第八話 ドタバタ親睦会
どこにでもいるはずの女性、桜江千須佳は何気ない日常を送っていた。戦いの中で新たに出会った戦士、ブロッサムファイヤーの桐月翼咲と漸く仲間になる。一方で、同じチーズレーザーとして戦う仲間達はあまり関係を深めたとは言い難いものとなっていた。
ある日、学校の授業を終え帰り道を歩く三人の女子小学生達がいた。彼女らは仲良く語らいながら歩いていた。
「あははははは!」
「何それー!」
彼女らが笑いながら語らう道すがら、突然目の前にマリスが現れる。
「嘘、怪物!?」
「きゃーーー!」
彼女らはマリスに怯え、叫んでしまう。そんな時、突然マリスに斧で斬りかかる戦士が現れる。
「……あれ?」
少女らは戦士が守ってくれたことに戸惑う。その戦士は、屈強な体付きにトロールを模したような黄色い頑丈な装甲、そして栗を模したようなゴーグルを備えたメットを被っていた。
「戦士……?」
「私達を守ってくれたんだ……。」
少女らは自分達を守ってくれた戦士にときめく。そして戦士は斧を振るい、マリスを消滅させる。
「怪我はないか?」
戦士は少女らに歩み寄り、怪我がないか尋ね気遣う。
「はい、私は何とも……。」
「私も……。」
「私も……。」
少女らは三人とも怪我をしていないと話した。
「良かった。」
戦士は少女らの無事を確認すると、その場を去ろうとする。
「あ、ちょっと待って下さい!お名前だけでも……!」
一人の少女が戦士を引き止め、名前を聞こうとする。戦士は一瞬その場に止まり、少し首を振り向かせて呟く。
「アクスマロール、それだけ伝えておく。」
その戦士はアクスマロールと名乗る。それだけ伝えるとアクスマロールはどこかへ去ってしまう。
「「「カッコいい……。」」」
少女らはすっかりアクスマロールの虜になっていた。
翌日、小学校の少女らのクラスの教室の壁には大きな壁新聞が貼られていた。それは昨日少女らを助けたアクスマロールについてのものだった。
「アクスマロール……?」
その壁新聞を見た仁科杏はアクスマロールの姿に目を丸くしていた。
「ねえ、アクスマロールって何?」
「昨日私達を助けてくれた戦士だよ杏。とってもカッコ良かったんだから!」
杏はクラスメイトである少女にアクスマロールのことを尋ねる。少女は力の入った言い方でアクスマロールのことを話す。
「へぇ……、というか昨日マリス出たんだ……。」
「何?まり……?」
「何でも無い。」
杏はアクスマロールのことよりもマリスが出たのにチーズレーザーが出動しなかったことの方が気掛かりだった。そのことを友人である少女に聞かれるが、何でも無いと誤魔化す。
(あ、指輪……!)
そして杏が見つけたのはアクスマロールの左手の中指に黄色い宝石の指輪が嵌められていたことだった。
(やっぱりこの戦士もチーズレーザーと同じ指輪の戦士……。)
杏はアクスマロールも指輪の戦士だと確信する。そして教室に担任である栗崎剛志が入って来る。
「ほらほら、喋ってないで朝の会を始めるぞ〜。」
栗崎のその声で皆は席に着き、クラス一同は朝の会を始めるのだった。
それから数日が経ち、アクスマロールの噂は小学校を飛び出して街中に広まっていた。
とあるカフェで桜江千須佳、桐月翼咲、双見アラモード、三浦竹月、赤園風布花の五人は翼咲が新たに仲間に加わってくれたことを記念して歓迎会を開いていた。
「私達の仲間に、新たに翼咲さんが加わって下さいました。」
「はい。桐月翼咲、これから宜しくお願い致します。」
竹月の紹介を受け、翼咲は深々と頭を下げる。
「翼咲ちゃんが仲間になってくれて本当に良かったよ。」
千須佳も翼咲が仲間になったことを喜ぶ。
「戦士が増えてくれて私も安心だよ。」
アラモードもパフェを食べながら翼咲の仲間入りを喜ぶ。そんな時、カフェの店員が一同のテーブルまで現れる。
「いらっしゃいませ!ご注文をお伺いします!」
その店員は元気な様子で皆に注文を伺う。
「アメリカンで。」
「アイスティーで。」
「カフェモカで。」
「抹茶ラテをお願いします。」
千須佳はアメリカン・コーヒーを、翼咲はアイスティーを、風布花はカフェモカを、竹月は抹茶ラテをそれぞれ頼む。そして店員は、アラモードを見つけると途端に笑顔で話しかける。
「おお!アラモードさんじゃないですか!」
「ああ、萌香ちゃんか。」
アラモードはその店員を見て萌香と言う。どうやらアラモードはその店員と知り合いだったようだ。そして萌香という店員はアラモードにフレンドリーに話す。
「アラモードの旦那、また特製パフェの試作が完成しましたぜ。」
「持って参れ。」
「はいよ!」
店員は江戸時代のような口調でアラモードと話すと、急いで厨房まで赴く。
