第七話 新たな仲間
どこにでもいるはずの女性、桜江千須佳は何気ない日常を送っていた。戦いの中で新たに出会った戦士、ブロッサムファイヤーの桐月翼咲と仲間になろうとするが、翼咲は距離を置いてしまう。そんな中、地域のゴミ拾い大会で距離を縮めようとするが同じチームになれず偶然にもチーズレーザーとして戦う仲間と同じグループになってしまう。しかし、互いの正体を知らぬままであった。
桐月翼咲はディフィートを前にブロッサムファイヤーへとその姿を変える。
「私は、私のできることを!」
ブロッサムファイヤーは自分に言い聞かせるようにそう言うと、ディフィートと二体のマリスに立ち向かう。
「アラモードさんもお願い致します。」
「あ、うん。」
三浦竹月は仲間である双見アラモードに、共に戦うようお願いする。そしてアラモードが戦いの準備をしようと指輪を嵌めようとした瞬間、ブロッサムファイヤーは戦いながらも慌てて止める。
「あの、アラモードさん!」
「ん?」
「だ……、大丈夫です。私だけで戦えます。」
「あ、そう。」
ブロッサムファイヤーは何を思ったのか、助けを必要としなかった。
「つっきー、敵は多いしこれピンチじゃない?」
「はい、マリスも二体いますし……。」
三年前の戦士である新原桐菜はディフィートとマリスの三体を相手に戦うブロッサムファイヤーを心配する。竹月もブロッサムファイヤーの不利な状況を心配していた。
「ここで戦士を一人潰せば俺の手柄だ!」
「くっっ……、ここで倒されるわけには……!」
ディフィートはブロッサムファイヤーが一人で戦っている状況に勝機を見出す。ブロッサムファイヤーはディフィートと二体のマリスに押されてしまう。
「ここは千須佳さんも呼ばなくては!」
赤園風布花がブロッサムファイヤーの不利な状況を心配し、千須佳に連絡を試みるが、ブロッサムファイヤーが止める。
「赤園さん、大丈夫だから!」
「どうして抱え込むのですか!?」
「千須佳さんが戦いに出ると、他の方も呼ばれるんだよね?あの人を呼ぶわけには行かない!」
「そんな……!」
ブロッサムファイヤーは千須佳が戦士になることで正体を知らない四人も呼ぶことになるのでなるべく呼ばないつもりでいた。
「マリスだけでも、一気に片付けないと……!」
ブロッサムファイヤーは苦しそうにそう言うと、炎の翼を広げる。
「はぁぁ〜〜〜、はぁぁ!」
そして空高く舞い上がり、火の鳥と化してマリスに突撃する。そして二体のマリスは消滅する。
「何っ、マリスを倒されただと!?」
「さあ、まだ戦いますか?」
マリスを倒されて焦るディフィートに、ブロッサムファイヤーは煽るように言う。
「ちっ、ここは一旦退くか。」
ディフィートは状況を不利に感じ、その場を立ち去ってしまう。ブロッサムファイヤーはディフィートが立ち去ったのを確認すると、元の翼咲の姿に戻る。
「終わった……。」
翼咲は戦いの疲労が蓄積したのか、一瞬ふらついてしまう。そんな翼咲を風布花が咄嗟に抱えて支える。
「大丈夫ですか?桐月さん。」
「大丈夫、ちょっと立ちくらみが起きただけだから。ありがとう。」
風布花は翼咲を心配するが、翼咲は心配しなくていいと強がる。
「皆さん、お待たせしました。ゴミ拾いの続きをしましょう。」
「は……、はい…。」
そして翼咲はまたゴミ拾いを再開しようと竹月、桐菜、アラモードに呼びかける。
「つっきー、どうする?」
桐菜は先陣を切って歩き出す翼咲を心配して竹月に相談する。
「取り敢えず様子を見ましょう。今回はマリスを倒せましたが、また上手く行くとも限りません。千須佳さんには私から連絡しておきます。」
竹月は一先ず様子見をすることにするのだった。
「翼咲ちゃんが一人で戦ったんですか!?」
