第五話 気になるあの娘は壁がある
どこにでもいるはずの女性、桜江千須佳は何気ない日常を送っていた。そんな時、悪の組織ダークビタビターズが現れ千須佳は戦士として戦うことになる。女子小学生の仁科杏は人の優しさが理解できず悩んでしまう。そんな中、杏は勇気を振り絞ってチーズレーザー・キューティーウイングとして戦う。そして止めを刺そうとした時、氷山雪大のクラスメイトである桐月翼咲が戦士ブロッサムファイヤーとなり怪物を倒すのだった。
ある日、千須佳はまたいつものようにスイーツショップで仲間である双見アラモード、三浦竹月と話し合っていた。
「やっと残り一人の指輪の力を引き出したのはいいんですけど、あの戦士も仲間なんでしょうか?」
「はい、恐らくは仲間だと思います。」
「よっぽど癖のある人じゃなかったらねぇ。」
「そうですかね……。」
千須佳は杏によるチーズレーザーの新たな姿チーズレーザー・キューティーウイングを引き出したのは良かったが、新たにブロッサムファイヤーという戦士が現れたことが気になっていた。竹月とアラモードは仲間になると言うが、千須佳はどこか心配だった。
「あのブロッサムファイヤーのしていた指輪、ガーネットでしたっけ?」
「はい、私が以前の戦いで戦士になる時に使用していた指輪です。」
千須佳はブロッサムファイヤーが嵌めていたガーネットの指輪も気になっていた。ガーネットの指輪は竹月が戦士だった頃に使っていた指輪だった。
「アラモードさんはまた指輪に選ばれていても、前のダイヤモンドの戦士や竹月さんは指輪に選ばれなかったということですか?」
「そうですね、指輪の宝石は悪の組織が現れる度に戦士となる方を選ぶようですが、必ずしも同じ方を選ぶとは限りません。」
竹月は、指輪の宝石が同じ人を選ぶとは限らないことを千須佳に説明する。今回もガーネットは竹月ではなく、翼咲を選んだということだった。
「とにかく千須佳さん、今はあのブロッサムファイヤーさんとコンタクトを取るしかありません。」
「そうですね、仲間になるかどうかもまずは会ってみないとですよね。」
竹月は千須佳に、ブロッサムファイヤーの翼咲に会わないといけないと気持ちを切り替えるように言う。千須佳もそれに賛同するが、千須佳は先行きを不安に感じていた。
「でも、手がかりなんてないですよね……。学生服を着ていたから恐らくは高校生くらいだと思うんですけど……。」
「そうですね……。」
千須佳は翼咲を探し当てる手がかりがないことに不安を感じていた。翼咲という名前もわからなかったため、千須佳と竹月は頭を悩ませてしまう。
「はぁ……、手がかりはこれだけですね。」
竹月はそう言うと携帯電話に翼咲の写真を表示する。
「あ、あの子のこと撮っていたんですか?」
「はい、あまり良くないことではあるのですがあのままでは何も手がかりがないので。」
竹月は何か手がかりになるかと思い、翼咲のことを撮っていた。そして竹月は写真に既視感を覚えていた。
「この方、何かを思い出しそうなのですが……。」
「何ですか?」
「う~ん……。」
竹月は何かを思い出し掛けようとするが、今一つ決定的なものを思い出せない。すると、ずっとパフェを食べていたアラモードがあることを言い出す。
「この制服、風布花ちゃんが通っている高校のじゃない?」
「そうです!」
「知り合いがいるんですか?」
アラモードには翼咲と同じ高校に通っている知り合いがいるようだ。竹月もアラモードの言葉を聞いて思い出したようだった。
「はい、私達の仲間で赤園風布花ちゃんという方がいまして現在通われている高校の制服がこの方と同じ物でした。」
「それ、結構な手がかりじゃないですか!」
竹月は仲間の赤園風布花という人が同じ高校に通っていると話す。千須佳はかなりの手がかりになると期待する。
「それでは今日の夕方、風布花ちゃんを呼んで協力して頂きましょう。」
「はい!」