「竹月さん、ここのカフェってよく来るんですか?さっきの店員さんと結構親密な感じでしたけど……。」
千須佳は先程の店員のやけにフレンドリーな応対に疑問を感じ、竹月に尋ねる。
「はい、先程の店員の方は樽原萌香さんといってよくアラモードさんに新作パフェを作って下さるんですよ。」
「そうなんですか……。」
竹月はその店員を樽原萌香と紹介する。そして萌香がアラモードに新作パフェを作っていることを聞くと、千須佳は思わず苦笑いをする。
「あの、アラモードさんっていつもパフェを食べているイメージなんですが大丈夫なんですか?」
「だいじょぶだいじょぶ〜。」
翼咲はアラモードがいつもパフェを食べていることを心配するが、当のアラモードは楽観的に答える。
「全く、パフェ好きもいい加減にしなさいよ。」
そう言いながら今度は先程の店員とは別の店員が現れる。
「えっと、桜江千須佳ちゃんに桐月翼咲ちゃんだね。このカフェの店長の鈴木林檎です。」
「あっ……、宜しくお願いします。」
「宜しくお願いします……。」
千須佳と翼咲は思わず宜しくお願いしますと返したが、店長の鈴木林檎と名乗る人物はなぜ自分達の名前を知っているのか疑問に思っていた。
「千須佳さん、翼咲さん、こちらの鈴木林檎さんは七年前に私達と共に戦った元アメジストの指輪の戦士の方です。」
「「先輩!?」」
竹月は林檎の紹介をする。林檎は七年前に竹月やアラモード、風布花と共にアメジストの指輪の戦士として戦った人物だった。
「カフェの仕事が忙しくてこんなところで挨拶することになってごめんね。二人のことは竹月ちゃんから聞いているから。」
「そうだったんですね。」
林檎は千須佳と翼咲のことを聞いていたが、カフェの仕事が忙しくて中々会えなかったと話す。そして竹月は林檎に、萌香について話す。
「そういえば林檎さん、萌香さんもすっかりこちらの仕事に慣れているようですね。」
「ああ、まあね。」
竹月は萌香がカフェで働き出した頃から知っているらしく、萌香がカフェの仕事に慣れていることが感慨深いようだ。しかし林檎は少し苦い表情で答える。
「あの子もしっかりやるようになってはくれたけどまだ全然そそっかしいよ。相変わらず勝手にアラモード用のパフェを開発するし。」
「あれ勝手にやってたんですか……。」
林檎はまだ萌香がそそっかしいという。そしてアラモードのためにパフェを作っていることを無断でしていると知った千須佳は思わず苦笑いをしてしまう。
「そうなんだよ。本店の店長が面白がっているからここの店舗限定メニューにしてなんとかやってるんだけどね。」
「なるほど……。」
林檎は萌香のパフェを店舗限定メニューにしていることでなんとかしていると話す。そして萌香が先程注文されたドリンクと大きなパフェを持って再び現れる。
「お待たせしました〜!アッメ〜リカ〜ンとアイスティーとカフェモカと抹茶ラテです!そしてアラモードの旦那、本日のお手製特大爆盛パフェですぜ!」
「おぉ〜。」
「「えぇ……。」」
萌香はドリンクを置き、そしてアラモードの元にパフェを置く。その大きなパフェに千須佳と翼咲は引いてしまう。
「もうすっかりパフェの口になってたよ。」
「アラモードさん、先程までパフェ食べてましたよね?」
アラモードは食べ終えたパフェの器を横目に萌香の特大爆盛パフェを喜ぶ。千須佳はアラモードの絶えないパフェの食い意地に呆れてしまう。
「それでは、ごゆっくり!」
萌香は元気にそう言うとその場を離れる。そして林檎はふとアクスマロールの話題に触れる。
「そういえばアクスマロールだっけ?新しい戦士って。」
「はい、まだ誰なのかはわかっていないんですけど。」
アクスマロールのことは林檎や千須佳らの元にも情報が届いていた。しかし、皆はアクスマロールの正体がまだわかっていなかった。
「情報によると、アクスマロールは黄色い宝石の指輪を嵌めていたって。あのガタイの良さからシトリンの指輪の持ち主とみて間違いはないね。」
「シトリンの指輪、そんなのもあるんですね……。」
千須佳はあまり耳にしていなかったシトリンの指輪という言葉が気になる。
「まあアクスマロールの正体がわからないのでコンタクトを取りようもありません。今は千須佳さんと翼咲さんの戦力を増強することを考えないと。」
しかし風布花はアクスマロールのことを考えても仕方がないと割り切り、今は現状揃っている戦力の増強を図るべきだと主張する。
「でも風布花ちゃん、戦力の増強ってどうするの?」
翼咲は戦力の増強というものがいまいちわからなかった。もしかすると前の戦士が経験したであろう厳しい特訓をすることを危惧していたが、風布花の口から出たのは予想外の言葉だった。
「親睦会です。」
「「親睦会?」」
風布花の口から出た親睦会という言葉に千須佳と翼咲は首を傾げる。
