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Miracle Sweets Princess  作者: ロマンス王子
第一章 出会い編
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第四話 妖精さんと火の鳥

 どこにでもいるはずの女性、桜江(さくらえ)千須佳(ちずか)は何気ない日常を送っていた。そんな時、悪の組織ダークビタビターズが現れ千須佳は戦士として戦うことになる。氷山(ひやま)雪大(せつと)水無(みずなし)西瓜(すいか)はそれぞれ思い悩み非行に走ってしまうが、共にチーズレーザーとして戦い、二人でその秘密を共有するのだった。

 ある日、千須佳はいつものように仲間である双見(ふたみ)アラモードと三浦(みうら)竹月(たかつき)とスイーツショップに来ていた。


「新たにサファイアとエメラルドの指輪の力を引き出しましたね。」

「やったじゃん。」

「そうですね……。」


 竹月とアラモードは千須佳に先日の戦いでサファイアとエメラルドの指輪の力を引き出したことを振り返り感心する。しかし千須佳は浮かない顔だった。


「いかが致しました?千須佳さん。」

「そうですね、また知らない人を強制的に呼び出したんだなって思うと……。」

「ああ、そのこと?」


 千須佳が感じていたのは正体を知らない指輪の持ち主を強制的に呼び出した罪悪感だった。そのことに対してアラモードが助言する。


「別にいいでしょ、今までの戦いを見る限り別に戦いに対して嫌がるようなことはなかったし。」

「でも……。」


 アラモードはパフェを食べながら楽観的に話す。確かに今までチーズレーザーとして戦った流馬、雪大、西瓜は戦士として戦ってくれていた。しかし千須佳はそれでも罪悪感を拭えなかった。そして竹月が千須佳の方を向いて語り出す。


「千須佳さん、少し宜しいですか?」

「はい……。」

(わたくし)達の時は指輪を一人一個だけ所有していましたし、徐々に仲間が増え最終的には指輪と同じ数の十二人で戦うことができました。それと比べればまだ戦士が二人だけである今の状況は厳しいです。確かに千須佳さんに無理を強いることを言っていることは承知しております。しかし今は千須佳さんが切り札であり、数少ない戦力なんです。」

「そう、ですよね……。」


 竹月は千須佳に、戦力が足りていない今は千須佳の力が必要だと言う。千須佳は少し躊躇いもありつつその事実を受け止めるしかなかった。


「はぁ……。」


 千須佳はダイヤモンドの指輪を見ながら溜め息を吐く。


「やはり憂鬱に感じられますか?」

「はい、まだ表に出ていない人も一人だけいますし……。」


 千須佳は知らない人を戦いに巻き込むのを憂鬱に感じていた。そして千須佳の頭の中に聞こえる声にはまだ一人だけ表に出ていない者がいた。


「あと一つだけ指輪の力があるってことか。」


 アラモードはパフェを食べながら指輪の力がまだ隠されていることを楽観視する。


「あと一人、どんな能力なんだろう……。」


 千須佳は未だ見ぬあと一人の能力が気になるのだった。



 それから数日経ったある日、小学四年生の仁科(にしな)(あんず)はいつものように教室で友人と語らっていた。杏は以前、ランドセルの中身の教科書やノートを落としてしまった時に千須佳に拾ってもらった経験があった。


「ははははは!」

「何それー!」


 杏は年頃の女の子のように友人と仲良く語らい、笑い合っていた。そしてチャイムが鳴り、杏を含め教室の皆は席に着く。


「よーし、授業始めるぞー。」


 そう言って入って来たのは、水無西瓜が所属するパソコン部の顧問を勤める栗崎(くりざき)剛志(ごうし)だった。(じつ)は、栗崎は杏のクラスの担任でもあった。そして栗崎は黒板の前に立ち、授業を始めるのだった。