「申し訳ありません、彼女が一人で戦うと仰っていたもので……。」
「こちらこそ同行できなかった弊害があるとは思わなくて、すみません。」
竹月は別のチームでゴミ拾いを行っている千須佳に電話していた。千須佳は翼咲が一人で戦っていたことに驚き、そして自身が戦いの場に居合わせられなかったことを後悔していた。
「一先ず彼女の様子を見ます。もう無理はさせませんのでご心配なさらないで下さい。」
「ありがとうございます。」
千須佳は竹月に翼咲を任せ、電話を切るのだった。
「おーい千須佳さーん、何やってるんすかー」
「ごめーん、今行くー!」
電話を切った千須佳は氷山雪大に呼ばれ、またチームの元に戻る。
「何かあったんですか?千須佳さん。」
千須佳の少し深刻な様子を心配した仁科杏が尋ねる。
「ああ、うん。さっき別のチームの子から怪物が現れたって連絡があってね。」
「「「「え!?」」」」
千須佳の話を聞いた雪大と杏、そして苦木流馬と水無西瓜は同時に驚いてしまう。
「どうしたのみんな?そんなに驚いて。」
千須佳は流馬、雪大、西瓜、杏の四人があまりにも大きく驚いたことに違和感を覚えて尋ねる。
「桜江、戦士は現れたのか?恐らくチーズレーザーは……。」
流馬は戦士が現れたのか尋ねる。
「そうですね、チーズレーザーは現れていません。その代わりブロッサムファイヤーが戦ってくれたみたいです。」
「そうか、それなら良かった。」
千須佳はブロッサムファイヤーが戦ってくれたと話す。流馬は一先ず安心する。
(ブロッサムファイヤー、桐月が一人で無茶しやがったのか……。)
雪大は心の中で翼咲を心配してしまう。
「でも怪物はブロッサムファイヤーが倒してくれたんですよね?それなら安心してゴミ拾いを再開しましょう!」
「そうだね杏ちゃん、ゴミ拾いしよう。」
杏が呑気にゴミ拾いの再開を提案し、千須佳も賛同する。そして千須佳、流馬、雪大、西瓜、杏の五人は再びゴミ拾いに歩みを進める。
「あの、雪大さん。」
「どうした西瓜?」
西瓜はふと雪大に小声で話しかける。
「大丈夫でしょうか?またダークビタビターズが現れたら……。」
「ああ、桐月だけで戦っていたら危険だ。チーズレーザーになって助けられればいいんだけどな……。」
西瓜が心配していたのは翼咲が一人で戦っていたことだった。雪大もまた翼咲が一人で戦わないか心配する。
「しかし、チーズレーザーの人がどこにいるかわかりませんし僕達の意思でチーズレーザーにはなれませんからね。」
「ああ、それだけがチーズレーザーの不便な点だよな……。」
西瓜と雪大はチーズレーザーとして翼咲を助けられない歯痒さを感じるのだった。
一方その頃、翼咲、風布花、竹月、桐菜、アラモードの五人はゴミ拾いを進めていた。
「桐菜さん、ゴミを見つけました。」
「ほい、つばさっち。」
翼咲はトングで拾ってきたゴミを桐菜に言い、桐菜はゴミ袋を広げて翼咲にゴミを入れてもらう。
「じゃあ私、また別のところを見てきます。」
「うん、頼んだ。」
そして翼咲はまた落ちているゴミを探しに行く。
「つっきー、ちょっといい?」
「どうしました?」
桐菜はふと隣にいた竹月に話しかける。
「私も人付き合い得意な方じゃないんだけどさ、つばさっちを見ているとやっぱり戦士ってだけで距離を縮めるのは難しいな〜って。」
「そうですね、本来は何も接点もない方に心を開いてくれというのも酷な話です。」
桐菜は翼咲を見ていて、戦士同士がそれ以外の接点を持たないことを改めて感じていた。
「そう思うとさ、私達の時もいのりっちが頑張ってくれていたんだなってさ。」
「私達を繋ぐ物が何か、それは誰にもわかりません。それでも、私達は共に戦う仲間に寄り添わなくてはなりません。」
「難しいね〜。」