「はい。お二方とも年齢も離れているでしょうしまだまだぎこちない関係性で戦うのも不安だと思います。ここは戦士同士水入らずでお出掛けをするのがいいです!」
「「なるほど……。」」
風布花は親睦会の重要性を熱弁する。千須佳と翼咲は丸め込まれたように相槌を打つが、特に断る理由もないため親睦会をすることに決めるのだった。
一方その頃、ダークビタビターズでもアクスマロールの話題が挙がっていた。
「アクスマロールか、また厄介な奴が現れたな。」
ディフィートはアクスマロールの出現に苦い顔を浮かべる。
「本当、これ以上戦士が増えて欲しくないものだね。」
ロストラヴも戦士が増えたことを忌まわしく感じていた。
「俺が息の根を止めてやる。」
すると、ゴーヤイドが侵攻に名乗りを上げる。
「いいのかゴーヤイド?ケールスもやられているんだぞ。」
「構わないさ。今こそケールスの仇を討ってやる。」
ゴーヤイドはケールスの仇を討つと意気込んだ。そしてゴーヤイドは人間界に赴く。
「おやおや、地獄の片道切符ですねぇ。」
「あぁ!?」
ゴーヤイドが人間界に行った後、エスプレッソが後ろから話しかける。ディフィートはエスプレッソの態度に腹を立てる。
「おい地獄ってどういうことだよ?」
「言ったままです。今の戦士の勢力だけでもゴーヤイドさんは敵いません。」
「あんた、ゴーヤイドを馬鹿にしているのかい?」
エスプレッソはあくまで今の実力差を分析しているつもりだった。しかしその言い草がディフィートとロストラヴの反感を買ってしまう。
「てめぇ、それ以上虚仮にしてっとぶっ飛ばすぞ!」
ディフィートがそう言いながらエスプレッソに殴りかかると、屈強な体のカカオ・パーフェクトが止める。
「貴様こそ、俺達に抗えると思うな。」
カカオはディフィートの拳を軽々と受け止めると、ディフィートに反抗するように言う。
「エスプレッソ、また喧嘩?」
そして小柄な体のピーマンも現れ、エスプレッソに話しかける。
「いいえ、私はただ同じ組織の方々と仲良くしたいだけですよ。」
「ふん、どうだかな。」
エスプレッソは、ただディフィートらと仲良くしたいだけだと話す。しかしその言葉もディフィートは信じられなかった。
翼咲との親睦会をすることを決めてから数日、千須佳は親睦会について考えあぐねていた。
「はぁ……。」
千須佳は思わず溜め息を吐いてしまう。そんな千須佳に先輩である苦木流馬が話しかける。
「どうした桜江?」
「いえ、何でもないです。」
流馬が千須佳に何かあったのか尋ねるが、千須佳は何もないとはぐらかす。しかし、千須佳は思い切って流馬に相談する。
「あの、苦木先輩。」
「どうした?」
「その……、女子高生って何が好きなんでしょうか?」
「……は?」
千須佳は親睦会のことで悩むあまり、流馬に相談してしまう。しかしその相談を受けた流馬は苦笑いをしてしまう。
「まあ、何をするかわからんがそんなに悩む必要はないんじゃないか?」
流馬は精一杯の助言をする。
「そうですか……、とにかく頑張ってみようと思います。」
「ああ、だから今は仕事だ。」
「はい。」
千須佳は流馬の言葉でなんとか元気を出し、流馬もそんな千須佳に答え仕事を促す。
(全く、桜江の奴またガキとつるんでいるのかよ。)
流馬は心の中で千須佳に呆れてしまう。流馬は荒々しい性格を未だ千須佳には見せずにいた。
一方、翼咲は風布花と共に学校の帰り道を歩いていた。
「今週末、駅前の百貨店でショッピングというのはいかがですか?」
「うん、それでいいよ。」
風布花は親睦会の日時と場所を提案する。翼咲もその内容で承諾する。
「あの、翼咲さん。」
「何?」
ふと風布花は翼咲に話しかける。
「まだ緊張していますか?千須佳さんと一緒にいるの。」
「えっと……、まあそうだね。」
翼咲は未だ千須佳と一緒にいることに対し緊張していると話す。
「何となく察してはいました。だから親睦会を提案したところもありますし。」
風布花は翼咲が未だ千須佳の前でぎこちない態度を取っていたことを気にかけていた。
「ありがとう、風布花ちゃん。」
翼咲は風布花に感謝する。そんな会話を交わしながら、二人は帰路を辿っていた。そして二人の会話を杏がこっそり耳にしていた。
「千須佳さんがどこぞのJKとデート!?これは由々しき事態です!」
杏は千須佳が翼咲とデートすると思い、慌てるのだった。
そして親睦会当日、千須佳は風布花から教えられた百貨店の前で翼咲を待っていた。千須佳は女子高生の翼咲が一緒にいても恥ずかしくないように気を遣ってか、いつもより若々しい服装で来ていた。そして翼咲も百貨店に到着する。
「千須佳さん。」
「翼咲ちゃん。」