 一方その頃、ダークビタビターズではディフィートがケールスとゴーヤイドにチーズレーザーの新たな二つの姿について話す。


「全く、今度は二つの姿になりやがった。」

「やっぱまだ力を隠し持っていたか。」

「厄介な戦士だぜ。」


 ケールス、ゴーヤイド、ディフィートの三人はチーズレーザーの姿を変える厄介さに頭を悩ませてしまう。そんな時、割れたハートが体中に散りばめられたような怪物が現れる。


「あんた達、そんなへっぴり腰でどうするんだい?」

「お前は、ロストラヴ!」


 ディフィートはその怪物の名前をロストラヴと呼ぶ。ロストラヴはダークビタビターズの幹部では珍しく女性型の幹部であるようだ。


「今度は私が行く。今こそ戦士共を一網打尽だよ。」


 そう言ってロストラヴは人間界に赴くのだった。



 その日の放課後、杏は帰る準備をしていた。そして同じく支度をしている栗崎に話しかける。


「栗崎先生、これからどこか行くんですか?」

「ああ、これからパソコン部の活動だ。」


 杏は栗崎に用事を尋ね、栗崎はパソコン部の活動に行くと答える。


「パソコン部って、もう部員が一人しかいないクラブですよね?そんな積極的に活動する必要あるんですか?」

「パソコン部は一人だけの部員、西瓜の心の拠り所だからな。西瓜の居場所を守るためにもパソコン部は卒業まで守らないとな。」

「律儀ですね、先生。」

「不器用なだけだ、俺は。」


 杏は未だにパソコン部の活動を続ける栗崎に疑問を持っていたが、栗崎は西瓜の居場所を守るためにパソコン部を続けていると答える。


「そうなんですね~。」


 杏は無気力に答える。杏はどうしても栗崎がパソコン部の活動を続けていることに納得が行かなかった。



 帰り道、杏は一人呟いていた。


「パソコン部も部員があと一人で、それもそこそこ有名の陰気な先輩だけだっていうのにその先輩のせいで栗崎先生の時間が取られるのがなぁ……。」


 杏の学年でも西瓜の陰気具合は有名なようで、杏はそんな西瓜に栗崎が時間を割いていることが納得できないことだった。

 そんな時、杏は遠くに千須佳を見つける。


「お、千須佳さんだ!」


 杏は嬉しくなり千須佳に向かって走り出す。


「お~い、ち~ず~か~さ~ん!」

「ん?あ、杏ちゃん。」


 千須佳は迫って来る杏に気づく。そして杏は勢いよく千須佳に抱き着く。


「会いたかったです!」

「久し振りだね、杏ちゃん。」


 杏は千須佳との再会を喜ぶ。千須佳も杏を可愛がりながら頭を撫でる。


「ああ、今日も麗しいですね千須佳さん。」

「そ、そうかな……?」

「はい、今すぐにでもこの身を委ねたいです。」

「そ、そうなんだ……。」


 杏は千須佳の腕にしがみつきながらにやける。千須佳もその杏の言葉にどう返せばいいかわからなかった。そして杏は千須佳の腕にしがみついたまま千須佳と共に歩く。


「千須佳さん。」

「何?」

「今、学校に部員が一人しかいないクラブがあって担任の先生がそこの顧問をしているんです。」

「へ~。」


 杏はふと、千須佳にパソコン部のことを話す。


「そのクラブに所属している一人というのがですね、先輩なんですけど中々陰気で有名なんですよ。」

「陰気?」

「はい、それなのに担任の先生はその先輩一人のためにクラブを存続してるんですよ。それっておかしくありません?」

「おかしいかな……?」

「おかしいですよ。そんな時間を割くほどの人じゃないんですよその先輩。」


 杏は千須佳に、西瓜が時間を割くほどの人間ではないと豪語する。しかし千須佳はその言葉に疑問を持つ。


「うーん、私は別に誰かに何かするほどの人じゃないとか思わないけどなぁ。」

「え?」

「その先生だって、その子を想ってやってるんでしょ?それは良いことだと思うよ。」


 千須佳は栗崎が西瓜のためにパソコン部の活動をしていることを良いことだと話す。そして千須佳は屈んで杏の目線に立って話す。


「私は杏ちゃんに、人を陽気か陰気で判断する人になって欲しくないな。」

「千須佳さん……。」


 千須佳は優しい口調でそう言う。思えば杏は西瓜のことを陰気な先輩という噂だけでしか聞いたことがなく、西瓜とまともに話したことがなかった。それから杏は千須佳とあまり話が弾まず、そのまま解散するのだった。



 一方その頃、氷山雪大は風紀委員の仲間である赤園(あかぞの)風布花(ふうか)と言い合っていた。


「ちょっと氷山君、何ですかこの報告書は!」

「良いだろ別に。報告書って言っても四角のところに書くだけなんだしよぉ。」

「だからといって全部『大丈夫』か『多分大丈夫』はいくら何でも適当過ぎます!もう少しちゃんと書いて下さい!」


 風布花は雪大のパトロール報告書について指摘していた。それについて雪大も張り合い二人は喧嘩をしていた。そんな二人の横で同じく風紀委員の仲間であり雪大のクラスメイトでもある桐月(きりつき)翼咲(つばさ)は物憂げな様子で俯いていた。