千須佳は期待に胸を膨らませ、この日は解散するのだった。
一方、ダークビタビターズでは新たな戦士ブロッサムファイヤーが現れたことで焦りを覚えていた。
「何なんだいあの戦士は!チーズレーザーだけでも新しい姿になって厄介だっていうのに。」
ロストラヴはブロッサムファイヤーの出現によって怒り心頭だった。
「ああ、このまま戦士が増えられたらたまったもんじゃないな。」
ディフィートもブロッサムファイヤーが現れたことに危機感を覚えていた。
「早い内に一人くらい潰しておかねぇと、大変なことになるぜ。」
ゴーヤイドは今の内に戦士を一人でも倒すことを提案する。
「それなら俺が行く。この俺が刺し違えてでも戦士を葬ってやる。」
ケールスは自分が行くと言い、躍起になって人間界へ赴くのだった。
そして夕方、千須佳はスイーツショップにてアラモード、竹月と共に風布花を待っていた。
「お〜いアラモードさん、竹月さ〜ん。」
「お、風布花ちゃん。」
「お待ちしておりました。」
風布花はアラモードと竹月に手を振り、駆け寄る。そして席に着くと、千須佳を見つめる。
「桜江千須佳さんですね。初めまして、赤園風布花です。」
「初めまして。」
風布花は千須佳に自己紹介をする。千須佳も同じように会釈をする。
「風布花ちゃんは七年前に私達と共にダークストーリーズを、三年前に他の方々と共にダークサイレンスを倒した歴戦の猛者です。」
「竹月さん、あまり持ち上げないで下さい。」
竹月は風布花を歴戦の猛者と紹介する。風布花は少し恥ずかしそうにしていた。
「ということは、風布花ちゃんは二回戦士に選ばれたということですか?」
「はい、まあ……。」
「凄い……。」
千須佳は風布花が凄いと感じていた。自分がもし二回戦士に選ばれても戦える自信がなかったからだ。
「ま、私は三回戦士に選ばれているけどね。」
「その内一回は戦士になってくれませんでしたけどね。」
アラモードはパフェを食べながら自慢げに三回戦士に選ばれたことを話すが、風布花が一回戦士にならなかったことを不服そうに明かす。
「しかも七年前とかまだ小学生ですよね?」
「そうですね、以前の戦いでは二回ともメンバー最年少くらいで……。」
「そんな幼い時に戦っていたなんて……。」
更に千須佳は風布花が幼い時に戦っていたことに驚く。成人である千須佳でさえ今の戦いに精一杯な状況にも関わらず、風布花はそれを小学生の時にも経験していたことに千須佳は驚きを隠せなかった。
「さて、そろそろ本題に……。」
「そうでしたね。」
風布花は竹月に、本題に入るよう促す。竹月は思い出したように携帯電話に映る翼咲の写真を見せる。
「風布花ちゃん、この方なんですけど……。」
「はい……。」
そう言いながら風布花は翼咲の写真を見る。すると知り合いである風布花は驚いてしまう。
「桐月さん⁉」
「お知り合いですか?」
「はい、この方は桐月翼咲さんです。クラスは違うんですけど風紀委員で一緒の方です。」
「結構近い人じゃないですか!」
「これは簡単そうだね。」
風布花は写真の人物が風紀委員で一緒の桐月翼咲だと明かす。千須佳は想定よりも近しい知り合いということに驚いていた。
「今度、桐月さんに戦士になったことについて聞いてみます。」
「はい、お願いします。」
風布花は翼咲に戦士のことを尋ねると言い、この日は解散するのだった。
明くる日、氷山雪大は職員室に呼ばれ担任教師から叱責を受けていた。
「いい加減まともに授業を受けてくれよ氷山〜。」
「ああ、すんません。」
担任教師の言い分から、どうやら雪大はまた授業を怠けていたようだ。
「氷山、ご両親がいなくてお姉さんと二人だけなのはわかるがだからこそちゃんと授業を受けてお姉さんを安心させないとな。」
「……そうっすね。」
雪大は無気力に相槌を打つ。そして雪大は職員室を出るのだった。
(あぁ〜、今日はそれどころじゃないんだよ〜!)