翼咲もいつもの制服姿ではなく、女子高生らしい私服姿を身に纏っていた。
「翼咲ちゃん、今日の服可愛いね。」
「ありがとうございます。私、人と私服で会うことあまりないからどの服にしようか迷ってしまって……。千須佳さんも今日の服可愛いですね。」
「ありがとう。私も何にするか迷ったんだよね。この服着るの久々だったんだけどまだ着られて良かったよ。」
千須佳と翼咲は互いに服を褒め合う。しかしそんな二人の会話はどこかぎこちなかった。
「それじゃ、行こうか。」
「あ、はい。」
そして二人は百貨店の中に入るのだった。
二人は百貨店の中の文房具店に入り、ボールペンなどを物色していた。
「翼咲ちゃん、ボールペンとか好きなの?」
「はい、というより友人との外出が少ないので服より文房具の方が落ち着くというか……。」
「そうなんだ。」
千須佳と翼咲は少しでも会話をしようとするが、なかなか弾まない。そんな二人の様子を、風布花が遠くの物陰から密かに覗いていた。
「もう、二人とも固いなぁ。次の戦士まであまり話さない人だったらどうしよう……。」
風布花は千須佳と翼咲の親睦会があまり上手く行っていないように見え、心配してしまう。
「何やってんだよ赤園。」
「え!?」
そんな時、風布花に話しかけたのは氷山雪大だった。雪大は水無西瓜を連れて百貨店へ来ていた。
「どうしたんですか氷山君?こんなところで。」
「何って決まってるだろ、休日なんだから西瓜を連れて買い物だよ。」
「小学生を連れてお出かけですか?悪い遊びを吹き込むつもりじゃないですよね?」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇよ!」
風布花が雪大に何をしているのか尋ねると、雪大は西瓜を連れて買い物に来たと話す。風布花は雪大が小学生に悪い遊びを教えるのではないかと軽口を叩く。
「雪大さんは悪いことをする人じゃないです。」
「ほら、西瓜もこう言ってくれているんだぞ。」
「まあ、そう言うなら良いですけど……。」
西瓜は雪大を庇うように言う。風布花も西瓜の言葉に納得せざるを得なかった。
「そういうお前こそここで何やってんだよ。こそこそしやがって。」
一方の雪大も、風布花に何をしているのか尋ねる。
「私は見守っているだけです、二人の親睦会を。」
「親睦会?」
風布花は親睦会を見守っていると話し、千須佳と翼咲が買い物を楽しんでいる様子を指差す。
「あれは千須佳さんと、桐月?」
「本当だ……。」
雪大は千須佳と翼咲が買い物している様子に首を傾げる。
「何であの二人が親睦会をする必要があんだよ?」
「こっちにはこっちの事情というものがあるんです。」
雪大はなぜ千須佳と翼咲が親睦会をしているのか風布花に尋ねるが、風布花ははぐらかすように答える。
「二人ともぎこちないんですよ、だから心配で。」
「お前が心配することじゃなくね?」
風布花は千須佳と翼咲の関係がぎこちないために心配で見守っていると話すが、雪大はその行動論理すらも理解できなかった。そして風布花は、もう一つの懸念点を話す。
「それに、千須佳さんにはストーカーもいますから邪魔して来るのではないかと。」
「千須佳さんにストーカーがいるんですか?」
風布花は千須佳のストーカーについて心配していた。西瓜は千須佳のストーカーがいるのかと驚くが、風布花が考えているのは杏のことだった。
「いるんですよ、小学生の女の子なんですけど。」
「もしかして、仁科さんのこと?」
「ああ、あいつか。」
西瓜は風布花の言っている人物が杏だと察し、雪大も理解する。
「確かにあいつは千須佳さんにべったりだったけど、こんなところまでついて来るほど暇じゃねぇだろ。」
しかし、雪大は杏が千須佳を追いかけて百貨店まで来るはずがないと高を括る。そう思った矢先、千須佳を虎視眈々と狙う目で見つめる杏の姿を見つける。
「「「いた。」」」
雪大、西瓜、風布花の三人は声を揃えて驚いてしまう。そして杏は千須佳と翼咲の元に行く。
「あ、やっぱり邪魔をする気です!」
風布花は慌てて杏を止めようとするが、それを雪大が止める。
「待てよ赤園。」
「何ですか氷山君!?」
「相手は小学生だぞ。確かにあいつは可愛くねぇけど千須佳さんなら適当にあしらってくれんだろ。」
雪大は杏が邪魔をしようものなら千須佳が上手くあしらうと踏んでいた。それ故に引き留められてしまう風布花だったが、その予想は儚くも外れることとなる。
「あ、杏ちゃん、奇遇だね。」
「千須佳さん、どうしてこの私を差し置いてどこぞのJKとデートなんかしてるんですか?」
「え?」
千須佳は杏に話しかけられ偶然の再会を喜ぶが、杏は千須佳が翼咲と一緒にいることを問い詰める。
「杏ちゃん、今日は翼咲ちゃんとお買い物に来ていてね。」
