第六話 全員集合?ゴミ拾い大会
どこにでもいるはずの女性、桜江千須佳は何気ない日常を送っていた。戦いの中で現れたブロッサムファイヤーという正体が桐月翼咲であることを突き止めた千須佳は嘗ての戦士だった赤園風布花の手引きで翼咲と会うことに成功する。しかしゆっくり話そうとした時にダークビタビターズのケールスが出現、千須佳と翼咲は共に戦いケールスを倒すのだった。
「他の人の精神?」
「そういうことなんだよね……。」
翼咲は先ほどの戦いでチーズレーザー・パワーアローになった時に人格が変わったことを説明する。翼咲はチーズレーザーが他の指輪の持ち主の精神と一体化していることに驚いていた。
「それで、自分でもよくわからない状況だから他に戦士がいることが凄く心強いんだよね。」
「そういうことだったんですか……。」
翼咲は千須佳の置かれている状況に同情する。そしてそこに仲間の双見アラモード、三浦竹月、赤園風布花も集まる。
「桐月さん、わかりましたか?千須佳さんはとても厳しい状況で戦っています。それに指輪の戦士は沢山いるわけでもありません、ここは共に戦って欲しいのです。」
「赤園さん……。」
風布花も翼咲に、共に戦うことを懇願する。しかし翼咲は簡単に頷けなかった。
「あの……、私は……。」
「どうされました?」
翼咲は言葉を詰まらせてしまう。竹月が心配するが、翼咲はなかなか話そうとしない。
「あの、もう遅いのでまたの機会に。」
「え?」
翼咲は既に夕陽が差し込んでいることを理由にその場を去ってしまう。千須佳はいまいち翼咲と距離を縮められないむず痒さを感じていた。
「はぁ……、他の戦士の人もこんな感じだったらどうしよう……?」
千須佳は溜め息を吐いてしまう。そんな千須佳に竹月が話しかける。
「大丈夫ですよ千須佳さん。翼咲さんもきっと頼もしい味方になってくれます。」
「そうだといいんですけど……。」
竹月は千須佳に、翼咲もいずれ仲間になると励ます。しかしアラモードは、全体的な戦士の少なさを危惧していた。
「でも確かに、戦士の集まりは前よりも少ないかもね。」
「やっぱりそうなんですか……?」
千須佳はアラモードの言葉に少し俯いてしまう。
「戦士の集まりが芳しくないとか今のうちだけです。戦士が集まればダークビタビターズなんて一捻りのチームになります。」
「風布花ちゃん……。」
風布花は戦士が集まればダークビタビターズも倒せると主張し、千須佳は元気づけられる。そして一同は解散するのだった。
一方その頃、ダークビタビターズではケールスが倒されたことに焦りを隠せなかった。
「ケールスが倒された……?」
ゴーヤイドはケールスの訃報に膝から崩れ落ちてしまう。
「これからどうするよ?ただでさえ少ない俺達ダークビタビターズが減ったら勝ち目なくなるぞ。」
「どうしようかねぇ。」
ディフィートとロストラヴもケールスが倒されたことでこれからの組織の動き方に悩んでいた。
「幹部が増えればよいのですよ。」
「誰だ!?」
そんな時、丁寧な口調で話しかける爽やかな声が聞こえる。ディフィートが誰かと振り向くと、そこにはコーヒー豆を模したような外見の怪物、カカオ豆を模したような屈強な外見の怪物、そしてピーマンを模したような小柄な外見の怪物がいた。
「初めまして、私の名はエスプレッソと申します。」
「俺はカカオ・パーフェクトだ。」
「僕の名前はピーマン、お手柔らかに頼むよ。」
三体の怪物はそれぞれエスプレッソ、カカオ・パーフェクト、ピーマンと名乗る。ゴーヤイド、ディフィート、ロストラヴの三人はエスプレッソらに怪しさを感じていた。
「お前ら、見ない顔だな。」
「本当にダークビタビターズの幹部かい?」
ディフィートとロストラヴはエスプレッソらに質問する。しかしエスプレッソは自信満々な様子で答える。
「せっかく仲間になれたというのに疑うなんて悲しいじゃないですか。私達はれっきとしたダークビタビターズの幹部ですよ。」
エスプレッソ、カカオ、ピーマンの三人は意味深長な笑みを浮かべる。ディフィートもロストラヴも、三人を信用できなかった。
