【第一章】第3話『レアンの首飾り』
「ーー思い出すなこの首飾り」
自宅で旅の支度をしながらボクは独り言を呟いた。
ふと、窓の奥に広がる青空と雲を見上げながら回想を始める。
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「ーー見て見て!この首飾りっ!」
夜空に咲く月の明かりに照らされ雪化粧のように光る銀髪の髪を靡かせ彼女は好奇心を胸に秘めた表情で一人の少年に首飾りを見せていた。
手から紐がぶら下がりその紐の重心には世にも珍しいとされる鉱石【サファリエ】がある。
その鉱石は深海のような暗い蒼に翠の光が混じり合っていた。
「うわぁサファリエだ。凄いじゃん」
茶髪の少年はその透き通る青い瞳を輝かせそう感心する。
「お父さんが発掘してきたんだって!」
「探窟家って凄いなぁ!ボクも将来なれるかな?」
「うーん……なれるかもね!」
二人は笑い合っていた。
そして、少女は恥ずかしそうに少年に言う。
「この首飾り。実は自分で作ったんだ。凄いでしょ?」
「うんっ。凄いじゃんレアン!」
「ーーヒバリに貰って欲しいんだけど。ダメ……かな?」
レアンは照れ臭そうに言い、ヒバリは申し訳なさそうに言った。
「えぇ!?いいよ。レアン自分で付けなよ」
「ーー私には似合わないよ。それにおまじないかけたんだよっ?」
「お、おまじない?へぇ。なんて?」
「いつかヒバリと一緒に旅に出られますようにって」
彼女のその月に照らされた笑顔は美術館に飾りたい程の美しさを放っていて少年は少し顔を赤くしていた。
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「よしっ。準備オッケー!」
腰に掛かる灰色バッグの中には水筒や薬草、傷薬が入っている。
肩には剣を斜めに背負い、服装は冒険に適した革主体の茶色と白を基調とした服を着ている。
「ヒバリ?そんな格好してどこ行くの?」
玄関で靴を結んでいたら一緒に住んでる叔母さからの質疑が飛んできた。
「カンから聞いて」
「はぁ?」
そのまますぐに扉を開けてボクはそのまま村の出口まで走った。
剣に宿る魂"エアンガ"と共にいざ大魔王討伐の旅へ!
「レアン待ってろよ!」
「随分意気込んでるな」
「って!カン!?」
出口からヒョイっと現れたのは幼馴染のカンだった。
「ーー行くんだな」
「うん。少しのお別れだね」
「ごめんね。カン。村の事任せちゃってさ」
「別に良いけどよ。そもそもお前はいずれレアンと旅立つ予定だったし?俺は村を守る予定だったじゃねぇか」
「そうだったね。じゃあもう行くね?元気でね」
「お互いな」
カンはそう笑顔で言って親指を立てた。
その親指にボクも立てる。
そのあと、剣から声が聞こえて慌てる二人。
「オイラもやるぜぇ!」
(え、エアンガ……)
エアンガは剣から飛び出してきてカンに向けて親指を立てた。
「何だよこのモモンガっ!?」
当然のようにカンは驚く。
「えーとなんて言ったら良いか……」
「オイラはこの秘剣【エア・ライン】に宿る魂みたいなもんさっ!」
「何だよそれっ!」
その後、カンにエアンガの説明をしようとしたが、後ろから叔母さんがこちらに向かってくるのが見えてボクは焦った。
「とにかくもう行くねっ!?叔母さん来ちゃったし」
「マジか。ホントだ。よしっ!行ってこい!そこの良くわからんモモンガもなっ!」
「良くわからんとは何だ!」
「まぁまぁ……」
なかなか『カオス』な村の出方になってしまった。
さて、まず何処に行くかだけど。
村から出て百メートルほど歩いた地点でボクは行き先について考えを巡らし得ていた。
「そうだなぁ……お金も1万ゼルしかないし」
「旦那。そういう時はお金をまず稼ぐんじゃねぇか?」
「エアンガっ。確かにそうだね。でも強さも欲しいんだよなぁ」
そこでボクは思い出す。
「そう言えば人口が多く発展してる街とかだと『ギルド』っていうのがあってそこで魔物の討伐依頼だとかアイテム納品依頼だとかを無事達成すれば報酬のお金や道具などを貰えるんだ」
「ふーん。というと?」
エアンガが片目を瞑りながらそう言う。
「それにランク制度もあってより高いランクになれば依頼内容のレベルが上がって報酬内容も上がるらしい」
「ーーだから。まず、ギルドに行くっ!そこなら強くなりながらお金も得られるし」
「なるほどな!そりゃ良いじゃねぇか。旦那の判断に委ねるぜ!」
剣の中からその意気揚々な声が放出される。
ボクは追加で思い出したように言った。
「あ、しかも大魔王は恐らくだけど他の大陸に居ると思うんだ。そう都合よくこの大陸には居ないだろうし」
「ん?それがどうしたんだ?」
「船だよ。大陸移動だと大金が要るって叔母さんに聞いた事ある」
「なるほどっ。そうなるとギルドに行くのが今の最適行動な気がするな」
「うんっ。よーし!じゃあここから1番近い街『オケアノス』に行こう!」
ボクは行き先が決まり嬉しさを胸にした。
しかしここで気づく。
(徒歩で行ったら3日はかかるっ!)
この事実はかなり重い。
村に馬車はあったけど、どれも農作物運搬用とかでいわゆる生活用でもなかったし!
そもそも借りれなかった。
たまに来る近隣の街への臨時便とかはあったけどさっきのあのタイミングじゃ待ってられなかったし。
(ひとまず幹線道路に出よう。そこで商人の馬車を見つけて何とか乗せてもらうか、乗合馬車を見つけるしかないね)
「エアンガ」
「ん?どうした旦那?」
「あと5時間は歩くよ!森の中突っ切ったりするから!」
「はぁ!?」
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その会話から2時間くらい経ったろうか。
ボク達は森の中に来ていた。
雑に生い茂る木々の葉隙から太陽光が透き通り神秘的な雰囲気を醸し出していた。
倒木が無造作に倒れていたりして歩きにくいっ。
「魔物とか居ないよね?」
「居るだろな」
「やだなぁ怖いなぁ」
「旦那そんな弱くないだろ?怖がる必要なくね?」
「そんな事ないよ!
強い魔物出てきたらどうすんの!」
そのボクのセリフの後、目の前に現れたのは液体状の生命体『スライム』。
紫色の透明な身体をプニプニと揺らしている。
「あーはいはいスライムね」
ボクは魔力を右手に集中させ、スライムを殴る。
(スライムはただの物理じゃ絶対倒せないから少しめんどいんだよね)
こうして魔力で部位補強しなきゃね。
グシャリと音を立ててスライムは蒸発した。
「ちょ、ちょっと!その紫スライムは私が狙ってたんだけど!捕獲依頼達成出来ないじゃん!」
ソプラノの高い声をした少女がそこにはいた。
赤いフード付きマントを着ていて、弓矢の武器を背中にかけている。
髪の色は薄暗めの黄緑。
「え?そうだったの?ごめんね」
「もうっ!許さないっ!スライム探し手伝ってもらうからね!?」
ぷんすかしながらその子はほっぺを膨らませていた。
(これはめんどくさい事になったぞ)
その後、ボクとその子は紫色スライム探しを開始する。
ーー開始から20分が経過。
「大体は水色の奴しかいないんだね」
ボクは感心したようにそう呟く。
「紫色は珍しいのよっ!もうっ!」
「旦那ぁ!見つけたぞ!あそこだ!」