桐菜は以前の仲間が自分達を頑張って仲間にしてくれたことを思い出す。竹月も戦士である以上は仲間に寄り添わなくてはならないと諭す。
一方で、風布花は翼咲と共にゴミ拾いを進めながら話しかけていた。
「桐月さん、少しいいですか?」
「赤園さん?」
「千須佳さんに無理をさせるわけには行かないって思ったんですか?」
「うん、だって他の人の精神を強制的に呼び出すんでしょ?それに、私のせいで他の人が危険な目に遭ったらって思ったらあまり手を借りたくないっていうか……。」
翼咲は千須佳に手を煩わせたくなかったという心境を吐露する。その翼咲の言葉に、風布花は呟く。
「なるほど、以前の私では至らなかった考えですね。」
「どういうこと?」
翼咲は風布花の言葉が気になる。そして風布花は以前の戦いを振り返るように語り出す。
「私が小学生だった時、力をコントロールできなかったんです。どうも余計な力が付いてきたせいで。それでしばらく戦いを控えて大人の方々にお任せしていたんです。だから桐月さんのように一人で抱え込むこともできませんでした。」
「そうだったんだ……。」
風布花が語ったのは自身が小学生だった頃の七年前の戦いだった。風布花は戦士になってから、力を制御できずにしばらく戦うことができなかった。
「桐月さんが千須佳さんを戦いに巻き込みたくない気持ちはわかります。しかし戦いを経験した私ならわかります、一人で悪の組織とは戦えません。」
「そう、だよね……。」
風布花は翼咲に、一人で悪の組織と戦えないと諭す。翼咲も理解しているつもりではあったが、未だ誰かと共に戦うという決心がつかなかった。
一方その頃、千須佳、流馬、雪大、西瓜、杏の五人はゴミ拾いを進めていた。
「千須佳さ〜ん、ゴミを見つけました!」
「僕も見つけました。」
杏と西瓜はトングでゴミを掴み、千須佳の元に持って来る。
「はい、どうぞ。」
杏は嬉しそうに千須佳の広げたゴミ袋にゴミを入れる。西瓜は少し緊張した様子でゴミを入れる。
「よし西瓜、次はこっちを見に行くぞ!」
「はい、雪大さん!」
雪大が西瓜を呼び、西瓜は行こうとするがふと倒れ込んでしまう。
「あ、あれ……?」
「おい西瓜、大丈夫か?」
「大丈夫です、ただの立ちくらみです。」
雪大が慌てて歩み寄るが、西瓜は立ちくらみをしただけだと話す。
「水はあるか?」
「すみません、さっき切らしちゃって……。」
「多分脱水か、俺も水持ってねーしな……。」
どうやら西瓜は脱水による立ちくらみを起こしていたようだった。雪大も水を持っていないようで弱ってしまう。
「西瓜君脱水?」
「そうなんすよ。」
千須佳も歩み寄り、西瓜の事情を察する。
「大丈夫?お茶持ってきてるからあげようか?飲みかけなんだけど。」
「えっと、お茶ですか?」
「良かったな西瓜。」
千須佳は西瓜に持ち合わせていた飲みかけのお茶を分ける。雪大は安心するが、西瓜は赤面してしまう。
「ありがとうございます、いただきます……。」
西瓜は赤面しながらも千須佳から貰ったお茶を飲む。
「飲んじゃった。千須佳さんの飲みかけということはこれが間接キス……、そう思うとただのお茶なのに仄かにレモンの香りが……。」
「仁科さん、勝手に変なこと喋らないでよ。」
お茶を飲んだ西瓜の心の内を勝手に代弁するかのように杏が喋る。西瓜は杏の勝手なお喋りに辟易してしまう。
「西瓜先輩があまりにもキモかったから言ってあげただけです。」
「つくづく性悪だなお前。」
「柄の悪い高校生に言われたくありません。」
「ああ言えばこう言いやがって……!」
「ちょっとみんな、喧嘩しないの!」
雪大が杏の性根の悪さを揶揄するが、杏はまたしても生意気な態度を見せてしまう。雪大と杏は口論になりかけるが、千須佳が咄嗟に止める。
「西瓜君大丈夫?元気出た?」