それから数日後、千須佳は会社にて先輩社員の苦木流馬に話しかけられる。
「桜江、部長から呼び出しだぞ。」
「え?私、何かしましたっけ?」
「さあな、俺も一緒だから別にお前だけのミスとかじゃないはずだが。」
「それならいいんですけど……。」
千須佳はまた仕事でミスをしたのではないかと心配するが、流馬は特にミスしたことの説教ではないと考える。そして千須佳と流馬が部長の元に行くと、告げられたのは全く別のことだった。
「苦木に桜江、すまんが今度の日曜日に地域のゴミ拾い大会に参加してくれないか?」
「ゴミ拾い大会ですか?」
「自分は予定がないので大丈夫です。桜江は?」
「あ、はい。私も大丈夫です。」
部長は二人に、地域のゴミ拾い大会への参加を頼む。二人は一瞬戸惑いながらも参加を承諾するのだった。
一方その頃、氷山雪大は同じ風紀委員である桐月翼咲と赤園風布花と共に風紀委員会の顧問に呼び出されていた。
「え〜、日曜日に風紀委員会の活動っすか?」
「そのくらい我慢しろ氷山、ただの地域のゴミ拾い大会に参加するだけだ。」
顧問の先生が三人に告げたのは地域のゴミ拾い大会への参加だった。雪大はゴミ拾い大会を面倒に感じる。
「氷山君、あなたもあまり委員会活動を選り好みできる立場じゃないはずですよ。」
「何だよ赤園、お前まで。」
風布花も雪大に冷たい視線で辛辣な言葉を投げかける。雪大は風布花にも苛立ってしまう。
「まあいい、三人ともやってくれるか?」
「「はい。」」
「……はい。」
翼咲と風布花は迷いなく参加を承諾し、雪大は二人よりワンテンポ遅れて返事するのだった。
一方その頃、小学校でも水無西瓜と仁科杏が教師の栗崎剛志に呼び出されていた。
「地域のゴミ拾い大会ですか?」
「ああ、何故か全校生徒の中からお前達二人が選ばれてな。今度の日曜日で申し訳ないんだが行ってもらえるか?」
栗崎が二人に告げたのは地域のゴミ拾い大会への参加だった。二人は少し戸惑うが、承諾する。
「はい、参加します。」
「ま、レディにとって休日は大事なものですけど栗崎先生の頼みならいいですよ。」
杏は少し高飛車な物言いで答える。こうして千須佳、流馬、雪大、西瓜、杏の五人は地域のゴミ拾い大会に参加することとなった。
その夜、千須佳は風布花と電話で地域のゴミ拾い大会に参加することを話していた。
「風布花ちゃんと翼咲ちゃんもゴミ拾い大会に参加するんだ。」
「はい、まさか千須佳さんも参加するとは思いませんでした。」
二人は偶然にも同じゴミ拾い大会に参加することに驚く。そして風布花は千須佳にある提案をする。
「それなら千須佳さん、一緒にしませんか?きっと桐月さんと距離を縮めるいい機会だと思うんです。」
「そっか、それもそうだね。でも会社の先輩も一緒だからどうだろう……。」
「会社の人も一緒なんですか?それは難しそうですね……。」
風布花が提案したのは翼咲と一緒にゴミ拾い活動をして距離を縮めるというものだった。しかし千須佳は先輩である流馬も一緒に参加するため難しく感じるのだった。
そしてゴミ拾い大会当日、千須佳を始めとする面々は誰一人怠けることなく集合場所に集まっていた。
「おはよう仁科さん、今日はよろしくお願いします。」
「足引っ張らないで下さいね、西瓜先輩。」
西瓜は杏と合流し、挨拶をするが杏はまたも上からの目線で答える。
(はぁ……、明らかに苦手かもなこの人……。)
西瓜は心の中で杏に苦手意識を持ってしまうのだった。
「皆さ〜ん、本日のゴミ拾い大会は五人一組で行ってもらいます!各自チームを組んで下さ〜い!」
ゴミ拾い大会に集まった人達に対し、町内会長はチームを組むよう呼びかける。
「五人一組か、これは面倒だな。」
「他の人に声を掛けないといけないですしね……。」
流馬と千須佳は、五人一組で行動することを面倒に感じる。
「千須佳さ〜ん!」
「あ、風布花ちゃん。」
そんな時、千須佳に声を掛けたのは風布花だった。風布花の近くには既に翼咲の他、アラモード、竹月もいた。
「もうみんな集まってたんだ。」
「はい、こちらはあと一人なので千須佳さんが加われば始められます。」