「そんなことは認めません!そこのJKさんは今すぐ千須佳さんから離れて下さい!」
「えっと……、離れた方がいいんですか?」
「翼咲ちゃん、そこは聞かなくてもいいんじゃないかな?」
千須佳は翼咲と買い物に来ていることを話すが、杏は聞き入れようとしない。そして翼咲を千須佳から引き離そうとする杏に、翼咲は戸惑ってしまう。
「あぁ〜……悪りぃ赤園、やっぱあれは見てられねぇな。」
「行きましょう、雪大さん。」
「あ、やっぱり行くんですか?」
杏が明らかに千須佳と翼咲の邪魔をして困らせている様子を見て、雪大は杏を止めようと考えを改める。西瓜も雪大に賛同し、共に杏の元に行く。
「ほら、早く離れて下さい!」
「お前が離れろ。」
翼咲を千須佳から引き離そうとする杏を、雪大は腕を抱えて持ち上げる。
「なっ、いつぞやの不良高校生!離して下さい!」
「しつこいよ、仁科さん。」
「西瓜先輩まで!」
杏は雪大に腕を掴まれ、必死に抗う。西瓜はそんな杏の様子を一喝する。
「雪大君に西瓜君。」
「うっす。」
「あ……、ご無沙汰してます。」
千須佳は現れた雪大と西瓜に軽く驚く。雪大は軽く会釈するが、西瓜は千須佳に話しかけられ思わず赤面してしまう。
「千須佳さん、あの……、今日の服綺麗ですね。」
「ありがとう、西瓜君。」
西瓜はいつにもまして可愛い恰好をした千須佳に赤面し、そのことを褒める。千須佳もそれが嬉しくなり答える。
「若作りっすか、千須佳さん。」
「うるさいな。今日は翼咲ちゃんとお出掛けだから気を遣ったの。」
「私のためにわざわざすみません……。」
「ああいや、翼咲ちゃんは気にしなくていいから。ごめんね。」
雪大は千須佳の恰好を若作りと揶揄し、千須佳は反発して翼咲に気を遣ったと言う。しかしそれが逆に翼咲に気を遣わせてしまい、千須佳は謝る。
「桐月。」
「あ、何?氷山君。」
そして雪大はふと翼咲に話しかける。
「千須佳さんと何繋がりか知らねぇけど、楽しめよ。俺はこんなガキの邪魔が入らねぇようにすっからよ。」
「あ、ありがとう……。」
雪大は翼咲に千須佳との親睦会を楽しむよう言う。翼咲はそんな雪大の優しさに感動するのだった。
「よし、俺達は向こうで遊ぶか。」
「いい加減離して下さい!この変態、スカートの中を覗かれたら訴えますからね!」
「もう、大人しくしたら離してもらえるんだから仁科さんこそいい加減にしてよ。」
そして雪大は杏を抱えたまま離れる。まだ杏は抗おうと足をバタバタさせるが、西瓜が宥める。
「それじゃあ翼咲ちゃん、あっちは雪大君に任せて買い物の続きをしよう。」
「あ、はい。」
千須佳と翼咲はまた親睦会を続けるのだった。
一方、人間界に来ていたゴーヤイドもたまたま同じ百貨店を訪れていた。
「さてと、悪意を持った人間を探すか。」
ゴーヤイドは百貨店の中でマリスを産み出すための悪意を持った人間を探す。
「よし、今の内だ!」
「へいっ!」
するとこそこそと話しながら万引きを試みようとする男二人組を見つける。
「お?」
ゴーヤイドはその二人組の悪意に目を付ける。
「おっとそこのお二人さん、悪いことをする前にその悪意を寄越してくれないか?」
「あ?……って怪物!」
ゴーヤイドは男達の元に現れ、話しかける。男の一人はゴーヤイドを睨みつけるがゴーヤイドの姿に驚く。
「ふん、早速頂くぜ!」
ゴーヤイドは男二人の頭に手を翳し、黒いオーラを出す。そしてオーラの中からマリスが現れる。
「よーし、こいつでこの店を荒らしてやるか。」
ゴーヤイドがマリスを連れて百貨店を荒そうと意気込んだところに、何故かエスプレッソが現れる。
「おやおやゴーヤイドさん、手助け致しましょうか?」
「は?何でお前がここにいんだよ?」
ゴーヤイドはエスプレッソが突然現れたことに疑問を抱くが、そんなことはお構い無しにエスプレッソは手を振り翳す。すると、マリスとは違う大量の怪物が現れる。
「何だこいつら?」
「魔物というものです。」
エスプレッソはその怪物達を魔物と言う。
「まあいいや、こいつらでケールスの弔い合戦だ。」
ゴーヤイドはあま深く考えず、エスプレッソの出した魔物でケールスの弔い合戦をしようとする。そう意気込むゴーヤイドを見てエスプレッソは不気味な笑みを浮かべるのだった。
一方その頃、雪大は杏を抱えたまま西瓜と共に千須佳らから離れていた。
「よし、ここなら大丈夫だろう。」
雪大は漸く杏を降ろす。
「全く、レディをこんなところまで運んでただじゃおかないですからね。」
「お前が千須佳さん達の邪魔をしなけりゃこんなことにはならなかっただろうが。」
杏は自分を無理矢理運んだ雪大を責めるが、雪大は逆に千須佳らの邪魔をした杏を責める。
「仁科さん、雪大さんの同級生の人から千須佳さんのストーカーって思わてたよ。」