「はい、お陰様で。ありがとうございました。」
千須佳は西瓜に寄り添い、元気の出た西瓜は千須佳にお茶を返す。
(全く、いつまでこの小うるさいガキ共の相手をしなきゃいけないんだ……。)
流馬は一連の皆の行動を呆れながら見ていたのであった。
一方その頃、ディフィートは未だ元の世界に戻らず人間界の森を彷徨っていた。
「はぁぁ……、何となく帰りづらくなっちまったけどこのままずっと帰らねえわけには行かねえしなぁ……。」
ディフィートは何となくダークビタビターズの本拠地に帰りづらくなっていた。それは新たに幹部となったエスプレッソ、カカオ・パーフェクト、ピーマンの三人を信用できずにいたこと、そしてその三人に対しマリスが倒されて逃げ帰ってしまったことを告げるなどプライドが許さなかったからだ。
「まだ人間はこの森で何かしているらしい。もう一回悪意を持った奴を探してマリスを産み出すのも手だが……。」
ディフィートがそう言いながら森を彷徨っていると、背後からエスプレッソが話しかける。
「おやおや、行く当てがありませんかディフィートさん。」
「エスプレッソ!何でお前がここにいるんだよ?」
ディフィートは突然のエスプレッソの登場に驚く。
「いやはや、私もこの森に御用がありまして。ディフィートさん、もうお帰りになられてはどうですか?」
「ふざけんな!誰がおめおめと帰れるかよ!」
エスプレッソはディフィートに本拠地へ帰るよう煽る。ディフィートはエスプレッソに反抗してしまう。
「ですが、ここで粘っても成果を挙げられるとは思えません。ここは私に任せてはいかがでしょう?」
「ちっ、一先ずお前のお手並み拝見だ。」
ディフィートはエスプレッソに侵攻を任せ、ダークビタビターズの本拠地へ戻る。
「さてと、ここからは私の時間です。」
ディフィートを見送ったエスプレッソは、不気味な笑みを浮かべながらそう言うのだった。
「あれ、二手に分かれてる……?」
ゴミ拾いをしに森へ入った千須佳らは、そこで二手に分かれている道に出会す。
「桜江、こっちも二手に分かれるか。」
「そうですね。」
流馬は千須佳に、チームも二手に分かれて行動することを提案する。千須佳もそれに賛同する。
「はいはーい、それじゃ私はもちろん千須佳さんのところに付いて行きまーす!」
杏は意気揚々と千須佳と行動を共にすることを宣言する。
「それなら男女で分かれるか。大人が一人ずつついているし大丈夫だろう。」
そして流馬はチームを男女で分けることを決める。しかし雪大は、西瓜が少し不服そうにしているように見えた。
「どうした西瓜?お前は千須佳さんのところについて行ってもいいんだぞ。」
「いえ、大丈夫です。雪大さんについて行きます。」
西瓜は意地を張るように男性チームについて行くと言う。そして五人は二手のチームに分かれるのだった。
「千須佳さんと二人きりだー!」
千須佳と行動を共にしていた杏はうきうきした様子で千須佳の腕に抱き着きながら歩いていた。
「嬉しそうだね、杏ちゃん。」
「当然ですよ千須佳さん、千須佳さんの先輩の人も柄の悪い高校生も西瓜先輩ももういないんですから。」
「あはは、そんなに嫌なんだ……。」
千須佳は杏が男性陣を嫌っていることに苦笑いするのだった。
一方、男性陣もゴミ拾いに歩みを進めていた。
「西瓜、今頃千須佳さんとお前の後輩が一緒にゴミ拾いしているんだ。俺達も気張って行こうぜ。」
「はい、雪大さん。」
雪大と西瓜も気張ってゴミ拾いを進めようとしていた。しかし流馬は不服そうな顔を浮かべていた。
「はぁ……。」
「どうしたんすかお兄さん?」
雪大は流馬の様子が気にかかり、話しかける。
「全く、お気楽なガキ共だな。」
「は?」
流馬の突然の荒い口調に雪大は違和感を覚える。
