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【書籍化】エアボーンウイッチ~異世界帰りの魔導師は、空を飛びたいから第一空挺団に所属しました~  作者: 呑兵衛和尚
Seventh Mission~最終決戦、そして地球の命運は

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You Make Me Feel Brand New(死者蘇生と修復の違い)

 死者蘇生。


 これは神の御業の中でも奇跡に等しい。

 というのも、肉体から離れた魂は【冥界】へといざなわれ、そこで再び現世界へと転生すべく様々な試練が与えられる。

 ちなみにですが、死者の魂ってまだ生前の自我は残っているのですよ。

 これが死後、冥界で3つに分割されたのち、新たな肉体へと転生するのです。

 ちなみにですが、女性が子を宿す場合。

 夫の魂のコピーを1/3、妻の魂のコピーを1/3ずつ受け継ぎます。

 そして最後の1/3は冥界で分割された『誰かの魂』を受け継ぐのですが、これらの魂が一つになりマーブル状に混ざり合ったものが、新たに生まれる魂なのです。

 

 このマーブル状態の魂は新たな個となるべく、ゆっくりと進化を始めます。

 それは外界から得る情報、夫婦から得る情報など、様々な環境により個体が形成されるのですが、ひとつだけ特例事項があります。

 それが、マーブル状態の中に存在する『誰かの1/3』。

 本来ならばこれも溶けて混ざり合い、自我など存在しなくなるのですけれど、ごくまれに自我が残ったまま個体として形成される場合があります。


 これが、『転生』と呼ばれる事象。


 昨今、異世界転生などといった現象の多くは、これが原因であると冥界の神々がぼやいていたそうです。ええ、私は聞いていませんよ、ヨハンナから教えてもらったのですから。

 この死者と転生に纏わる物語だって、ヨハンナから教えてもらったものであり、そのヨハンナも冥府の神から直接聞いたというので間違いないでしょう。

 ちなみに、一定の年齢に達した後、生前の記憶が蘇るというのもこれらの事象に含まれているそうで、完全に混ざり切っていなかった『誰かの1/3』が表層に現れるといったところだそうです。

 以前どこかで誰かに説明したと思いますが、今回はもっと噛み砕いて説明しています。

 あれ。誰に説明していたかしら?


………

……


「……とまあ、人の魂の再生という事を説明する為に、まずは魂の形成についての講義を行ったのですけれど、ここまではオッケーですか?」


 現在、私は五稜郭迷宮一層最深部にあった『元・安全地帯』にて、南雲皐月さんに魂の形成についてのレクチャーを行っています。

 というのも、これから南雲さんに行ってもらうのは、私もまだ経験したことがない………というか、古い文献でしか見たことがない秘術。その成功率を少しでも高めるため、魂の構成と転生、そして命とは何かというレクチャーを行っていました。


 なお、ドイツの諜報員はアスカが見張りの真っ最中。

 まあ、あの様子だとあと5時間は意識が戻らないでしょうから、それまでは余計な手出しはないと思います。


「……うう、すっごく判りやすく説明してもらったので、命の誕生と魂の形成については理解しました、いえ、理解は出来ていないのかもしれませんが、理屈は理解しました」

「それでいいわ。貴方は聖女でも巫女でもない。だから魂に携わるっていう事は、そうそうあってはいけないから。ただ、今回はそれを知るという事で実践して貰うっていうだけのこと。まあ、私の保身もあるのですけれどね……と、それじゃあ、先に教えた魔力循環の術式、外部魔力の吸収は大丈夫?」

「それが………どうしてもうまくいかなくて」


 ふむ。

 ということは、体が馴染んでいないのか、或いは別の要因か。

 とりあえず、呼び水があればどうにでもなりそうだから……。


「アスカ、一旦南雲さんの中に戻ってもらえる? あなたなら、外部魔力の吸収も循環も可能でしょうから、南雲さんに手伝ってあげてくれる? 後は……そうね、それが出来たら実践に入るので」