「ストーカー?どこぞのJKが私と千須佳さんの何を知っているというのですか?」
西瓜は杏に、風布花からストーカーと思われていることを話すが、杏は自分の行いを改める気配がなかった。
「はぁ……、何だこいつ?」
「すみません雪大さん、僕の学校の人が。」
雪大と西瓜は杏に呆れてしまう。そんな時、人々の悲鳴が響き渡る。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
人々はマリスと魔物に逃げ惑っていた。
「おい、こんな時に。」
「雪大さん、どうしましょう。」
雪大と西瓜は突然のマリスと魔物に戸惑う。
(これはさっさとチーズレーザーになった方がいいですね、不良高校生と西瓜先輩には悪いですが……。)
杏はチーズレーザーになるため、雪大と西瓜から離れることを決める。
「あ、あんなところにUFOが!」
「は?」
「え?」
杏は咄嗟にUFOが出たと嘘を吐く。雪大と西瓜は思わず釣られて杏の指差した方向を向く。
「おい、いねぇじゃねぇか。」
「仁科さん、怪物も出てきてるんだからUFOって嘘も洒落にならないんだよ。」
勿論UFOなどいるはずもなく、雪大と西瓜はまた呆れながら杏に言うがそこに杏の姿はなかった。
「あれ、仁科さん?」
「あいつ、一人で逃げやがった!」
杏は二人が視線を外した隙に逃げてしまった。
「まあいいや、あいつのことも心配だが俺達はまずチーズレーザーだ。」
「そうですね。怪物も沢山出てきているみたいですし。」
しかし、雪大と西瓜は杏に逃げられたことで逆にチーズレーザーになることができると考える。
「よし西瓜、安全なところに隠れて準備するぞ。」
「はい!」
そして雪大と西瓜の二人は指輪を嵌めるために安全なところに逃げるのだった。
「はぁはぁ、あの二人を撒けたのはいいけどなかなか安全な場所がないよ〜。」
一方で、杏も指輪を嵌めるために安全な場所を探していたがなかなか見つからなかった。
「しょうがない、あそこのベンチで。」
杏はなんとかマリスと魔物から離れたところで見つけたベンチに座って指輪を嵌めるのだった。
「翼咲ちゃん!」
「行きましょう、千須佳さん!」
千須佳と翼咲の二人も大量の怪物に囲まれた中で、背中合わせになる。
「エルフ!ダイヤモンド!チーズケーキ!」
「朱雀!ガーネット!桜餅!」
二人はそれぞれそう叫びながら指輪を嵌め、ブレスレットを出現させる。そしてダイヤルを回して矢印を合わせる。
「It’s so sweet!」
「スイートチェンジ!」
「もちもちチェンジ!」
そう叫びながらブレスレットのディスクを勢いよく回すと、二人は戦士の姿になる。
「濃厚な甘美、チーズレーザー!」
「もちもち食感は桜の香り、ブロッサムファイヤー!」
チーズレーザーとブロッサムファイヤー、二人の戦士はそれぞれ名乗る。
「あの、私の名乗りどうでしょうか?考えてみたんですけど。」
「うん、いいと思うよ。」
ブロッサムファイヤーは考えていた名乗りに自信を持てず、チーズレーザーに尋ねるがチーズレーザーは特におかしくないと答える。
「行くよ!」
「はい!」
そしてチーズレーザーとブロッサムファイヤーはマリスと魔物に立ち向かう。
「はぁぁ!」
チーズレーザーは華麗にレーザー銃で魔物を撃ち抜く。
「はぁぁ!」
ブロッサムファイヤーは徒手空拳で魔物を圧倒する。しかし、それでも魔物の数は多かった。
「キリがない!」
チーズレーザーは魔物の多さに辟易する。
「俺がやる!」
「任せた!」
そこに流馬が交代を申し出て、千須佳はブレスレットのダイヤルに手を添える。
「「ユニコーン!ルビー!ティラミス!」」
千須佳と流馬はそう言いながらブレスレットのダイヤルを赤い矢印に合わせる。
「It’s so sweet!」
「「ほろ苦チェンジ!」」
そしてブレスレットのディスクを回し、チーズレーザーはアタックソードに姿を変える。
「ぶった斬るぜ!」
チーズレーザー・アタックソードはそう啖呵を切り、日本刀を腰に携え構える。
「おりゃぁぁ!」
そして居合斬りをするように魔物を斬る。その後も魔物を次々と斬り飛ばす。
「ふぅ……、ここまで雑魚がいっぱいいれば暴れんのも爽快だな。」
「ちょっと、世界を守るために戦ってるんだからね。」
戦いで鬱憤を晴らしているような口振りの流馬に、千須佳はあくまで世界を守ることが目的と諭す。
「わかってるよ……、ん?」
千須佳の小言に辟易する流馬だったが、ふとベンチに横たわっている杏の姿が目に入る。
「あのガキ、何でこんなところで寝てやがるんだ?」
チーズレーザー・アタックソードは杏の姿に驚く。
(しまった、安全なところに隠れたつもりだったのに!)