「どうした桐月?」


 雪大はふと翼咲の様子が気になり話しかける。


「ん、ああごめん。ちょっとボーっとしてた。」

「ほら、氷山君のいい加減な仕事のせいで桐月さんの時間も奪っているじゃないですか!」

「別に俺のせいじゃねぇだろ。」


 翼咲は放心していたと答える。風布花はそれも雪大のせいだと豪語し、雪大とまた言い合う。翼咲はそんな二人を、ポケットを握り締めながら眺めていたのだった。



 その夜、杏はベッドに横たわり言い表せない苛立ちを覚えていた。


「はぁ……、もうわかんないな。」


 杏はどうしても西瓜のためにパソコン部を存続させた栗崎のことが理解できなかった。


「人の優しさって、私にはわからないのかな……。」


 杏は栗崎のやっていることを「優しい」の一言でまとめられなかった。


「わからないと言えば、これもか……。」


 杏はそう言ってポケットから真珠の指輪を取り出して眺める。(じつ)は杏こそが、千須佳が戦っている時に頭の中に聞こえた声の一人、少女のような声の主だった。


「他の人と交代する戦士、私も交代して戦うことになるのかな……。」


 杏は自身も戦いの場に立つ宿命を感じ、物怖じしてしまうのだった。



 明くる日、人間界に降り立ったロストラヴは悪意を持つ人間を探す。


「さてと、強い悪意を持っている奴はどこにいるのかねぇ。」


 ロストラヴはチーズレーザーら戦士達を倒すだけの強いマリスを産み出すため、強い悪意を持つ人間を探していた。そんな時、ロストラヴはとある喧嘩しているカップルを見つける。


「ちょっと、別れるなんて言わないでよ!」

「おや?」


 ロストラヴはそのカップルの喧嘩に興味を持つ。女性の強い言葉から察するに、そのカップルは別れ話をしているようだった。


「悪いな、他に好きな女性ができたんだ。」

「そんな、結婚の話までしていたじゃん!」


 そのカップルは言い合いになる。そして男性は女性を冷たく突き放し、背を向けて去って行く。


「じゃあな。」

「ちょっと待ってよ……。」


 女性は男性を呼び止めようとするが、男性はそのまま去ってしまう。そして女性は崩れ落ち、膝をついてしまう。


「そんな……!」

「ほぉ。」


 その女性の姿を見て、ロストラヴは興味を持ち歩み寄る。


「あんた、大丈夫かい?」

「放っておいてよ、今どんな状況かわかるでしょ?」


 ロストラヴは女性に話しかけるが、女性は失恋している最中なのでロストラヴを突き放す。しかしロストラヴは構わず話し続ける。


「まあそんなこと言わずにさ。今、あいつに振られてどんな気持ちだい?」

「決まっているでしょ、裏切られたんだから。報復してやりたい気分だよ。」

「そうだねぇ、もっとデカいことを言っていいんだよ。」

「え?」


 ロストラヴは女性に気持ちを尋ね、悪意を増幅させようとする。そして女性は自暴自棄になったように叫ぶ。


「もう、こんな世界なんて消えて無くなってしまえ!」

「頂いたよ!」


 ロストラヴはそう言って女性の頭に手を翳し、黒いオーラを出す。そしてその中からマリスが現れる。


「このマリスで、今こそ人間界はダークビタビターズのものさ!」


 ロストラヴはそう言って街へ繰り出すのだった。



「千須佳さん、またダークビタビターズが現れました!」

「わかりました!」


 千須佳はいつものように勤務中にも来る竹月からの着信に対応し、戦いの場へ急ぐ。


「お待たせしました!」

「千須佳さん。」

「お疲れ。」


 千須佳はアラモード、竹月と合流し、アラモードと共に敵の前に立ち指輪を嵌めブレスレットを出現させる。



 千須佳が指輪を嵌めた頃、杏の持つ真珠の指輪が光り出す。


(え、今⁉)


 杏は授業を受けている最中であり、どうしようかと慌てる。


(仕方がないか、もうどうにでもなれ!)


 杏は自暴自棄になったように、左手の中指に指輪を嵌める。真珠の指輪は消え、杏の体は精神が抜けてぐったりと机に突っ伏してしまう。



 一方、雪大も授業中にサファイアの指輪が光っているのを見つける。


(マジか、今現れたのかよ!)