「そっか、それなら……。」
千須佳は既に皆が四人集まっているのを聞き、自分も加わろうとするが流馬も一緒にいることに気づく。
「あ……。」
「やはり会社の方もご同行されていますか?」
「ごめんなさい、私はそっちに入れないので皆さんで……。」
千須佳は渋々断ってしまう。しかし事前に風布花に伝えていたので皆はあまり動揺することもなかった。
「仕方ありません。ここは私達で参りますのでまた後ほど。」
「申し訳ないです……。」
竹月はそう言って千須佳が一緒に行動できないのを受け入れ、竹月ら四人は一旦離れるのだった。
「桜江、今のは知り合いか?」
「あ、はいまあ……。」
「そうか。」
流馬は千須佳に先ほどの竹月らについて尋ねる。しかし千須佳は戦士に関する知り合いだとは流馬に知られたくないため、お茶を濁すように答える。
(危ない危ない、戦士のこととか話すわけに行かないもんね。)
(危うく年下の女どもの中に入るところだったぜ。)
千須佳が流馬に戦士のことを無事隠したことに安心していた時、流馬も竹月らのチームに入らずに済んだことに安心していたのだった。
「さて、千須佳さんがこっちのチームに入れないとなると一人足りなくなりますね……。」
風布花は千須佳がチームに入れなくなりメンバー不足に困っていた。
「いえ、ご心配には及びません。こんなこともあろうかと既に代打をご用意しておきました。」
「代打ですか?」
「はい、もうそろそろいらっしゃる頃かと……。」
しかし、竹月は代わりとなるメンバーを既に呼んでいると話す。すると風布花の後ろの方からとある女性の声が聞こえる。
「お〜い、つっきー!」
「お待ちしておりました。」
竹月をつっきーと仇名で呼びながら走って来たのは竹月と同じ黒髪のストレートロングで竹月と風布花の間ほどの年齢に思える風貌だった。その女性は走って来るなり風布花に抱きつく。
「久しぶり〜ふぅちゃ〜ん!」
「桐菜さん!?」
風布花は突然の女性の抱擁に驚くが、どうやら知り合いのようだった。
「赤園さん、こちらの方は……?」
「ん?」
翼咲は風布花に、女性のことを尋ねる。すると女性は、翼咲に興味津々な様子で見つめる。
「もしかして、噂に聞くガーネットの戦士のつばさっち?」
「えっと……、どうして私のことを?」
女性は何故か翼咲のことも知っていた。そして女性は翼咲の手を握り締める。
「私、三年前のガーネットの戦士の新原桐菜、よろしく〜!」
女性は自己紹介しながら握り締めた翼咲の手を大きく振る。その女性の名は新原桐菜、嘗て翼咲と同じくガーネットの指輪に選ばれて戦っていた戦士だった。
「よ……、よろしくお願いします……。」
翼咲は少し戸惑いながらも挨拶を返す。
「ありがとうございます桐菜さん、これで五人揃いましたね。」
「こっちこそ誘ってくれてありがとうつっきー。」
竹月が桐菜に感謝し、こうしてアラモード、竹月、桐菜、風布花、翼咲の五人でゴミ拾い大会に臨もうとした時、雪大が不機嫌に地面を踏みしめるように歩き近づく。
「おい赤園!人がちょっと離れている間に何チーム組んでんだよ!」
雪大はどうやら風布花と翼咲と少し別行動している間に撒かれていたようだった。そのことに憤慨する。
「風布花ちゃん、もしかしてご学友の方ですか?」
「関係のない人です。」
「あんだろ!今日は風紀委員会の仕事で来てんだからよ!」
竹月は風布花に雪大のことを尋ねるが、風布花は他人だと誤魔化す。
「とにかく氷山君、見ての通りもうこちらはチームを組んでいるので他の人とチームを組んで下さい!」
風布花はそう言って雪大を突き放す。
「何だよ除け者にしやがって!お前のこと一生恨んでやるからな!」
雪大はそんな捨て台詞と共に風布花らの元から離れるのだった。
「赤園さん、氷山君を入れなくて良かったの?」
「良いんです、氷山君がいると指輪のこととか色々話せませんし。」
翼咲は突き放された雪大を心配するが、風布花は良いと主張する。
「若いねぇ。」
「そうですね。」
そんな高校生組のやり取りを見て、桐菜と竹月は若さを感じていた。
「あ、食べ終わっちゃった。」