杏は精神の抜けた自身の姿を見ながら焦ってしまう。杏は安全な場所に身を匿うつもりが、いつの間にかその場所まで戦闘の領域が広がっていた。
「あの、私に代わって下さい。早く!」
「あ?何だよそんな焦りやがって。」
杏は流馬に、自身に代わるよう言う。流馬は杏の鬼気迫る物言いに戸惑うが、言われるがままダイヤルに手を添える。
「「フェアリー!パール!杏仁豆腐!」」
チーズレーザーはそう叫びながらダイヤルを白い矢印に合わせる。
「It’s so sweet!」
「「ふわふわチェンジ!」」
そしてブレスレットのディスクを勢いよく回し、チーズレーザーはキューティーウイングになる。そのままチーズレーザー・キューティーウイングはブロッサムファイヤーの元に駆け寄る。
「ブロッサムファイヤーさん、あそこに可愛い可愛い女の子が倒れているので安全な場所に移動するために申し訳ありませんがここを頼みます!」
「え?あ……、わかりました。」
チーズレーザー・キューティーウイングはブロッサムファイヤーにマリスと魔物の対処を懇願する。ブロッサムファイヤーは困惑しながらも承諾する。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!」
チーズレーザー・キューティーウイングはヤバいを連呼して焦りながら杏の体を抱えて百貨店の外に連れ出す。そして怪物の影がない外のベンチに横たわらせる。
「危なかった〜!」
チーズレーザー・キューティーウイングはとりあえず安心してまた百貨店に戻るのだった。
大量の怪物を前に苦戦を強いられていたブロッサムファイヤー。
「はぁはぁ、数が多いな。」
ブロッサムファイヤーはどんどん体力が削られていた。そんな時、二階のフロアから飛び降りて魔物に斧を振り下ろす戦士が現れる。
「え?」
その戦士はアクスマロールだった。アクスマロールもこの事態に駆けつけていた。
「アクスマロールさん……。」
ブロッサムファイヤーは突然現れたアクスマロールの姿に困惑する。
「はぁぁ!」
そしてアクスマロールは斧をブーメランのように振り回し、魔物を一掃する。
「あの、アクスマロールさん。」
ブロッサムファイヤーは勇気を振り絞ってアクスマロールに話しかける。
「……俺はこれで。」
しかしアクスマロールは話をしようとせず、軽く会釈をするとその場を離れてしまう。
「ああ……。」
ブロッサムファイヤーは嵐が過ぎ去ったような感覚に駆られる。そんな中、チーズレーザー・キューティーウイングが戻って来る。
「お待たせしました!」
「あ、お帰りなさい。」
チーズレーザー・キューティーウイングは戻って来ると張り切った様子でブレスレットを構える。
「ご迷惑をお掛けした分は一気に取り返します!」
チーズレーザー・キューティーウイングはそう言うとブレスレットのディスクを勢いよく回す。そしてステッキを出して大きく振る。
「可愛い可愛い何ちゃらスプリンクラー!」
ステッキから大きな光の膜がマリスや魔物達の頭上に広がる。そして光の膜から光線が降り注ぎ、怪物を一掃する。マリスも魔物も、百貨店を襲った怪物は全て消滅してしまう。
「よし、広範囲攻撃なら一気に潰せる。作戦成功です。」
「そんなのがあったんですね……。」
ブロッサムファイヤーはチーズレーザー・キューティーウイングの隠し持っていた技に思わず苦笑いする。
「これはここぞという時だけです。」
チーズレーザー・キューティーウイングはそう言うと指輪を外し元の千須佳の姿に戻る。ブロッサムファイヤーも元の翼咲の姿に戻る。
「翼咲ちゃん、大丈夫だった?」
「はい、なんとか。アクスマロールさんも助けてくれたので。」
「アクスマロール?」
千須佳は翼咲を気遣い話しかける。翼咲はアクスマロールが助けてくれたことを明かす。
「ここに来てたんだ、でもお陰で助かったね。」
「はい。」
千須佳はアクスマロールが翼咲を助けてくれたことに安心するのだった。
「は!」
杏はチーズレーザーに運ばれたベンチで目を覚ます。
「いけないいけない、戦っている時の自分の体の管理ができていなかった。」
杏は精神の抜けた自分の体を危険に晒したことを反省する。そして杏はあることを思いつく。
「そうだ、今百貨店に戻ればチーズレーザーの正体がわかるかも。」
杏はすぐさま百貨店に戻る。先ほどまで百貨店で戦っていたチーズレーザーの元の姿を確認できると踏んだからだ。幸い、チーズレーザーとブロッサムファイヤーが一緒に戦っていたことも大きな手掛かりとなっていた。
「ブロッサムファイヤーの正体は確か千須佳と一緒にいたJK、ということはチーズレーザーの人も今一緒にいるかも。」
杏は翼咲がブロッサムファイヤーの正体であることも知っていたので、戦いを終えた直後なら一緒にいるはずと考えていた。そして杏は百貨店に戻り、先ほどまで戦っていた場所に行く。
「チーズレーザー!」
杏が勢い余ってチーズレーザーの名を叫んだ所にいたのは、千須佳と翼咲だった。
「杏ちゃん、大丈夫だった?」
千須佳は無事に戻ってきた杏を心配する。
「は、はい……。」
杏はいつの間にか翼咲が千須佳と合流していることに戸惑う。
(チーズレーザー、どこかに行ったのかな……?)