雪大は叱責を受けたことよりも翼咲が戦士になったことで頭がいっぱいだった。
(今日は桐月に問い詰めてやる。この際俺がチーズレーザーの一人ってことも言ってやる。)
雪大は教室に戻り、翼咲に戦士のことを問い詰めようと躍起になっていた。
「氷山君、何かあった?」
「いや、別に何も。」
雪大は躍起になるあまり翼咲を見つめてしまっていた。気になった翼咲は雪大に問いかけるが雪大は何もないとはぐらかす。
(今桐月に話すわけに行かねぇ。二人だけになるタイミングを見計らうんだ。)
雪大は翼咲と二人だけになる風紀委員の活動の直前を狙うのだった。
放課後、雪大は翼咲と風紀委員の活動に向かう。
(よし、今こそ桐月に戦士のことを聞くんだ。)
雪大は思い切って翼咲に戦士のことを聞こうとする。
「桐月。」
「何?」
「なぁ、この間俺が気を失っていた時のことだけどよぉ……。」
雪大が翼咲にいざ聞こうとした瞬間、風紀委員会の教室の扉がガラッと開く。
「桐月さん、大事なお話があります!」
「赤園さん、何かあった?」
扉を開いたのは風布花だった。風布花は鬼気迫る目つきで翼咲に話しかける。
「ちょっとこちらへ!」
そして風布花は翼咲の手を引き教室へ入れる。
「何だよ赤園、そんな慌てて。」
雪大は風布花の忙しなさを不思議に感じながら教室に入ろうとする。しかし風布花は雪大を入れようとしなかった。
「氷山君は入らないで下さい!」
「はぁ⁉これから委員会だろ!」
「ちょっとだけですから!これから桐月さんと男子禁制のガールズトークをするんです!」
風布花は雪大に聞かれたくない話があるようで、雪大を閉め出してしまう。
「おい赤園、入れろよ!」
「ちょっとそこで大人しくしていて下さい!」
雪大は扉を叩き教室に入れるよう風布花に声を荒げるが、風布花は雪大に待っているよう返す。
「何だよ赤園の奴、そっちがその気ならサボってやる!」
雪大はそう言い残し、学校を出てしまうのだった。
雪大が腹を立てて去ってしまったことを知らず、風布花は翼咲と二人だけになる。
「あの赤園さん、わざわざ氷山君を閉め出してまで聞きたいことって?」
翼咲は風布花の不審な行動に首を傾げるが、風布花は突然翼咲の手を引き壁に押し付け顔の横の壁に思い切り手をつく。
「単刀直入に聞きます!桐月さん、ブロッサムファイヤーですよね?」
「え、何でそれを⁉」
風布花が切り出したのは翼咲がブロッサムファイヤーという話だった。翼咲は風布花に、自身がブロッサムファイヤーということを知られていたことに驚く。
「すみません、私の仲間が桐月さんの戦いの場に居合わせていたもので。実は私も以前、指輪の戦士として戦っていたことがあるんです。」
「赤園さんも⁉」
風布花は自分の仲間が翼咲を目撃したこと、そして風布花も以前翼咲と同じように戦士として戦っていた過去があることを明かす。
「それで桐月さん、その指輪はどこで?」
「えっと……。」
風布花は詰め寄るように、翼咲に指輪の出所を尋ねる。しかし翼咲は風布花の圧を感じ言葉を詰まらせてしまう。
「貰ったんだ、女の人から。」
「女の人?」
翼咲は指輪をとある女性から貰ったと答える。
「女の人って、誰ですか?」
「えっと、名前は聞かなかった、ごめん。」
「そうですか……。」
風布花はその女性について尋ねるが、翼咲は女性に名前を聞かなかったということでこれ以上答えられることがなかった。
「とりあえず、今同じく戦士として戦っている方に会って頂けませんか?」
「戦士に会うの?いいけど……。」
風布花は翼咲に、千須佳に会って欲しいと頼む。翼咲も了承し、話を終える。
「決まりですね、そろそろ委員会活動を始めましょう。」
風布花はそう言うと、扉を開いて雪大を呼ぼうとする。しかしそこに雪大の姿はなかった。
「氷山く~ん、あれ?」
風布花は辺りを見回すが、雪大の姿は見つからなかった。
「も~、サボった~!」