 雪大も杏と同じように授業中に戦いの呼び出しをもらったことに慌てながら指輪を嵌める。そしてサファイアの指輪が消え、雪大の体も精神が抜けぐったりと机に突っ伏してしまう。



 千須佳の体に精神が集まり、千須佳とアラモードの二人はブレスレットのダイヤルに手を添える。


「エルフ!ダイヤモンド!チーズケーキ!」

「ゴブリン!オパール!パフェ!」


 二人はそれぞれ叫び、ダイヤルを回して矢印を合わせる。


「It’s so sweet!」

「スイートチェンジ!」

「特大爆盛チェンジ!」


 二人はそう叫ぶとブレスレットのディスクを回す。そして二人はそれぞれ戦士へとその姿を変える。


「濃厚な甘美、チーズレーザー!」

「伝説の甘美、レジェンスウィーテス!」


 二人はそれぞれ名乗り、マリスに立ち向かう。



 一方その頃、授業をしていた栗崎は杏が机に突っ伏しているのを見つける。


「おい、大丈夫か杏?」


 栗崎は杏の様子が気になり、歩み寄って話しかけるが杏の体は精神が抜けているので何も反応がない。


「おい、どうした杏!」


 栗崎は杏の反応の無さに尋常じゃない事態を感じ、声が大きくなる。


「先生、杏ちゃん反応がないんですか?」

「ああ、まずいかも知れない。ちょっと保健室に連れて行く。」


 栗崎はそう言うと杏を背負って保健室に向かう。


「先生、いますか?」

「あら栗崎先生、授業中ですけどどうしました?」


 栗崎は保健室に行き、保健室の先生を訪ねる。


「ええ、ちょっとうちのクラスの杏が気を失ったみたいで。」

「あら、杏ちゃんも?」

「も?」


 栗崎は保健室の先生に杏の状態を話すが、保健室の先生は杏だけではないような口振りを見せる。栗崎はそれが気になってしまう。


「ええ、丁度六年生の水無西瓜君も授業中に気を失ったみたいで保健室に運び込まれたんです。」

「西瓜もですか?」


 栗崎は西瓜も気を失って運ばれたことを聞いて驚く。そして栗崎は杏を保健室のベッドに横たわらせた後、西瓜と杏を見つめる。


「西瓜と杏が同じタイミングで気を失ったということか?」


 栗崎は二人が気を失ったことに疑問を持つのだった。



 一方、精神が抜けた雪大も授業をしている先生に見つかってしまう。


「こら氷山!授業中に堂々と寝るな!」


 しかし雪大は授業中に睡魔に襲われて寝ていると思われていた。


「あの先生、氷山君は体調が悪いみたいなので保健室に連れて行ってもいいですか?」


 怒る先生に、翼咲がフォローするように言う。


「桐月だけで大丈夫か?」

「大丈夫です。」


 翼咲はそう言うと雪大の腕を持ち上げ、肩に掛けて保健室まで運ぶ。


「保健室の先生はいますか?」


 翼咲は雪大を抱えたまま保健室の扉を開き、保健室の先生を訪ねるが丁度部屋を空けていた。


「いない……。」


 翼咲は保健室の先生がいないことを確認すると雪大をベッドに横たわらせる。


「氷山君……。」


 翼咲は雪大を見つめる。すると翼咲は胸騒ぎを覚える。


「何だろう、ざわざわする……。」


 胸騒ぎを覚えた翼咲は保健室の扉を開いて顔を出し、廊下に誰もいないことを確認すると玄関から学校を飛び出すのだった。



 マリスに立ち向かうチーズレーザーとレジェンスウィーテス。しかしマリスは飛行能力を持っていた。


「飛んでる?」


 チーズレーザーは飛行するマリスに目を丸くする。そしてマリスは空からチーズレーザーとレジェンスウィーテスを攻撃する。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」


