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【第一章】第2話『旅旅』


「……」


「んっ……」


目を覚ますと星空だった。


「もう夜か。アレからずっとここで倒れてたんだ」


恐怖星墜(スフィア・ノヴァ)》と使徒のぶつかった衝撃により、無惨な光景となった草原が目の前にあった。

近くの木々は無造作に倒れ、地面はクレーターのように抉られている。


「……にしても凄い魔法だな。下手したら"極級"かも」


ボクは我ながらの感想を抱く。

『初・中・上・超・極』

この世界の魔法には(クラス)がある。

極級はその(クラス)の中でも最上位で魔力の消費も激しいがその分、威力はある。

【究極魔術】とも言うね。


(まぁボクの場合、魔力の『質も量』もまだ低レベルだし。体力も魔力も全部使って倒れるまでしてようやく使徒を倒せたけど)


やっぱりまだまだだなぁボク。


「ーー凄かったなぁ旦那!」


「?」


聞き馴染みのない声がした。

声の出所は村の秘剣【エア・ライン】からだ。

どういうこと?


首を傾げながら剣を見ていたが、その刹那。

剣から何者かが飛び出してきて思わず身体を後ろに引く。


目の前に浮いていますは、モモンガだった。

毛並みは白と黄緑を基調とした配色で、サイズは小型の犬とか猫ほど。


「え?」


「そりゃ驚くよな。無理もないぜ」


モモンガは目を瞑りながらウンウンとうなづいていたあと話を続ける。


「結論から言えばオイラは旦那の持ってるその秘剣【エア・ライン】に宿る魂みたいなもんだ」


「魂?」


「そう」


モモンガはそう言うとクルッと宙で回った。


「どうやら旦那の剣に何らかの衝撃が加わってオイラは出てきちまったらしい」


「何それ……」


なかなかのキャラが立ったモモンガだ。

衝撃といえば使徒の攻撃を剣でガードしたけど……

あの時の剣への衝撃が原因だろう。


「とにかく旦那。よろしくなっ!」


「よ、よろしく……餌代掛かりそう」


ボソッと本音が漏れた。


「その辺は大丈夫!オイラの主食は風そのもの。

風なんかその辺に吹いてるし」


「そうなんだ……」


こいつにはボクの常識は通用しなさそうだった。


「おっと自己紹介を忘れてた!オイラの名前はエアンガだっ!」


「ボクはヒバリ。よろしくね」


「じゃあオイラは剣の中に戻るよ。剣の中はひんやりしてて気持ちがいい」


「へ、へぇ……」


ボクはそう苦笑いをした。

そのあとすぐに慌てて口を開いた。


「ーーってかレアン!」


そういえば!死体は?

草原の奥にある岩壁の方を見ると使徒との戦いの衝撃によりさらにボロボロとなったレアンの死体の姿がそこにはあった。


「……ッ!」



ボクはその姿を見て少し涙を流す。

地面を掘りレアンを埋めてやりながら心に誓う。


(大魔王サーガスーク。ボクが絶対に倒してやるッ!)


「旦那……」


ふとエアンガの心配する声が剣の中から聞こえた。


「ごめんごめん。君には関係ないよね……」


「そんなことない。その子はきっと大事な子だって見てればわかる」


エアンガは剣から出てきて宙に浮きながらそう頷く。


「うん……大魔王を倒せば神様が蘇らせてくれるんだって」


「大魔王を!?そりゃ大変だね」


「ボクはこうしちゃいられないんだ。

大魔王はこの世界のどこかに今もいるはず。

勇者が戦って魔王に敗れる前にボクが倒さなきゃ」


「でもどうやって……?」


「それは。ボクにも分からないけど」


「ーーひとまず村に戻ろう」


 その後ボクはエアンガと村に帰ったが、見たところ特に被害はない様子。

家に入るとボクの親が心配していた。

レアンの家の人は大丈夫だろうか?


死んでしまったことを伝えるべきか?