風布花は雪大が委員会活動を怠けたと呆れてしまうのだった。
一方その頃、雪大は小学生で同じチーズレーザーの仲間である水無西瓜と共にコンビニで屯していた。
「え、ブロッサムファイヤーって雪大さんのクラスメイトの方なんですか?」
西瓜は雪大からブロッサムファイヤーの正体が雪大のクラスメイトである翼咲であることを聞き驚く。
「ああ、まさかこんな身近に戦士がいるなんてな。」
「本当に驚きですね……。」
雪大と西瓜は身近に戦士がいることの驚きを共有していた。
「それで、そのクラスメイトさんにお話を聞いたんですか?」
「いや、聞こうと思ったんだけど隣のクラスの小うるせぇ奴に邪魔されて聞けなかった。」
「あらぁ……。」
雪大は風布花に邪魔をされて翼咲に戦士のことを聞けなかったと話す。
「やっぱ俺達、ブロッサムファイヤーよりもまずはチーズレーザーだな。」
「そうですね、チーズレーザーの正体を突き止めないことには始まりませんね。」
雪大と西瓜はチーズレーザーの正体を知ることが先だと決意を固める。
「でもあれだよな、チーズレーザーの状態でブロッサムファイヤーに話を聞くってのもありだよな。」
「はい、それはありだと思います。」
しかし、雪大と西瓜は戦士の状態で尋ねることはしてもいいと考えるのだった。
その夜、風布花は千須佳に電話をする。
「ということで千須佳さん、明日の放課後に桐月さんに会って頂きたいのですがお時間作れますか?」
「うん、大丈夫だと思う。」
「わかりました。それではお願いしますね。」
風布花は明日、翼咲に会ってもらう約束を千須佳に取り付け電話を切るのだった。
電話を切った後、千須佳は少し不安な気持ちに駆られる。
「はぁ……、それにしても女子高生かぁ……。」
千須佳は女子高生と接することに不安を覚えていた。千須佳は一回りも年齢が離れている人と話す機会がなかったからだ。
「風布花ちゃんは大人の人と接する機会多かったみたいだから落ち着いていたけど、みんながみんなそんな人じゃないよね~。」
千須佳は自分にも物怖じせずに接する風布花を凄いと感じる。そして千須佳は翼咲と会うことに不安を抱えたまま寝るのだった。
明くる日、千須佳はいつものように仕事に励むが、翼咲と会うことで頭がいっぱいになり集中できていなかった。
「どうした桜江、集中できていないぞ。」
そんな千須佳に、先輩である苦木流馬が話しかける。
「すみません苦木先輩、ちょっと仕事の後に予定があって。」
「そのことで浮足立っていたか?」
「まあ……、そんなところです。」
「そうか、仕事はしっかりな。」
千須佳は流馬に、仕事の後の予定を考えていたと話す。流馬は軽く千須佳に注意する。
「あの苦木先輩、ちょっとご相談いいですか?」
「どうした?」
千須佳はふと流馬に相談する。
「その、女子高生と仲良くするにはどうすればいいですか?」
「……は?」
千須佳はこの後会う翼咲と仲良くなれるか不安なあまり流馬に相談してしまう。流馬は少し呆れたような反応を見せる。
「……まあ、あまり気に障ることを言わなければいいんじゃないか?」
「そうですよね、ありがとうございます。少し勇気が出ました。」
流馬も女子高生との接し方をよくわかっていないためとりあえず当たり障りのないことを言ってお茶を濁す。しかし千須佳はそれで勇気が出たようだ。
「そうか、勇気が出たなら良かった。」
「はい、ありがとうございます。」
流馬は千須佳の言葉に一先ず安心する。
(何を言っているんだこいつは?仕事中に変なことを考えやがって。)
しかし内心は千須佳に苛立っているのだった。
そして仕事終わり、千須佳は翼咲に会うためいつものスイーツショップにて翼咲を待っていた。
「はぁ……、緊張するなぁ……。」
千須佳は緊張しながら姿勢を正して待っていた。
「大丈夫です千須佳さん。桐月さんもあまり人と話すことは得意じゃないようですが、私がちゃんとご紹介しますので。」
「心強いです風布花ちゃん。」