そしてアラモードはいつしかパフェを食べ終わるのだった。
「あれ、もうみんなチームを組んでる……。」
一方その頃、西瓜は他の皆が次々とチームを組んでしまいなかなかチームを組めずにいた。
「全く、どうするんですか?小学生二人だけでゴミ拾いなんて大変ですよ。」
杏はなかなかチームを組めない西瓜を責める。そんな時、先ほどチームを追放された雪大が通りかかる。
「お、西瓜も来てたのか。」
「雪大さん。」
雪大と西瓜は互いに遭遇して安心していた。
「雪大さん、僕らまだチームを組めていないんです。」
「ああ、俺も委員会で来ていたのに追い出されたところなんだよ。」
雪大と西瓜は互いに事情を明かし、組むことを決める。
「西瓜先輩、何ですかこの柄の悪い高校生は?委員会から追い出されたとか碌でもない人ですよ。」
「はぁ!?」
杏は雪大の風貌と追い出されたという事情に、雪大を信用できなかった。雪大はそんな杏の態度が気に入らなかった。
「西瓜、誰だこいつ?」
「あの、下級生の仁科杏さんです。今日は一緒に参加するよう先生に言われて。」
「そうか、お前も大変だな。」
「はい……。」
雪大は西瓜に杏のことを尋ね、西瓜が話した事情を聞いて労う。
「西瓜先輩、一人増えたところであと二人必要ですよ。どうするんですか?」
「どうしましょう雪大さん……。」
「そうだな……。」
雪大は西瓜、杏と組むことを決めるが、それでもチームにはあと二人必要だと杏は責める。
「全く、頼りないですね……。おや?」
杏が雪大と西瓜に頼りなさを感じていた時、ふと千須佳を見つける。
「苦木先輩、なかなか組んでくれる人が見つかりませんね。」
「ああ、もうみんなチームを組んでいるな。」
千須佳は流馬と共に、なかなかチームを組めず迷っていた。
「お〜い、千須佳さ〜ん!」
「あ、杏ちゃん。」
杏はそれまでの高飛車な態度とは一転、あどけない様子で千須佳に声を掛ける。千須佳も杏に気づき、流馬と共に杏らの方へ向かう。
「千須佳さん、まさかこんなところで会えるなんて。これもまた運命ですね。」
「そうだね。」
杏は再び千須佳に会えたことを喜ぶ。
「仁科さん、知り合い?」
「はい、この私を助けてくれたとても優しい人ですよ。」
「桜江、この子は知り合いか?」
「はい、前に道端で会って。」
西瓜と流馬はそれぞれ杏と千須佳に尋ねる。そして二人が互いに知り合いと明かすと、雪大は千須佳と流馬に提案する。
「俺達まだチームを組めていないんすよ。良かったらどうすか?」
「あ、うん、良いよ。良いですよね?苦木先輩。」
「ああ、もう組める人もいないしな。」
「決まりだな、西瓜。」
「はい。」
「私に感謝して下さいよ、西瓜先輩。」
雪大は千須佳と流馬をチームに誘い、千須佳と流馬も同意し五人はチームを組む。
「改めまして、桜江千須佳です。」
「苦木流馬だ。」
「氷山雪大っす。」
「えっと、水無西瓜です……。」
「仁科杏です。以後、お見知り置きを。」
こうして五人はチームを組む。奇しくもそのチームはチーズレーザーとして共に戦う仲間だったが、皆はそのことに気づくはずもなかった。
そして皆はゴミ拾い大会に行く。桐菜は翼咲に、指輪の戦士のことを話す。
「それでは竹月さんが七年前のガーネットの戦士で、桐菜さんが三年前のガーネットの戦士……。」
「そっ、指輪の戦士は新しい悪の組織が現れる度に誰かが選ばれるんだよ。今回はつばさっちがガーネットの戦士に選ばれたってわけ。」
「なるほど……。」
桐菜は翼咲に指輪の戦士が悪の組織の出現の度に選ばれることを明かす。
「赤園さんは七年前のダークストーリーズと三年前のダークサイレンスと二回も戦士に選ばれていたんだよね?」
「はい、私はなんとか三年前も戦うことができました。まあ、今思えば特権という気もしますが……。」
「七年前って、小学生だよね?そんな幼くても戦士になることができるんだ……。」
「そうですね。」
翼咲は風布花が小学生の頃から戦士として戦っていたことを改めて風布花に確認する。翼咲は小学生でも戦士になることに驚いていた。