「ちょっと、かなり言葉遣いが荒くなってないすか?さっきは普通に……。」
「会社の後輩がいたから抑えていただけだ。人間関係が悪くなったら仕事に障るからな。」
「だからって、千須佳さんと離れたら手の平返しっすか?こっちは小学生もいるんすよ。」
「知るか、お前らとは今日限りの関係だからな。」
流馬は千須佳と別行動になった途端、気を遣って抑えていた性格を露わにしていた。しかし雪大はその態度に不義理を、西瓜は恐怖を感じる。
「雪大さん、あの人恐いです……。」
「だよな西瓜、大丈夫だ。」
西瓜は怯えて雪大の背後に隠れる。雪大は西瓜を落ち着かせるように気遣う。
「桜江と早く合流したかったらさっさと進むぞ、ガキが。」
流馬はそう言うと雪大と西瓜の横を通り過ぎながら進む。しかし、雪大が流馬を呼び止める。
「ちょっと待てよ。あんた、普段は猫を被っているか知らねえけど西瓜にそんな態度見せんじゃねぇよ。」
「知るか、ガキはガキだろ。」
雪大は流馬に、態度を豹変させて西瓜を怯えさせたことを責める。しかし、流馬は荒い態度を変えようとしない。流馬、雪大、西瓜の仲は険悪になるばかりであった。
「さてと、早速参りましょうか。」
不気味な笑みを浮かべていたエスプレッソは、腕を大きく振り黒いオーラを出す。
「あれ、何でしょう?」
一方、エスプレッソの出した大きな黒いオーラを見つけた竹月は疑問に思い指を差す。
「もしかして、またダークビタビターズかも。」
桐菜はまたダークビタビターズの出現を察する。そして竹月、桐菜、風布花、アラモード、翼咲の五人が黒いオーラの元に行くと、そこでエスプレッソを見つける。
「さあ、おいでなさい!」
エスプレッソが声高々にそう言うと、黒いオーラから巨大な怪物が現れる。
「ほお、やはりできましたか。」
エスプレッソが微笑みながら言う。そんなエスプレッソに、風布花が問いかける。
「何をしているんですか!」
「おや?もしかすると指輪の戦士、またはその関係者といったところでしょうか?」
エスプレッソは風布花を見て、目の前にいる五人が指輪の戦士とその関係者ということまで察する。
「生憎ですが私は崇高なる使命を遂行するところなのです。あまり邪魔はして欲しくありません。」
「あなたにとって崇高なる使命でも、世界を侵攻するのなら戦います!」
エスプレッソは自身のしようとしていることを崇高なる使命だと言う。しかし翼咲は闘志を見せ、指輪を嵌める。
「朱雀!ガーネット!桜餅!」
翼咲はそう叫ぶと現れたブレスレットのダイヤルを回して矢印を合わせる。
「It's so sweet!」
「もちもちチェンジ!」
そしてブレスレットから音声が流れ、翼咲はそう叫びながらブレスレットのディスクを回し、ブロッサムファイヤーへとその姿を変える。
「ブロッサムファイヤー!」
ブロッサムファイヤーは名乗るとすかさず空高く舞い上がり、怪物に立ち向かうのだった。
一方その頃、二人でゴミ拾いを進める千須佳と杏だったが、杏はふいに千須佳の手を握り締める。
「千須佳さん。」
「何?杏ちゃん。」
杏は上目遣いをしながら千須佳を見つめる。
「私、ずっと千須佳さんと二人きりになりたかったんです。」
「二人きりに?」
「はい。」
杏は千須佳と二人きりになりたかったと話すと、突然千須佳に抱き着く。千須佳は杏に抱き着かれ思わず尻もちをついてしまう。
「えっと……、杏ちゃん?」
「私、本気ですから。」
戸惑う千須佳に、杏は真剣な眼差しでそう言うとそっと目を閉じ千須佳にゆっくりと顔を近づける。
「杏ちゃん……?」
千須佳が杏の行動に戸惑っていると、エスプレッソの出した巨大な怪物を見つける。
「杏ちゃん、あれ!」
「え?」
千須佳は驚き、杏に呼びかけて怪物に指差す。
「何ですか?あの大きな怪物は。」
