「はぁ……、はぁ……。久しぶりの激しい責めに、感激しちゃいましたぁ~……」
……その頃、契は。
「ご主人様と絆ちゃん、今頃どうしてるかな?」
「お姉ちゃん……どうでもいいけど、ポテチ食べすぎ」
「私が買ってきたんだけどなー……」
契は今、結と一緒に、虚露の部屋へ遊びに来ていた。ここで一旦待機して、暫くしてから戻るつもりなのだろう。それまで暇だからなのか、契は妹とお喋りしている。
「それで、どうして絆さんとあのゴミ虫を仲直りさせるの? 放っておけばいいのに」
「だって、二人は幼馴染だし。絆ちゃんだって、ご主人様と仲直りしたいって言ってるし」
「でも、それってお姉ちゃんが世話焼くことでもないでしょ? 虚露ちゃんに手錠まで用意させて。ね? 虚露ちゃん」
「え……? そ、それは別に構わないけど……」
呈と絆のことは、既に二人にも話していた。絆の過去については大分ぼかしておいたが、虚露のほうは薄々勘づいている様子だった。
「それで、手錠なんて何に使ったの? あのゴミ男を監禁したとか?」
「ん? 二人を繋いで放置したの」
「……それ、酷くない? 主に絆さんに対して」
手錠の用途について、結はそんな感想を漏らした。……うん、普通はそう思うよな。絆の心配しかしていないのは、実に結らしいが。
「それくらいの荒治療じゃないと、二人の仲は戻らないよ。多分、今日だけだと何も改善されないだろうし。今度は結にも協力してもらうからね」
「えー?」
勝手に作戦要員にされて、不満げな様子の結。……諦めろ。お前の姉は変人で変態なんだから。
「鹿山さんも、頼りにしてるからね」
「は、はい……」
虚露も、控え目に頷いた。……手錠の費用は自腹だし、面倒だし、同じこき使われるなら呈のほうが百倍マシだと思ったが、虚露は決して顔には出さなかった。というか、そんな度胸はない。契の頼みを無下に断れば、結に嫌われるかもしれないのだから。尤も、結もそのくらいでは嫌ったりしないだろう。寧ろ喜んだかもしれない。
「あ、もうこんな時間だ。そろそろ戻らないと……じゃあね、二人とも」
「うん。……早く、絆さんを解放してあげて」
「は、はい……」
待機時間が終わったのか、契は部屋を出て行った。……どうでもいいが、食べたポテチの袋は片付けろよ。それとも、まだ残ってるから二人に食べろと言っているのか?
「もう……お姉ちゃんも、いい加減にすればいいのに」
「うん……」
今回ばかりは、心の底から親友に同意する虚露であった。
◇
……さて、契が戻ってきてから。
「……やっと戻ってきたか」
「やっとだね……」
契の帰りを今か今かと待ち望んでいた呈と絆。これでようやく、手錠が外せるな。
「申し訳ありません。手錠の鍵を忘れてきてしまって。……こんな駄目駄目な私を、どうかお仕置きしてください」
「後でいくらでもしてやるから、とっとと鍵寄越せ。ってか、謝るくらいなら最初からこんなことするな」
契から鍵を受け取り、手錠を取り外す呈。これでようやく、自由に行動できるな。
「……ったく。酷い目に遭ったな」
「うん……確かに酷かったね」
拘束が解かれて、しみじみとそう呟く二人、危うくお漏らししそうになったんだからな。……荒治療どころか、人として大切なものを失いそうになるのは勘弁だな。
「ささ、お仕置きの準備は出来てますから。いつでもどうぞ」
「……もう、お前には何もしないのが一番のお仕置きだな」
「あぁんっ! 放置プレイだなんてぇ~……! はぁはぁ……!」
「……契ちゃん、そろそろ病院行ったほうがよくない?」
「今頃かよ」
なんかもう、ほんとにぐだぐだだな。
◇
「というわけで、一度、本格的に灸を据えてやる」
「お願いしますっ!」
結局。今回の奇行に関して、呈は、契の欲求不満が原因だと結論付けたらしい。最近は絆のこともあってか、あまり契を構えていなかった。それが契のフラストレーションを溜めてしまい、変な影響を与えたのだと考えたのだろう。……実際は何の関係もないのだが、彼女にとってはご褒美なので、契は何も突っ込まなかった。
「……それで、何でこんなSMみたいなことになってるの?」
「今更だろ」
契の姿は、体操着の上からビニールロープで縛られた状態だった。薄着の上から亀甲縛り……確かに、SMプレイと呼ばれても仕方がないだろう。っていうかそのものズバリSMプレイだし。
「安心しろ。別に鞭とかを使うわけじゃない」
「じゃあ、どうするの?」
「こいつだ」
呈が取り出したのは、蛇腹折にした白い紙―――ハリセンだった。突っ込みの定番アイテムだが、まさかとは思うが、それで調教する気か?
「……よし。契、尻をこっちに突き出せ」
「はいっ!」
四つん這いになり、呈に向けて尻を突き出す契。鼻息は荒く、これから始まる行為に期待しているのだろう。
「……はっ!」
「あぁん……!」
呈のハリセンが、契の尻を引っ叩いた。パン、と景気のいい音が鳴り、契の喘ぎ声と重なった。
「……ふんっ!」
「はぁん……!」
「……ほいっ!」
「あふぅん……!」
この前と同じ、肉体的加虐。だが今回は、ハエ叩きではなくハリセンを用いているためか、どうしてもコント感が拭えなかった。
「まだまだ……!」
「あはぁ~ん……!」
ハリセンと嬌声がリズミカルなテンポを奏で、その光景と合わせて、ギャグアニメっぽさを最大限演出している。……映像をお見せできないのが残念でならない。
◇
……十分後。
「はぁ……、はぁ……。久しぶりの激しい責めに、感激しちゃいましたぁ~……」
調教を終えて。契は尻を突き上げた四つん這いのまま、弛緩し切った顔でそう言った。床は彼女の涎とか、その他詳細を記せない液体でぐちょぐちょになっている。……相当盛大だったんだな。
「……ふぅ。さすがに疲れたな」
一方の呈は、右腕をぐるぐる回して、肩の疲れを癒していた。大分叩いていたから、腕や肩にも結構な負担が掛かっているのだろうな。
「ち、契ちゃん……大丈夫?」
「う、うん……大丈夫~」
そのあまりの激しさに、絆も心配になったようだ。前回とは色んな意味でスケールが違ったからな。特に、周りの散らかり方とか。
「……ったく。これ以上変なことはするなよ? ちゃんと大人しくすれば、また定期的にやってやるからな」
「は、はひぃ~……」
「後、その辺自分で始末しろよ。自分でぶちまけたんだから」
「分かりましたぁ~……」
呈はそう言いつけると、自室へと引っ込んでいった。残されたのは、余韻に浸りながら痙攣を続ける契と、少々戸惑っている絆の二人。
「……契ちゃん」
……とはいえ、これで契が大人しくしているわけ、ないよな。