「小学生なら、例えばこの前千須佳さんに抱きついていたあの小学生の子も戦士になる可能性があるってこと?」
「可能性だけならあります。あんな子が戦士になるはずがありませんが。」
風布花は杏が戦士になる可能性もあると話すが、風布花は杏が気に入らず、戦士になることはないと主張するのだった。
一方、千須佳ら五人もゴミ拾いに向かっていた。
「「まんてんの〜ほし〜ぞら〜も〜!」」
千須佳と杏は手を繋ぎ、陽気に歌を歌いながら歩いていた。
「桜江、ゴミ拾い中だぞ。」
流馬はそんな千須佳に注意する。一方で西瓜は先ほどよりも口数が少なくなり、黙々とゴミを拾っていた。
「す〜いか!」
「うわっ!」
雪大はそんな西瓜に対し、不意に背中を軽く押す。
「お前、さっきよりも緊張してないか?」
「いえ、そんなことはないです……。」
雪大は西瓜が年の離れた千須佳や流馬と一緒にいるため、緊張していると察していた。
「西瓜君もこっちおいで。」
「え……?」
千須佳はそんな西瓜を打ち解けさせようと手を差し出す。
「えっと……。」
「ほら西瓜、手を繋いでもらえよ。」
西瓜は思わず赤面し躊躇してしまうが、雪大が背中を押す。
「えっと、失礼します……。」
西瓜は畏まった様子でそう言うと千須佳の手を握る。
「西瓜君、照れてる?」
「そ……、そんなことないです……。」
千須佳は西瓜が俯いているのを見て話しかける。西瓜は赤面しながら答える。
「西瓜先輩、キモいです。」
杏は西瓜に辛辣な言葉を浴びせる。
「杏ちゃん、そんなことないでしょ。可愛いじゃん。」
千須佳は西瓜を罵倒する杏を優しく叱責する。
「それにしても桜江、両手が塞がったらゴミが拾えないだろ。」
「ご心配なさらずに。私が千須佳さんの分までゴミを拾うので。」
流馬は杏と西瓜と手を繋いでしまい両手が塞がった千須佳を再び注意するが、杏が千須佳の分までゴミを拾うと宣言する。
「お兄さん、ここは好きにさせましょうよ。俺達もゴミを拾えばいいんすから。」
「そうか……。」
雪大は流馬を宥めるように言う。そして五人はバラバラなペースでゴミ拾いを進めるのだった。
一方その頃、翼咲は桐菜や竹月から指輪をもらった時のことを尋ねられていた。
「そういえばつばさっち、ふぅちゃんから聞いたんだけど指輪って女の人から貰ったんだって?」
「はい、そうなんです。」
「しかし、その方の名前などはわからないんですよね?」
「はい、申し訳ないですが……。」
翼咲は指輪をとある女性から貰ったということだけ話していたが、名前を聞きそびれていたため詳細がわからなかった。
「因みにさ、何か言われたこととかない?無言で渡されたとかないと思うし。」
桐菜は翼咲に指輪を渡した女性から言われたことを尋ねる。すると翼咲はなんとか思い起こして答える。
「そうですね……、『この世界はまだまだ悪意に満ちている。でも絶望なんかしないわ。あなたが悪の組織と戦い、この世界の悪意を正してくれることを期待しているわね。』って言われました。」
「「あぁ〜!」」
翼咲はその女性に言われたことを話す。それを聞いた途端、風布花と桐菜はある納得をしてしまう。
「わかった〜!」
「その無駄にミステリアスに話す感じはあの人ですね。」
桐菜と風布花は翼咲にガーネットの指輪を渡した女性が誰かわかったようだった。
「桐月さんがその方から指輪を渡されたということは、本当にガーネットから戦士に選ばれた方ですね。」
「そ、そうなんですか……?」
竹月も翼咲の話から、翼咲が偶然ではなく本当にガーネットの宝石から選ばれたことを察する。しかしその話も翼咲にはよくわからなかった。
一方その頃、千須佳は雪大にとあることを尋ねていた。
「そういえばさ、雪大君ってコンビニの前で屯してる子?」
「あ、見られちゃってました?」
千須佳は雪大が以前にコンビニで屯しているところを見たことがあったのでそれを尋ねていた。雪大は笑いながら答える。
「もう、行儀悪いよ。」
「へへ、あそこでサボるのが楽しいんすよ。」
「サボってるの!?」
千須佳は雪大を叱責するが、雪大が学校を怠けて屯していることを聞いて更に驚いてしまう。