「わからない、でもここは危険だから逃げて杏ちゃん。」
杏は怪物に戸惑うが、千須佳は杏に逃げるよう言う。
「そんな、千須佳さんも一緒に逃げましょうよ!」
「私は大丈夫、それよりも杏ちゃんは逃げて!」
杏は千須佳も一緒に逃げるよう言うが、千須佳はチーズレーザーとして戦うため、杏に逃げるよう言う。そして千須佳は杏を体の上からどかすと、怪物の元に走り出す。
「そんな、千須佳さーん!」
杏は千須佳を引き留めようとするが、千須佳は勢いよく走り杏の目の前から消えてしまう。
「行っちゃった……。仕方がない、私はチーズレーザーになるか。」
千須佳を見失った杏は、仕方がなくチーズレーザーになるため人目のつかない木陰に行き真珠の指輪を嵌めるのだった。
一方その頃、流馬、雪大、西瓜の三人は険悪な雰囲気の中ゴミ拾いを進めていた。そんな中、三人も怪物を見つける。
「おい、あれ何だよ!」
「怪物か?でもあんなにでかいの見たことねえな。」
「雪大さん、どうしましょう?」
三人は怪物に驚く。そして雪大は西瓜にこっそりと話す。
「西瓜、こいつから離れてチーズレーザーになるぞ。」
「でも、怪しまれませんか?」
「怪しまれないようにすりゃ大丈夫だ。」
二人は流馬に聞こえないように話し、チーズレーザーになることを決める。すると流馬は二人に話しかける。
「お前ら、危険な目に遭いたくないならさっさと遠くに逃げろ。」
「あぁ!?あんたに言われなくてもそうするよ!」
流馬は二人を煽るように言うと、雪大も喧嘩腰で返す。そして三人は二手に分かれて遠くの木陰に逃げ込む。
「ちっ、あいつらがいるとチーズレーザーになれねぇしな。」
流馬は不服そうにそう言うとルビーの指輪を嵌める。
「西瓜、ここで準備するぞ。」
「はい、雪大さん。」
丁度良く人目のつかない木陰に逃げ込んだ雪大と西瓜もそれぞれサファイアとエメラルドの指輪を嵌める。
「早く翼咲ちゃんと合流しなきゃ!」
千須佳はまたも翼咲が一人で戦っていると感じ、先を急ぐように走る。そして左手の中指にダイヤモンドの指輪を嵌め、ブレスレットを出現させる。
「エルフ!ダイヤモンド!チーズケーキ!」
千須佳はそう叫ぶとブレスレットのダイヤルを回して矢印を合わせる。
「It's so sweet!」
「スイートチェンジ!」
そしてブレスレットのディスクを勢いよく回し、チーズレーザーへとその姿を変える。
「今行くからね!」
そしてチーズレーザーは怪物の元へと急ぐのだった。
「うわぁぁ!」
ブロッサムファイヤーは巨大な怪物を前に苦戦を強いられてしまう。
「ふん、ここで戦士を一人潰せば手柄です。」
エスプレッソはブロッサムファイヤーに対し優勢を感じていた。そして怪物はブロッサムファイヤーを吹き飛ばしてしまう。
「うわぁぁ!」
「桐月さん!」
吹き飛ばされるブロッサムファイヤーに風布花が思わず叫ぶ。
「あなた、この怪物は何ですか?マリスにしては大きいような……。」
竹月はエスプレッソに巨大な怪物のことを尋ねる。
「如何にも、こちらはマリスではございません。私の能力でお出しした魔物です。」
「魔物?また物騒なの出してくれるじゃん。」
エスプレッソは巨大な怪物がマリスではなく魔物だと話す。桐菜は初めて耳にする魔物という単語に苛立つ。
「くっっ……、このままじゃ……!」
ブロッサムファイヤーは地面に這いつくばり、ピンチに陥ってしまう。そんな時、レーザー光線が魔物に当たる。
「誰です!?」
エスプレッソがレーザー光線の飛んできた方を振り向くと、そこにはレーザー銃を向けたチーズレーザーがいた。
「濃厚な甘美、チーズレーザー!」
チーズレーザーは名乗ると、魔物の頭上を跳びながらブロッサムファイヤーの元に行く。
「大丈夫?」
