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「今の俺達には致命的な問題がひとつあります」
「今の話ではそんなのなかったように思えたが」
「...メインは最後かなと」
「お前のメインは何個あるんだよ...それで最後だろうな?」
「はい。最後で一番の問題です。それは、人数です」
「人数?3人1チーム制なんだろ?俺と戸田、下柳の3人じゃないか」
「"人生"は戦うのは3人1組ですが、エントリーするのには5人必要なんです」
「どういう事だ?」
「ゲームの途中で気が狂って自殺する奴、チーム内で殺し合う奴、大金が動くとそういうトラブルが度々起きます。そして、人員が足りなくなる。
まあいわゆるストックです。
ゲームが途中で終わるのが一番運営が嫌がることですから。
途中で強制終了になるゲームなんて、見てる側はしらけますしね」
「それで5人か...それより戸田、さっきからお前やけに詳しいな。経験者か?」
「いいえ、出たことはありません。
事情を知っているのは、新人だった頃に下っ端として運営に関わっていたことがあるからです。
その辺の出場者よりは詳しいとは思います。
ただ知ってる分、断言できますが、"人生"にイカサマは通用しません。多くの目がその勝負を見ていますし、対戦前のボディチェックなんかも抜け目ないです。
正真正銘の真剣勝負の場です。
だからこそ盛り上がるし、大金も動いてくれます」
「闇金と言えどそこはきちんとしてる訳か。
まあなんにせよ、事情に詳しい奴がいるっていうのは一つのアドバンテージになるな。
だがそうなると、お前の言うように人数が問題になるな。
あと2人か。戸田に心当たりのある人間はいるのか?」
「残念ながらいません...過去に俺が代理エントリーした奴が数人いますが、もれなく全員欲の縛りに負けて、連絡も取れない環境にいますね...
"人生"は欲で戦う人間ではなく、理性で戦う人間じゃないと勝つのは難しいです。
ただ理性が強いと、どうしても負けた時の想像をしてしまう。それが判断を鈍らせてしまう。
人間勝つことよりも、負けた時や損した時の感情バイアスが強いんです。
勝ったら1億よりも、負けたら1億の負債を抱える重圧がどうしても上回ってしまう。
勝てる人間には理性が必要です。ただ理性が強い人間ほど、負のバイアスも強い。
そのバランスが崩れている人、勝てる人ってなると中々...」
「そうだよな。出れそうな人間ではなく、勝てそうな人間ってなると、選択肢は一気に狭まるな。
下柳は?」
「いません」
「下柳は口数が少ないよな。デフォルトなのか...?」
「それが下柳のデフォですよ。
下柳はガードレールみたいな奴です。
道を外しそうになったら、危なくなったら、身を挺して守ってくれます。
口数が少なくてとっつきにくい奴ですが、頼りになる奴ですよ」
「...うす」
いいのか下柳。
ガードレールだぞ。
「...そうか。とりあえず、お前ら2人に候補になる奴はいないってことか」
「立川さんは?どうですか?」
...正直思い当たる奴はいる。
2人。
命も預けられる程の実力の人間が。
ただ、俺はそう思っているが、今のあいつらは俺の事をどう思っているのか分からない。
それに、そもそも俺の話を聞いてくれるのか。
聞いてくれたとしても信用して動いてくれるのか。
...いやそれでも行動しなければ現状が変わる可能性は0だ。
「いる」
「本当ですか。今すぐ交渉してみましょう」
「そうだな。ただあんまり期待はしないでくれ。俺には人望がないんだ」
「それは多数意見の塊ですか...?俺にはそうは見えないですけど」
「さあな。答えはすぐに出るだろ」
スマホの電話帳で検索する。
まず1人目
シラサキ
白崎
久しぶりの電話は緊張するな...
出てくれるだろうか。
表示された番号をタップする。
耳元でコール音が鳴る。
「立川さん?」
懐かしい声だ。
間違いない白崎の声だ。
「白崎、俺だ。分かるか?」
「分かるもなにもないですよ!何言ってるんですか!
それに急に電話かけてくるなんて、どうしたんですか?
立川さんのことだから絶対いい電話じゃないでしょう〜
分かってますからね〜」
そうだ。
白崎はこんな調子だった。
いつも場を盛り上げてくれて、
それでいて誰よりも気が効くやつだった。
その喋り方と声を聞いたことでより鮮明に思い出す。
「白崎は相変わらずだな。
お前の言う通り、いい話じゃない。むしろお前に迷惑をかける話だ」
「いいですよっ」
「いや、これから説明するんだよ」
「いや、だからいいですって。
内容なんてどうでもいいんです。
立川さんが頼ってきてくれた。
頼って連絡をしてきてくれた。それが全てでしょう?
...それに立川さんには返しきれない恩もありますから。
で、何したらいいんですか?」
損得を排除したその回答に考えを改めた。
白崎は命を預けられる人間。
俺は思い上がっていた。
そうじゃない。
白崎は
...命を預けたい人間だ。
「...ありがとう。
会わせたい奴もいるし、込み入った話になるから直接会いたいんだが、都合が合う日教えてくれないか?」
「今から行きますよ。どこに行けばいいですか?」
「え?いや、俺は今からでも良いが...逆に大丈夫なのか?」
「何言ってるんですか!立川さんが最優先に決まってますよ!地球の反対でもすぐ駆けつけますよ!」
「大袈裟だな...でも、ありがとう。この借りは必ず返すよ。じゃあ今の現在地を送る」
スマホから現在地を共有する。
「あ、届きました。届きました。ちょっと待ってくださいよ〜何分かかるか見ますからね〜
う〜ん、そうですね...
今から速攻動いて...30分後には着きます!」
「了解、待ってるよ。気をつけてな」
「お任せあれ〜」
戸田が何か言いたそうな顔でこっちを見ている。
「なんだ」
「あるじゃないですか。人望」
「白崎は特別いい奴なんだよ」
「どうですかね」
「うす」
下柳、その相槌はいらない。
「俺が今かけたのは、白崎っていう昔の仕事仲間だ。
これからすぐこっちに来てくれるらしい。到着まで30分程度かかるとのことだ。
信頼できる奴だ。安心してくれていい。
ただ手助けしてくれると言ってくれてはいるが、内容を伝えれてはないから、ここできちんと話をしたら判断が変わるかもしれない。
その時は勘弁してやってほしい」
「それは俺らに攻める権利はないですよ。話を聞いてくれるだけでありがたいです。
ところで...立川さんは何の仕事をしてたんです?
それがあの身のこなしと関係してるんですか?」
「それは全員揃ったら説明するよ。お互い信頼関係を築く為にも必要な情報だろうしな。
あとは...もう1人の心当たりに連絡してみてどうなるか。だな」
白崎はもしかしたら協力してくれるかもしれない。と心の片隅では思っていた。
ただ、もう1人。
黒岩は本当にわからない。
再度電話帳を開き、検索する。
クロイワ
黒岩
番号をタップする。
耳元でコール音がまた続く。
「はい、黒岩です」
とりあえずは繋がった。
あとは黒岩の回答次第だ。