「自分のクラスの居心地が悪いんすよ。」
「そうなんだ……。」
千須佳は雪大の表面的な明るさからは想像のつかない言葉に驚き、言葉が出なかった。そして雪大はふいに雪大の肩に手を置く。
「西瓜だってあのコンビニの前にいるもんな。」
「まあ、はい……。」
雪大は西瓜も一緒にコンビニで屯していると明かす。西瓜は後ろめたそうな様子で答える。
「西瓜君もしてるの?」
「えっと……。」
千須佳は西瓜も屯していることに驚き西瓜に尋ねる。しかし千須佳の問いに西瓜は言葉を詰まらせてしまう。
「西瓜君、雪大君みたいな人について行ったらダメだよ。」
「ちょっと千須佳さん、酷いじゃないすか〜!」
雪大は千須佳が西瓜に注意すると同時に、遠回しに自分を非難していることに対し冗談交じりに突っかかってしまう。しかし西瓜は真剣な面持ちで答える。
「あの……、雪大さんはダメじゃないです。」
「西瓜君?」
千須佳は西瓜の真剣な言葉に戸惑う。
「西瓜と俺は心で繋がってるっすからね。」
「そうなんだ……。」
雪大は千須佳に西瓜との友情を自慢する。千須佳は少し二人の関係性が少しわからなかった。
「類は友を呼ぶというものですよ千須佳さん、人は落ちぶれるとコンビニで屯するようになるんです。」
杏は千須佳に、雪大と西瓜が落ちぶれた者同士で仲良くなっているだけだと揶揄する。
「本当お前可愛くないよな。それでも西瓜の後輩かよ。」
「ただ同じ学校の下級生というだけです。西瓜先輩のお世話になった覚えはありません。」
雪大はまたも杏の態度が気に入らず西瓜の後輩と思えなかったが、杏は西瓜をただの同じ学校の人だと突き放すような回答をする。
「ほら二人とも、喧嘩しないの!」
千須佳は言い合いをする雪大と杏に一喝する。
(はぁ……、さっさと終わってくれよ。いつまでガキの話聞かなきゃいけないんだ。)
流馬は千須佳らの話を聞き、内心苛立ってしまうのだった。
一方その頃、人間界に降り立ったディフィートは森の中を彷徨い歩いていた。
「エスプレッソ、カカオ・パーフェクト、ピーマン、あいつら何なんだ?」
ディフィートは新しく顔を見せた三人に怪しさを拭えなかった。
「まあいい、人間界の侵攻をしてくれれば文句はねぇ。俺はとにかくマリスを産み出して侵攻するだけだ。」
ディフィートは細かいことを気にしないような素振りで悪意を持った人間を探す。
「お?」
するとディフィートはとある男性二人組を見つける。その男性二人組は大きな家電製品などをリアカーで運び森に捨てていた。
「よし、もっと捨てろ。」
「へい!」
二人組の男性はどうやら森で不法投棄をしているようだった。ディフィートはその二人の男性に目を付け、歩み寄る。
「お前ら、随分と悪いことしているみたいじゃないか。」
「ああ?……って、怪物!?」
男性はディフィートの怪物の姿に驚いてしまう。しかしディフィートはお構い無しで男性二人の頭に手を翳す。そして男性二人から黒いオーラが出てそこから二体のマリスが現れる。
「あれは、ダークビタビターズ!?」
そこに通りかかった翼咲、アラモード、竹月、風布花、桐菜の五人。桐菜はディフィートと二体のマリスを見つける。
「いけません、マリスを倒さないと!」
「なるべく他のゴミ拾い参加者の皆さんに見つかる前に片付けたいですね。」
竹月はマリスを倒そうと焦る。風布花は他のゴミ拾い参加者が森に入るため、その前にマリスを倒したいと意気込む。
「皆さん、下がっていて下さい。ここは私が!」
翼咲は四人にそう言い、ガーネットの指輪を左手の中指に嵌める。そしてブレスレットを出現させる。
「朱雀!ガーネット!桜餅!」
翼咲はそう叫びながらブレスレットのダイヤルを回す。そしてブレスレットを胸の前に持って行き構える。
「It's so sweet!」
「もちもちチェンジ!」
ブレスレットから音声が流れ、翼咲はそう叫びながらブレスレットのディスクを回し、ブロッサムファイヤーにその姿を変える。
「私は、私のできることを!」
ブロッサムファイヤーは自分に言い聞かせるようにそう言うと、ディフィートと二体のマリスに立ち向かうのだった。