スイーツショップでは風布花も同席していた。千須佳は風布花の言葉を心強く感じる。アラモードと竹月は別のテーブルで見守っていた。そして翼咲が千須佳らの元に到着する。
「あ、赤園さん。」
「桐月さん、こっちです!」
翼咲は風布花を見つけ、風布花は手を振って翼咲を呼び寄せる。
「ど、どうも、桜江千須佳と申します。」
「あ、桐月翼咲です。」
対面した千須佳と翼咲はそれぞれぎこちない挨拶を交わす。
「桐月さん、この方が先日お話した。」
「えっと、ダイヤモンドの戦士さんですか?」
「はい、そうです……。」
翼咲は風布花の紹介で千須佳がダイヤモンドの戦士だということを確認する。
「それではその、ゆっくりとお話を……。」
「あ、はい……。」
千須佳はまたもぎこちない動作で翼咲を席に座らせる。そして翼咲と話をしようとした時、遠くから声が聞こえる。
「ち~ず~か~さ~ん!」
「え⁉」
千須佳の名を呼びながら猛ダッシュで駆け寄ってきたのは杏だった。杏は勢いよく千須佳に抱き着く。
「まさかこんなところで千須佳さんに会えるなんて~!」
「あ、うん、そうだね杏ちゃん……。」
杏は千須佳との再会を喜ぶが、千須佳は杏の対応に困惑する。そして杏は翼咲と風布花を睨みつける。
「ちょっと誰ですかこのJKの方々は?私というピッチピチなJSがいながら……!」
「杏ちゃん、誤解だから。誤解っていうか別に杏ちゃんともそういうのじゃないし。」
杏は翼咲と風布花を見て何故か嫉妬心を抱く。千須佳は必死に誤解を解こうとするが、そもそも杏は誤解を招く相手でもないことに気づく。
「あなたこそ何ですか?私達は大事なお話がありますから席を外して下さい。」
「ん⁉」
風布花は杏に席を外すよう言い聞かせるが、逆に杏は風布花を睨みつける。
「もしかしてあなた、千須佳さんを狙っているんですか?千須佳さんはあなたみたいなJKよりも私みたいなJSが良いに決まっています。」
「私は別に千須佳さんを狙っていないです!さてはあなた、千須佳さんのストーカーですね?千須佳さんが迷惑しているのでお引き取り願います。」
「あなたに何がわかるんですか?私は千須佳さんにランドセルの中身を拾ってもらってから運命の赤い糸で結ばれているんです!ストーカーなんて人聞きの悪いことを言わないでもらえますか?」
「その考え方がストーカーなんです!いくら小学生と言えどいい加減にしないと出るとこ出ますからね。」
杏と風布花は言い合いになってしまう。その口論に千須佳と翼咲は困惑してしまう。
「あらら、風布花ちゃんが謎の小学生と口論してしまっています。ここは助太刀した方がよろしいでしょうか?」
「別にいいんじゃない?面白いし。」
竹月は杏と風布花の口論を見て心配してしまうが、アラモードは面白いと言って気にしていない様子だった。
「ちょっと二人共、落ち着いてよ。」
一方、千須佳は杏と風布花の二人を宥めようとする。そんな時、人々の悲鳴が聞こえる。
「きゃああああ!」
「嘘、こんな時に?」
千須佳は人々の悲鳴からダークビタビターズの出現を察する。しかし杏がいるためすぐには出発できなかった。
「杏ちゃん、ここは危険だからあっちへ行ってて。」
「千須佳さんはどうするんですか?」
「私のことは心配しないで。」
千須佳は杏を身を守るため、遠ざけようとする。しかし杏は千須佳を心配し、離れようとしなかった。
「はいはい、子供はあっちで遊びましょうね~。」
「あ、ちょっと!あなたは御用じゃないです!」
千須佳の元を離れようとしない杏を、風布花が無理矢理引き離す。
「それじゃあ翼咲ちゃん!」
「あ、はい!」
「アラモードさんも。」
「ほい。」
そして千須佳は翼咲、アラモードと共にダークビタビターズの元に急ぐ。
「離して下さい!千須佳さんはどこに行ったんですか!」
「千須佳さんは大事な用があるんです。」
杏は無理矢理手を引く風布花に千須佳のことを尋ねるが、風布花は誤魔化すように答える。