「すみません、私一人だと手に負えなくて……。」
「わかった。」
チーズレーザーはブロッサムファイヤーに声を掛け、厳しい状況を理解する。そしてブロッサムファイヤーは頭を下げる。
「あの、すみませんでした。」
「何?あ、一人で戦ったこと?」
「はい、チーズレーザーは他の人の精神も呼び出すって聞いたので……。」
「もしかして、それで一人で戦ってたの……?」
ブロッサムファイヤーは一人で戦っていた理由を吐露する。ブロッサムファイヤーは他に四人の精神を呼び出すチーズレーザーを気遣っていた。それを聞いた雪大は、千須佳に代わるよう言う。
「おい、俺に代わってくれ。一言こいつに言いたいんだよ。」
「え?うん……。」
千須佳は雪大に言われるがままブレスレットのダイヤルを回す。
「「シュワシュワチェンジ!」」
チーズレーザーはそう叫びながらブレスレットのディスクを回し、チーズレーザー・パワーアローになる。
「秘弓・氷雪の一射!」
チーズレーザー・パワーアローは魔物に向かって矢を放つ。
「えっと……、別の人格の方ですよね?」
「お前は気にしなくてもいいんだよバーカ。」
「え?」
ブロッサムファイヤーが話しかけると、チーズレーザー・パワーアローは突然罵るように話す。ブロッサムファイヤーは突然の荒い口調に驚いてしまう。
「確かに俺達はチーズレーザーが戦う度に元の体から離れて一つになる、お陰で毎日落ち着かねぇ。けどなぁ、こっちにだって正義の味方としてのプライドくらいあるんだよ。」
チーズレーザー・パワーアローは正義の味方の矜持を持っていると話す。そしてまたブレスレットのダイヤルを回す。
「「ワイバーン!エメラルド!ホイップメロンパン!」」
チーズレーザー・パワーアローと西瓜が同時に叫ぶと勢いよくディスクを回す。
「It's so sweet!」
「「キラキラチェンジ!」」
そしてチーズレーザーはトゥインクルカッターへとその姿を変える。
「僕達はまだチーズレーザーについて何もわかりませんし、正直他の人の体で戦うのはちょっと恐いです。でも!」
チーズレーザー・トゥインクルカッターは真剣な眼差しでそう言うと、大きな星型手裏剣を魔物に投げつける。
「目の前の敵と戦わなきゃいけないことくらいわかります。」
チーズレーザー・トゥインクルカッターも戦士の矜持を見せる。そして再びダイヤルを回して矢印を合わせ、ディスクを回す。
「「スイートチェンジ!」」
チーズレーザーは元の形態に戻り、千須佳の人格に戻る。
「そういうわけだから、もっと私を、チーズレーザーを頼って。」
「……はい!」
チーズレーザーはブロッサムファイヤーに、もっと自分を頼るよう言う。ブロッサムファイヤーは目を輝かせ、頷く。そして二人は魔物を睨みつける。
「決めるよ、ブロッサムファイヤー。」
「はい!」
二人はもう一度ブレスレットのディスクを回し、力を溜める。そしてブロッサムファイヤーは勢いよく飛び上がる。
「レーザーストライク!」
「はぁぁ!」
チーズレーザーは魔物に向かってレーザー光線を放ち、ブロッサムファイヤーは火の鳥と化し魔物に突っ込む。魔物は二人の戦士の攻撃には一溜りもなく、消滅してしまう。
「ほぉ、あれがこの世界の戦士ですか。ここは一旦退散しましょう。」
魔物を消滅されたエスプレッソは、それでも余裕気な態度を崩さず人間界を去ってしまうのだった。
「ふぅ……。」
チーズレーザーとブロッサムファイヤーはエスプレッソが消えたのを確認すると、指輪を外して元の姿に戻る。
「お疲れ様、翼咲ちゃん。」
千須佳は戦いを終えた翼咲を労う。すると翼咲は、言葉を詰まらせながらも話し出す。
「あの、千須佳さん!」
「ん?」
