿に立川と鈴木がついて行った。
ミノルの引き出した商品に対して、いきなり鈴木が、「こ、これ。これにしよう」という。
驚くミノルとは違い、立川が素早くミノルの取り出した商品を持っておじいさんにみせた。
「これはいくらで、どんな特徴がありますか?」
「ちっ。あの坊主」とおじいさんが悪態を着いた。会田たちは驚いておじいさんを見た。
「ふふふ。今年の子供たちは頼もしいみたいですね」とおばあさんがおじいさんの肩に手を置いた。
「ふん。そうじゃな。そういうことにしておいてやるか」と言って「こっちにもってこい」と立川たちを促した。
おじいさんの説明によると、ミノルが選んだ物は、先ほどのよりも30円安く、水彩画を描く者も居るくらいには水に強いことが分かった。水に濡れたらしなるが、だからと言って破れやすくなるのも少しの程度だとわかった。
たわんでも一度水でスプレーをして濡らしてから平らなもので挟んで乾燥させればある程度真っ直ぐなることも分かった。
「これくらいでよくない?」
「そうだね。これくらいなら予算大丈夫なんじゃない?」
内田がずばり立川に予算を訊いた。
立川は心して訊けというと、ずばりと金額を教えた。
「早く言えよ」
と声を荒げるメンバーと共におじいさんも同じようなセリフを吐いていた。
店内にどっとあっけらかんとした気持ちのエネルギーに癒された面々の笑い声に包まれた。
こうしてデザインに対しておじいさんが商品を集めて、メンバーのみなに見せて意見を交換してどの商品を使うかを決めていった。全員分の案の商品を選ぶのに、四十分はかかった。
「な、なんか本格的で幾分疲れたな」とミノルが言うと、
「まだまだこれからが、金額とクオリティーの競争だ」
とおばあさんがにっこりしていった。
鈴木が険しい顔をしていう。
「確かになるべく金額を抑えるようにして選んだつもりだけれど。全体の額が予算よりオーバーしているかも」
「そもそも何個ずつ作るんだ」
「少なくともひとつの案で二つから三つは無いと寂しいと思う」
とやりとりをしている横で、ミノルがおじいさんと商品のひとつを開けて、何個作れるか考えている。
「ああ」
と内田がビックリしている横で鈴木が腕組みをして、「いくつ作れます?」と尋ねた。内田がそんな鈴木に若干ひきつつも一緒に答えを聞こうとしている。
会田たちも聞き耳を立てている。
「おじいさん。ためていないではやくおっしゃいなさい」
とおばあさんが促した。
「この坊のおばけの案はこの商品一袋で、8枚作れる」
「多いの少ないの?」
「教室におばけのアイテム8個か」
立川や鈴木が上を向いて想像しているようだ。
立川が言う。
「お化けのアイテムはハロウィンを盛り上げるメインキャラだ。看板や出入り口、それから上からつるす分を考えると倍あってもいいのか?」
「いやー、倍は多いんじゃない?」と会田がいう。
「そうか?」
「うん」と会田といつも一緒に居る子が頷いた。
「それならそうするか」
と二袋購入することに決めた。
おばあさんが椅子を出してメンバーを座らせる。
「なんで椅子があるの?」
という鈴木の疑問に、おばあさんは教えた。
「何年ここで店を出していると思うんだい。幾年文化祭を支えてきたここの店主としてじいさんがアイデアを出してくれるさ」
「ばあさんも考えてくれよ」
「バレたかい?」
「当たり前だ。それこそ幼馴染の我々、生まれた時から知り合いだったくらい冗談が言える年月一緒に居るんだ。分からない方が病気なんじゃないかと疑わにゃならんっていうのに。まったく」
「ははははは。ほれ、じいさんわしにべたぼれじゃろう」
「ははははははははははは」
メンバーみながかわいた笑いを店内に響かせる。
この時初めてこのメンバーの心は一つになった気がした。と立川が冗談で思った。
順番にミノルのように個数を作成できる個数を確認して同じ商品の購入個数を判断していった。
そうしているうちに一時間と少しの滞在時間となった。
「こんなに時間がかかるとは」
とミノルがびっくりしている。
「ま、まあね。ほんとうに」と内田が同意する。
すると、鈴木が「ここでしっかり決めておかないと」というと立川が「アイデアと確かな作成方法も教えてもらえるしな」と楽しそうに言っている。
夕方も五時になるところだ。
会田が言った。
「一応先生に連絡しておいたら」
「そうだよね」
「じゃ、私が伝えてくるから」
と鈴木が名乗りを上げようとすると、「おまえさんの番じゃ」と鈴木はおじいさんと相談する番となった。
「仕方ない」と番が終っているミノルが名乗りを上げた。
「俺が行ってくるよ」
「おお、任せた。六人で来ていて、三人が終っているから」
「これ、今日持ってきた予算よりもオーバーしても買うってことでいいよね」
という会田の確認に、「あまり出ていなければ」という立川の応答に、会田はミノルに「そのことについても説明して置いた方がいいんじゃない。お願いできる?」と訊いた。
「ああ」と言って請け負ったミノルは席を離れてポケットから携帯電話を取り出して先生へ連絡をし始める。
店の扉の傍にいったら音が鳴るので、仕方がないと店を出ようとしたら、店内に居ろと怒られて店の中で通話することになった。
何とか夕方六時には学校に帰って帰宅の途に就いたメンバーは門の前でお疲れ様と別れの挨拶をしてそれぞれ帰って行った。
職員室では担任の先生が他の先生に「生徒たち間に合って良かったですね」と労われていた。
文化祭で出し物に必要なものを考えてアイデア出して、それを形作る時。どんな素材でどれくらい必要なのか想像するのが難しかったために、買い出しで脳みその能力が疲弊したのを覚えています。