「そこまでして私と千須佳さんを引き離したいですか?」
「当たり前です、その方が世界を守れるので。」
「酷い言いがかりですね。」
杏は風布花の自身を千須佳と引き離そうとする悪態に苛ついてしまうが、杏もチーズレーザーとして戦わないという責任感があった。
(でも、私もチーズレーザーにならないとだしな。)
杏は指輪を嵌めるため、風布花から逃げることを決める。
「あ!あんなところにUFOが!」
「え、UFO?」
「隙あり!」
杏はUFOが出たと嘘を言い、風布花の視線を誘導した隙を突いて風布花から逃げ出す。
「あ、待ちなさい!」
「あなたと一緒にいるくらいなら一人で逃げた方がマシです!べーだ!」
風布花は杏を引き留めようとするが、杏は悪態をついて目の下を引っ張る。そして風布花の前から姿を消すのだった。
「よし、ここなら。」
杏は物陰に隠れ、こっそりと真珠の指輪を嵌める。
一方、雪大と西瓜もコンビニの前で指輪が反応していることを確認する。
「西瓜、行くぞ。」
「はい!」
二人も杏と同じように指輪を嵌めようとする。その直前、西瓜は雪大に話しかける。
「あの、雪大さん。」
「どうした?」
「あの、戦いの後でブロッサムファイヤーに話を聞くんですか?」
「ああ、そうだな。」
雪大は戦いの後で戦士の姿のままブロッサムファイヤー、つまり翼咲に話を聞くつもりだった。そして二人は指輪を嵌め、精神を飛ばすのだった。
千須佳、翼咲、アラモードが駆けつけた先にはケールスがマリスを暴れさせていた。
「ケールス!」
「何だ、もう戦士が来たのか。」
千須佳はケールスの名を叫ぶ。ケールスは到着の早さに辟易する。
「今日こそ倒す!」
千須佳はそう言うと翼咲、アラモードと共に指輪を嵌め、ブレスレットを出現させる。
「エルフ!ダイヤモンド!チーズケーキ!」
「朱雀!ガーネット!桜餅!」
「ゴブリン!オパール!パフェ!」
三人はそれぞれ叫び、ダイヤルを回して矢印を合わせる。
「It’s so sweet!」
「スイートチェンジ!」
「もちもちチェンジ!」
「特大爆盛チェンジ!」
そして三人は勢いよくブレスレットのディスクを回し、戦士へとその姿を変える。
「チーズレーザー!」
「ブロッサムファイヤー!」
「レジェンスウィーテス!」
三人の戦士はそれぞれ名乗り、ケールスとマリスに立ち向かう。
「はぁぁ!」
ブロッサムファイヤーは鳥のような形の炎を身に纏い、ケールスとマリスに突撃する。
「ぐおぉぉ!」
ケールスはブロッサムファイヤーの攻撃に跳ね飛ばされしまう。
「凄い……。」
チーズレーザーはブロッサムファイヤーの強さに思わず見惚れてしまう。
「おい、何突っ立ってんだよ。戦わねえなら俺に代われ。」
「え、ああ、ごめん。」
そのまま立ち竦む千須佳に痺れを切らした雪大は千須佳に話しかけ、自身に代わるよう言う。
(さっさと敵を倒して、桐月に話を聞かなきゃな。)
雪大は密かに、翼咲と話すタイミングを伺っていた。そしてチーズレーザーはブレスレットのダイヤルに手を添える。
「「ビッグフット!サファイア!ソーダフロート!」」
千須佳と雪大は共に叫び、チーズレーザーがブレスレットのダイヤルを回し矢印を合わせる。
「「シュワシュワチェンジ!」」
そして叫びながらブレスレットのディスクを回し、チーズレーザーはパワーアローにフォームチェンジする。
「はぁぁ!」
「うおっ⁉」
チーズレーザーはケールスに弓矢を放つ。ケールスも突然の不意打ちに驚く。
「さっさと戦いを終わらせたいんだよ!」
「ああ、俺もそのつもりだ!」
チーズレーザーは戦いを早く終わらせたいと言う。ケールスも同じ考えだと言うとチーズレーザーに向かって走り出す。
「しょうがない、マリスは私が!」
レジェンスウィーテスはそう言うとマリスに飛び掛かりナイフを突き立てる。
「「うおぉぉぉ!」」