 チーズレーザーとレジェンスウィーテスは跳ね飛ばされてしまう。そんな二人の後ろにロウトラヴが現れる。


「そのマリスは失恋した女から産まれた。失恋するとどこかに飛んで行きたくなるからねぇ。」

「嘘、また幹部?」

「ああ、ロストラヴってんだよ。」

「ロストラヴ、まんま失恋じゃん。苦過ぎ。」


 チーズレーザーはまたも現れる幹部に苛立ちを覚えていた。


「こっちも新しい力を試しましょう。」

「誰?また別の人?」


 戦いの中、杏が千須佳の頭の中から話しかける。千須佳はそれが未だ表に出ない声の主だと気づく。


「今度は私が前に出ます。」

「わかった。矢印は……、白でいいよね?」

「はい!」


 杏は覚悟を決め、自分が前に出ると言う。千須佳は残りの使っていない矢印である白にダイヤルを合わせることを確認する。


「いい?幻獣と宝石とスイーツだからね、声を合わせるよ!」

「はい!」


 千須佳は杏に声を合わせるよう言い、杏も気合いを入れる。そしてチーズレーザーはダイヤルに手を添える。


「「フェアリー!パール!杏仁豆腐!」」


 チーズレーザーは幻獣と宝石とスイーツの名を叫び、ダイヤルを回す。


「It’s so sweet!」

「「ふわふわチェンジ!」」


 そしてブレスレットから流れる音声と共に叫び、ブレスレットのディスクを回す。するとチーズレーザーは新たな姿へと変わる。

 チーズレーザーの新たな姿は全体的に桃色の妖精を彷彿とさせるような衣装を身に纏い、背中には蝶の羽のような翼が生えていた。更に袖はノースリーブでフリルが付いていて、腹部はセパレート型になっていた。そして左手の中指には真珠の指輪が嵌められている。


「わーい!私もチーズレーザーになれたー!可愛いー!」


 杏はチーズレーザーになれたことを喜ぶ。しかし手を見てあることを思う。


「ああ……、でもちょっと年齢出ちゃってるなぁ。」

「余計なこと言わないの!」

「はーい。」


 杏は手を見てチーズレーザーが年上の女性と改めて確信する。千須佳は年齢を指摘されたことに腹を立ててしまう。


「よし、それでは私の初陣行きます!」


 チーズレーザーは改めてそう言うと飛行中のマリスに向かって勢いよく飛び上がる。


「飛んだー!」


 杏は飛び上がったことを無邪気に喜ぶ。そして先にハート型のオブジェが付いたステッキを召喚し、マリスにハート型のビームを浴びせる。


「可愛いなんちゃらビーム!」


 ビームはマリスに命中し、マリスは怯んでしまう。その隙を突き、今度は一回転してマリスを蹴り飛ばす。


「可愛いくて強いキーーーック!」


 マリスは飛行能力を保てなくなり、地上に落ちてしまう。チーズレーザーも地面に着地し、不敵に立つ。


「またチーズレーザーの新しい姿かい?」

「そうですよロストラヴさん、これぞチーズレーザーの真骨頂。この姿の時はチーズレーザー・キューティーウイングと呼んで下さい!」


 チーズレーザーはロストラヴにキューティーウイングと名乗り、ステッキを向ける。


「さあ、止めと行きま……、あれ?」


 そしてチーズレーザー・キューティーウイングがマリスに止めを刺そうとした時、遠くから走ってくる人影が見える。


「誰か来る?」

「一体どなたでしょう?」


 レジェンスウィーテスと竹月も遠くから来る人影に注目してしまう。そして来たのは、雪大のクラスメイトである桐月翼咲だった。


「はぁはぁ……。」


 翼咲は急いで走ってきたようで、息を切らしていた。


(桐月……?)