いや今はやめとこう。


夕飯のシチューを食べながらそんな感想を抱く。


「そういえばあんた帰ってきた時ボロボロだったけど何してたの?レアンちゃんは?」


「……」


暗い気持ちになりながら夕飯を終え眠りについた。


 次の日。

さっそくボクはレアンの家に向かった。


家の前に立つと中からレアンのお母さんとお父さんが焦燥の雰囲気で話し合っているのが聞こえる。


「ちゃんと探したの?」


「ああ。昨日は深夜になるまで探してたさ」


「どこ行っちゃったの?あの子……」


(「レアンは……死にました」って言える訳ない)


ボクはそのまま来た道へと足を向ける。


「なぁ。言わなくて良かったのか?旦那」


ちょっと歩いたらエアンガがそう口を開いた。


「ーー大魔王を倒せば全ては解決なんだよ」


「そうだけどさぁ……」


「もうボクは行くと決めたから。長い旅へとね」


こうしちゃいられない。


(あ、でも忘れてた)


「アイツにも言ってかないと」



 村の1番端っこに住むボクと同じ位の歳の幼馴染。

向こうはボクを勝手にライバル扱いしてくるんだよね。

ーーでもいい奴だよ。


「よう、ヒバリ。どうした?」


「あ、カン。えーとね……」


名前はカン・バルラス。

赤髪のヒーローカットが印象的な男の子。


「今日の昼には出てくから」


「え?出てく?まさか……例の旅か?」


「うん。レアンを取り返す為にね」


(あ、つい言っちゃった)


「どういう事だよ」


「ーー実は」



 「はぁぁ!?昨日そんな事があったのかよっ!あの爆音はそのせいか」


カンはドン引きした感じで身体を後ろに引く。

爆音というのは使徒を倒した時の音だろう。


(かなり大きかったし……)


それは置いておいてボクは話を続けた。


「だからボクは行かなきゃならない。止めないで。そしてボクが出ていくまでこの事は【誰にも言わないでよ?】」


「ああ。ただ一つだけ言わせてくれ」


「……ん?」


「ーーこの村から出てくなら、俺を倒してからにしなっ!」


カンはそういうと二つの短剣を取り出しボクに威嚇するように見せた。

その短剣の刃にはボクの焦った顔が写っていた。



 使徒を壊滅させたあの草原にボクとカンは対峙する形で立っていた。


「見せてみろよお前の力を!」


カンは短剣を二刀流にして持ちながら、攻めてくる。

使徒ほど速くはないがそれでも気を抜けば目で追えなくなりそうなレベルの速さだった。


ボクは【エア・ライン】でその双剣に応じる。


ーーガキンッ!


二つの短剣とボクの秘剣がぶつかり合いそこで止まる。

ボクとカンは拮抗した力を振り絞り、互いに剣を振り解く。


「やるなヒバリ」


「カンもねっ!」


目線を合わせてそう言い合ったあと、カンは右手をボクに向ける。


(ーー魔法)


瞬時にそう理解した。


「《アイスレイン》!!」


そのカンの呪文詠唱に続き、ボクの頭上に水色に透き通る氷柱が現れた。

ボクは後ろにサッと身を引いてから言った。


『風の力よっ!』


その掛け声と共に【エア・ライン】を振る。

暴風が現れ、氷柱を吹き飛ばす。

カンは飛んできたその水色を自慢の速さで避ける。


「お得意の【エア・ライン】だな」


「うんっ!でもこれは知ってるかな?」


ボクはドヤ顔と共に"アレ"を出す準備をする。

使徒を倒したアレを……

ーーカンには秘密にした固有魔法。


「《恐怖星墜(スフィア・ノヴァ)》!!」


「は?何だそれ」


ボクの目の前には巨大なクリア球体が表れて……!


(あ、あれ……?)


目の前には全長3mぐらいの透明に光る球体があって遅いスピードでカンに向かって動いているだけだった。


「何だよその魔法」


カンが鼻で笑いながらその球体を蹴った。


ーーその瞬間。


巨大な爆発が巻き起こり空気が一瞬歪んだ。

カンは10mほど吹き飛び奥の岩壁に背中をぶつける。


「何か弱かったような」


ボクはボソリとそう呟く。

戻ってきたカンは「俺の負けだよ」と言ってボクの肩を叩いた。


どうやら認めてくれたみたいだ。


「その魔法。まだ本気じゃないだろ?なんかヤバそう」


「うん。よく分かったね?」


「まぁな。そんな気がしたよ」


カンはそう言って笑った後、続けて言った。


「お前なら大丈夫!!村の事は俺に任せてお前は旅に出ろよ。大魔王サーガスークだっけ?そんなもんボコボコにしてこいっ!」


「お、おう!」


ちょっとぎこちなくなったけど……

とにかく冒険の始まり!

まぁそんなテンションでもないけどさ。

レアン……待っていろよ。


ボクは首飾りを壊れそうなほど握りしめた。


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