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泥華ー泥の中にも、息はある。

最新エピソード掲載日:2026/08/02
人間というものは、よく転がります。
石につまずいたからではありません。
誰かに突き飛ばされたからでもありません。
自分という、たった一人の人間につまずいて転ぶのです。
転ぶたびに、恥を拾います。
見栄を拾います。
欲を拾います。
愛されたかった昨日を拾い、
嫌いになりきれなかった誰かを拾い、
そうして胸の内側は、拾い集めたものばかりで、とうとう歩く音まで重たくなってしまいます。
それでも人は歩きます。
酒を飲み、
煙草へ火を点け、
古本をめくり、
ラジオへ耳を預け、
東京という街を少し遠くから眺めながら。
人間は醜い。
そのことを知るたび、人間は少しだけ愛おしくなります。
これは立派な人間の話ではありません。
どこまでも拗れ、負け続け、笑われ、笑い返し、それでも人間という生き物を見捨てきれなかった、一人の男の独り言です。
きっとこの話には、正しいことなど一つも出てまいりません。
あるのは、夜更けまで燃え残った火と、翌朝になっても消えない灰ばかりです。
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