 雪大はチーズレーザーの中で翼咲が現れたことに驚く。


「あれが……、悪の組織……。」


 翼咲はロストラヴとマリスを見てそう呟く。そしてポケットからガーネットの指輪を取り出す。


「あれは、ガーネットの指輪⁉」


 竹月は翼咲が取り出したガーネットの指輪に驚く。そして翼咲はガーネットの指輪を左手の中指に嵌め、ブレスレットを出現させる。


「朱雀!ガーネット!桜餅!」


 翼咲はそう叫ぶとブレスレットのダイヤルを回して矢印を合わせる。


「It’s so sweet!」

「もちもちチェンジ!」


 そしてブレスレットから流れる音声と共に叫び、ブレスレットのディスクを回す。すると、翼咲は戦士へとその姿を変える。

 その戦士は赤い和装に身を包み、それには桜吹雪の模様が描かれていた。髪は後ろに結われている。


「……ブロッサムファイヤー。」


 その戦士はブロッサムファイヤーと名乗る。ブロッサムファイヤーはマリスに向かって勢いよく走り出す。


「はぁぁ!」


 ブロッサムファイヤーは燃え上がる鳥の姿になってマリスに突撃する。そして垂直に勢いよく飛び上がる。ブロッサムファイヤーはマリスを貫き、消滅させてしまう。


「私のマリスがぁ!」

「容赦ない攻撃ですね……。」


 ロストラヴはマリスを消滅させられたことを悔やむ。チーズレーザーとなっていた杏は攻撃の容赦のなさに唖然とする。

 地面に着地したブロッサムファイヤーは鳥の姿から元の姿に戻る。


「くっっ……、ここは一時撤退だよ!」


 ロストラヴは悔しさを噛み締めながら人間界を去る。ロストラヴが去った後、ブロッサムファイヤーは指輪を外して翼咲の姿に戻る。


「あの、その指輪についてお伺いしたいのですが……!」

「あ、すみません、私授業を抜け出して来ているのでここで。」


 竹月が翼咲を呼び止めて話を聞こうとするが、翼咲は授業に戻ると言って去ってしまう。竹月は何かの手がかりになるかと思い翼咲を撮る。


「はぁ~あ、せっかくの私の初陣が台無し。」

「そんなこと言ってる場合かよ!おい、俺に代われ!あいつと話をさせろ!」


 チーズレーザーは自身の初陣を翼咲に奪われたと怪訝な表情を浮かべる。雪大はチーズレーザーの頭の中から杏に、自分に代わって翼咲と話をさせるように言う。しかし杏は聞く耳を持たなかった。


「えぇ~、面倒くさいです。私も授業に戻らなきゃなんで上がりますね。」

「おい、ちょっと待てよ!」


 杏も授業に戻ると言い、真珠の指輪を外す。雪大は止めようとするが、結局チーズレーザーは元の千須佳の姿に戻ってしまい、他の皆も精神が自分の体に戻る。


「千須佳さん、先ほどの方。」

「そうですよね、あれが新しい戦士……。」

「やっぱり他に戦士がいたんだね。」


 竹月は翼咲について千須佳に話す。千須佳は新しい戦士の出現に思いを馳せるのだ。そしてアラモードは他人事のように話していた。



 戦いを終え、目を覚ました杏は保健室で寝ていることに気づく。


「あ、保健室に運ばれたんだ……。」


 杏は申し訳ないことをしたと思いながら隣のベッドに目を運ぶと、そこには先輩である水無西瓜がいた。


(げっ、パソコン部の陰気な先輩じゃん。)

(この子、確か栗崎先生のクラスの子……。)


 西瓜も杏が隣のベッドで寝ていたことに気づく。そして二人は自分が指輪を嵌めていたままだということに気づく。


(やばっ、この人にチーズレーザーだってバレるところじゃん!)

(流石に指輪とか見られるわけに行かないよね……。)


 二人は慌てて指輪を外してポケットにしまう。


「あら、二人共目を覚ましたみたいね。」

「あ、はい。お陰様で……。」

「それでは授業に戻りますね。」


 保健室の先生は西瓜と杏が目を覚ましたことに安心し、二人に話しかける。そして二人は一言も交わすことなく保健室を出てそれぞれの教室に戻る。二人は互いがチーズレーザーの一人であることを知らぬままであった。



 一方その頃、雪大も保健室で目を覚ます。するとそこには翼咲がいた。


「桐月?」

「良かった、目を覚ましたんだね。」

「お、おお……。」


 雪大は先ほどまで戦っていた翼咲がいることに驚いてしまう。


「じゃあ教室に戻ろう、みんな待ってるよ。」

「ああ、別にみんな待ってはいないだろうけどな。」


 翼咲は雪大に、教室に戻ろうと言う。雪大は軽口を叩きながら翼咲と共に教室に戻る。


「おお氷山、起きたか。」

「あ、すんませんでした。」


 教室に戻ると、先生が雪大と翼咲を迎える。雪大はとりあえずというような感じで謝る。


「桐月は氷山が目を覚ますまで付き添ってあげていたのか?」

「はい、氷山君が心配だったので。」

「は?」


 先生は翼咲が雪大にずっと付き添っていたと思い、翼咲も頷く。しかし雪大は翼咲が嘘をついていることを知っていた。


「おい桐月、お前さっき……。」

「何かあった?」

「いや……、別に何でもねぇ。」


 雪大は翼咲に、戦いに出ていたことを問いかけようと思ったが(とど)まってしまう。雪大は自身がチーズレーザーであることを翼咲に知られるわけに行かないと思ったからだ。そして雪大は翼咲に戦士であることを尋ねられないままになるのだった。

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