チーズレーザーとケールスは互いに手を握り合い力比べをする。
「うおりゃぁぁぁ!」
そしてチーズレーザーはケールスを投げ飛ばす。
「あの、さっきと雰囲気が違うんですが……。」
ブロッサムファイヤーはチーズレーザーの姿が変わっただけではなく、喋り方や態度が変わったことに違和感を覚える。
「あぁ⁉チーズレーザーはこういう仕様なんだよ。それよりもさっさとあいつを倒すぞ。」
「あ、はい!」
チーズレーザーは少し苛立った様子で答える。そしてブロッサムファイヤーに共闘を促す。
「おのれ戦士共め、ここで終わらせてやる!」
「ああ、お前を倒してな!」
ケールスはチーズレーザーとブロッサムファイヤーを煽るが、チーズレーザーも煽り返す。
「はぁぁ!」
そしてブロッサムファイヤーが再び火の鳥と化しケールスに突撃する。
「何⁉」
ケールスは驚き、ブロッサムファイヤーはケールスに突撃したまま空に舞い上がる。
「おい離せ!どこまで連れて行く気だ!」
ケールスはブロッサムファイヤーの攻撃に抗おうとするが何も抵抗できずそのまま落とされてしまう。
「行くぜ〜!」
チーズレーザーはそう言ってブロッサムファイヤーがケールスから離れたのを確認すると弓矢を構えて空から真っ逆さまに落ちるケールスに照準を合わせる。
「秘弓・氷雪の一射!」
そしてケールスに向かって矢を放つ。
「うわぁぁぁぁ!」
矢を射抜かれてしまったケールスは、炎と氷の二段攻撃に耐えられず消滅してしまう。
「ふぅ、流石に熱いのと冷たいのを喰らったらひとたまりもねぇだろ。」
チーズレーザーはケールスが消滅するのを確認すると、安心したように弓を下ろす。ブロッサムファイヤーも無事に着地し、チーズレーザーの側に戻る。
「はぁぁ!」
レジェンスウィーテスもマリスに止めの一刺しを喰らわせ、消滅させる。
「さて、終わったところでお前に聞きたいことがあるんだよ。」
「え?」
チーズレーザー、もとい雪大は戻って来たブロッサムファイヤーに顔を向け話しかける。
「実はな……。」
そして雪大が自身のことを打ち明けようとした時、中から流馬が話しかける。
「おい、雑談なら戻ってからしろ。」
「は?戻ったら離れんだろ。今聞かなきゃ意味ねぇんだよ。」
「ふざけるな!こっちは仕事抜け出して来てるんだ。さっさと元の体に戻せ。」
「はぁ!?」
流馬は雪大に、元の姿に戻るよう急かす。雪大はブロッサムファイヤーに尋ねたいことがあったが、流馬の圧力に押され仕方なく指輪を外す。
「……ったく、いいところだったのによぉ。」
そう言ってチーズレーザーは元の千須佳の姿に戻る。そしてブロッサムファイヤー、レジェンスウィーテスも指輪を外して元の姿に戻る。
「ごめんね翼咲ちゃん、驚いたよね?」
「えっと……、千須佳さんですよね?」
「うん、私はちょっとややこしくて……。」
翼咲は元の姿に戻り、雰囲気も戻った千須佳に戸惑う。千須佳は翼咲に、言葉足らずな弁解をするのだった。
一方、目が覚めた雪大と西瓜。雪大はブロッサムファイヤーに話を聞く寸前で流馬に邪魔されたことに苛立っていた。
「あ〜もう!あのルビーの奴邪魔しやがってよぉ。」
「絶好のタイミングだったんですけどね……。」
西瓜もブロッサムファイヤーに話を聞けなかったことを残念に思う。
「くっそ〜、さっさとチーズレーザーが誰なのか突き止めねぇと話進まねぇぞ。」
「はい……。」
雪大は西瓜と共に一刻も早くチーズレーザーの正体を知ることを誓う。しかしそこに、コンビニの店員が現れる。
「ちょっとうるさいですよ!元気になったなら早く出て下さい!」
「「は、はい!」」
雪大と西瓜は店員に怒鳴られ思わず背筋を伸ばしてしまう。どうやら雪大と西瓜はまたコンビニの前で倒れ、控え室に運ばれていたようだった。
(早くチーズレーザーと会って、こんなこそこそ戦いに出る日々とはおさらばしてやるぜ……。)
雪大は心の中で、チーズレーザーと会うことを改めて誓うのだった。