「一人で戦ってすみませんでした。私、引っ込み思案であまり人と接するのが苦手で……。でも、千須佳さんと一緒に世界を守りたいです。これから一緒に戦って下さい!」
「うん、これからよろしくね翼咲ちゃん。」
翼咲は勇気を振り絞って自身の引っ込み思案な性格を明かし、千須佳の仲間になる決心を見せる。千須佳もそれに答え、二人は固い握手をする。
「桐月さん、これで漸く仲間ですね。」
二人の元に竹月、桐菜、風布花、アラモードも駆け寄り風布花が翼咲に話しかける。
「赤園さん、今までごめんなさい。私が意固地になってた。」
「気にしてません。仲間になってくれたんですから。」
「うん、ありがとう。」
翼咲は風布花に今までの態度を謝るが、風布花は仲間になってくれたことで気に留めていなかった。
「改めて、私からもお願いします翼咲さん。」
「え?」
風布花は翼咲を今までの苗字呼びから名前呼びに変える。突然呼び名が変わった翼咲は一瞬驚くが、すぐに受け入れていた。
「……宜しくね、風布花ちゃん。」
翼咲も風布花を名前で呼び、二人の仲は深まっていた。
「じゃあ私、チームのところに戻るね。」
「はい千須佳さん、お気をつけて。」
「頑張ってねー。」
千須佳は他のゴミ拾いメンバーを置いてきていることを思い出し、皆に別れを告げる。竹月とアラモードも千須佳を見送るのだった。
一方、千須佳が元の姿に戻った時杏も精神が元の体に戻っていた。
「早く戻らないと千須佳さんが心配しちゃうよー。」
杏は急いで元いた場所に戻る。しかし森の中で迷ってしまい、いつのまにか流馬、雪大、西瓜の三人がいるところに来ていた。三人も精神が戻ってから急いで元の場所に戻っていた。
「あれ、皆さん何をしているんですか?」
「いや、お前が何でここに来てんだよって話だろ。」
杏は三人に問いかけるが、雪大は逆に杏が元の場所ではなく自分達のところに来たことを尋ねる。
「千須佳さんがどこか行ってしまわれたので探してたんです。」
「桜江が?」
杏は千須佳を探していると誤魔化す。流馬は千須佳を心配するが、そこに千須佳が現れる。
「みんな、ここに集まってたんだ。」
「桜江。」
「「「千須佳さん!」」」
千須佳は皆を見つけると駆け寄る。
「杏ちゃんそこにいたんだ。探しちゃったよ。」
「ほら、やっぱりお前が迷子になってたんじゃないか。」
「いいじゃないですか、合流はできたんですから。」
千須佳は元の場所に杏がいなかったため、探していた。雪大はやはりと杏を責めるが、杏は触れられたくないように強がっていた。
「桜江、そろそろゴミ拾いを終えて集合場所に戻る時間だぞ。」
「もうそんな時間ですか?わかりました、みんなで戻りましょう。」
流馬はゴミ拾いの終了の時間を知らせ、千須佳は慌てて皆で戻るよう言う。
「よし、じゃあみんなで手を繋いで行こうか。」
「はい、そうしましょう!」
千須佳は手を繋いで戻ることを提案する。杏も賛同し、千須佳の手を握る。
「よし西瓜、俺達も。」
「あ、はい!」
雪大と西瓜も賛同し、西瓜は千須佳の手を握り雪大も西瓜の手を握る。そして雪大はふと流馬に顔を近づけ囁く。
「俺、あんたを許さねぇからな。」
「勝手にしろ、もう会うこともないんだ。」
雪大は西瓜の前で荒々しい態度を見せた流馬を許せなかった。しかし流馬はもう会うこともないと気に留めていなかった。流馬は雪大と西瓜と、険悪な仲になっていた。結局流馬だけ手を繋ぐことはなかった。
「「「「まんてんの〜ほし〜ぞら〜も何千カラットの輝く宝石も〜!」」」」
千須佳、雪大、西瓜、杏の四人は陽気に歌を歌いながら歩く。流馬もそれを見守りながら後ろを歩いていた。
こうして、互いにチーズレーザーとして戦っていることを知らない五人が初めて顔を合わせ、そして桐月翼咲が仲間になる決心を固めた物語は幕を閉じるのであった。