杏はチーズレーザーの正体がどこかに行ったと勘違いし、辺りを見回す。
「杏ちゃん、どうかした?」
「い、いえ……。」
千須佳は杏の挙動不審な様子を気にかけるが、杏は戦士のことを知られたくないため誤魔化す。するとそこに雪大と西瓜も合流する。
「おい、こんなところにいやがったのか。」
「仁科さん、また千須佳さんの邪魔をしてるよ。」
雪大と西瓜は杏がまた千須佳の邪魔をしているのかと思い呆れる。
「雪大君、西瓜君。杏ちゃんと一緒じゃなかったの?」
「怪物が出た時にこいつが一人だけ逃げ出したんですよ。」
「そうだったんだ……。」
千須佳は雪大と西瓜が杏を連れていたことを思い出し一緒にいなかったことを尋ねるが、雪大は杏が逃げ出したと話す。
(杏ちゃんがベンチで倒れてた時はびっくりしたよ……。)
(ったく、あんなところで寝ていやがって。)
(仁科さん、危なっかしい人だなぁ……。)
千須佳、雪大、西瓜は杏がベンチで横たわっていたことで彼女を心配するのだった。
(はぁ、ベンチで抜け殻になっていたところを千須佳に見られていなくて良かった。)
杏はベンチに横たわっていた姿を千須佳に見られなかったと胸を撫で下ろすが、しっかりと見られていたことに気づくはずもなかった。
「まあとにかくさ、みんな無事で良かったよ。」
「そうですね。」
何はともあれ、皆が無事で安心した千須佳と翼咲。そして千須佳はある提案をする。
「よし、みんなでご飯に行こうか。奢るよ。」
「いいんですか千須佳さん?やったー!」
千須佳は皆を食事に誘う。杏は千須佳と食事ができると喜ぶ。
「いいんすか千須佳さん?親睦会の方は。」
「いいよ、わざわざまた翼咲ちゃんと二人だけになる理由もないし。」
「そうですね、もうこんなに集まりましたし。」
雪大は千須佳と翼咲の親睦会を気にするが、千須佳も翼咲も二人だけの親睦会に拘っていなかった。
「だとよ西瓜、ここは千須佳さんに甘えようぜ。」
「は、はい。えっと、ご馳走様です。」
西瓜も言葉を詰まらせながら千須佳の誘いに乗る。そして千須佳、翼咲、雪大、西瓜、杏の五人は百貨店を出る。
五人で並んで歩いている間、雪大は翼咲に対してふと思うことがあった。
(そういえばチーズレーザーになった時、もうブロッサムファイヤーがいたな……。もしかして桐月の奴、戦士になる前からもうチーズレーザーの人と合流していたのか?)
雪大は翼咲がブロッサムファイヤーになる前からチーズレーザーの正体の人物と会っていたと察する。実際翼咲はチーズレーザーである千須佳とずっと一緒にいたため、その推測は間違っていなかった。
(くっそ〜、一体チーズレーザーはどこの誰なんだ。)
しかし、そこから千須佳に疑いの目を向けることは決してなかった。そして雪大にはもう一つ気になることがあった。
(そうだ、あと誰か忘れている気がするな……、まぁいっか。)
雪大は誰か一人足りない気持ちが一瞬よぎるが、特に気に留めることはなかった。
「あれ……、千須佳さんも翼咲さんもどこに行ったんだろう……?」
五人が百貨店を出た後、風布花は皆を見失ってしまい百貨店を彷徨っていたのだった。
一方その頃、マリスを倒されたゴーヤイドはダークビタビターズの本拠地に戻ろうとしていた。するとそこにエスプレッソが現れる。
「あら、また負けてしまいましたか。」
「ふざけんな!お前が出した魔物って奴、数が多いだけで雑魚ばっかじゃねぇか。」
エスプレッソは負けたゴーヤイドを煽るように話しかける。しかしゴーヤイドは、エスプレッソが召喚した魔物の弱さを責めていた。
「仕方がありません、次こそは戦士を一網打尽にしましょう。」
「調子良いこと言いやがって。まあいい、一度戻るぞ。」
ゴーヤイドはエスプレッソの言い分が気に食わなかったが、あまり長く怒ることも無く本拠地に戻ろうとする。しかし、そんなゴーヤイドの背後をエスプレッソが闇のオーラで突き刺す。
「ゔっっ……!」
「あらあら、背中を向けてしまいましたねゴーヤイド先輩。」
エスプレッソは苦しむゴーヤイドに不気味な笑みを浮かべながら煽る。
「お前、何の真似だ……!」
「地獄への一方通行ですよ。」
「ふざ……、けん……、な……。」
エスプレッソは地獄への一方通行とだけ言い、ゴーヤイドの消滅を濁った目で見つめる。
「さて、幹部の数はコンパクトにしなければいけませんね。我々の崇高なる目的のためにも。」
エスプレッソはそう言い残し、人間界を去るのだった。
お読み頂きありがとうございます。作者のロマンス王子です。今回を以て第一章完結及び一旦更新終了となります。第二章分の執筆が整いましたら再開しようと思います。その間は前作前々作をお読み頂けると幸いです。