『はいにゃ!! それではフロイライン・ナグモ、合体するにゃ!!』

「えええ、合体ですか!!」


――スパァァァァァァァァァァァァァァン

 そんなアニメチックな表現をするアスカの後頭部にハリセン一発。

 そして南雲さんも乗らない、合体なんてしないから。


「はいはい、とっととやる。急がないと、そろそろ非常線内部の調査に警察も動きそうだから」

『わかったにゃ!!』

 

 シュルルッとアスカが南雲さんの手の甲にある肉球痣へと吸い込まれていく。

 そしてさっそく魔力循環を始めたようで、南雲さんが真っ赤な顔で体をもぞもぞと動かしている。

 うん、外から見ると、この『初めての魔力操作』ってくすぐったいのですよねぇ。

 全身を羽根箒で撫でられるような感触という人もいれば、猫のお腹を吸う快感という人もいる。

 まあ、しばらく待っていると安定するでしょう……と言っているそばから南雲さんがようやく落ち着いたので、レクチャー再開。

 目に魔力を集めてみると、以前よりもはっきりと彼女の体内で魔力が綺麗に循環しているのが判る。

 それと、体表面、正確には魂外縁部から体表面に伸びる『魔力節』が呼吸をするように魔力を吸い込んでいるのも確認。私たち魔導師は髪の毛で魔力吸収を行うのだけれど、彼女は体表面に接続してしまったらしい。

 ま、後で調節すればいいのでとりあえずはよし。


「どう? 今までよりも魔力を感じるようになったでしょう?」

「は、はい……なんていうか、体の中が熱くて。それでいて冷静な自分がいて」

「魔導師の平均体温は37度ぐらいに高まる人もいるからね。まあ、慣れてくると自然と収まって来るでしょう。さて、それじゃあ、南雲さんの力を解放してみましょうか」


 そう告げた後、足元に転がっている『破れた布』を手に取る。

 これは先程の被害者が身に付けていたもので、彼の血も染みついている。


「南雲さん、この衣服の修復を試してみて。使う術式は分かるかしら?」

「は、はい。修復術式(レストレーション)というものですね。今まではなんとなく使っていましたけれど、今ははっきりと頭の中に術式が構築されています」

「結構。それじゃあ、これを修復してみて。服だけじゃなく、その血液の主人である死者の魂も」

「え……」


 うん、驚くのは無理もないけれど、これって段階を踏む必要はないのよねぇ。

 だって、修復術式(レストレーション)の術式を唱えた時点で、修復対象を選択するだけだから。

 それを彼女も理解しているのか、すぅーっと深呼吸をしたのち、震える手で布切れを手に取ると、ゆっくりと詠唱を始める。

 それはとてつもなく長い詠唱のようで、実は一分にも満たない。

 魔術言語による、超圧縮術式の簡易解放。

 私にもちょっと難易度の高い術式構築を、南雲さんは既に理解しているようで。

 うん、やはり


――フワッ

 やがて、ボロボロだった布切れは静かに修復を開始。

 無の状態から、魔力により素材を構築。それらを『残っている存在の持つ記憶』を頼りに再構築。

 これで衣服の修復は完了。

 そしてそこに付着している血液から、その者の魂の記憶を読み込む。

 膨大な魂の図面を一瞬で再構築すると、それをもとに魔力により欠損魂の修復、そこから器となる肉体を『遺伝子レベル』での修復を開始。

 全てが光輝く球形の結界の内部で行われているので、彼女にはその内部で何が起きているのか理解出来ません。でも、私には見えます。

 結界内部で、血液から修復されている人体が。

 それも沸騰したようにブクブクと泡立つ血液と羊水の混合液のようなものに包まれて、心臓と脳細胞、神経節といった人体が組み上げられているのを。


「はは、ちょっとしたオカルト映画だわ」

『……弥生さま、私の魔力がエンプティ』

「ま、そうでしょうね……と、七織の魔導師が誓願します。我が手に魔力の塊を生み出し、彼の者に譲渡したまえ……我はその代償に、魔力150000を献上します。魔力譲渡(トランスファー)


――ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 私からアスカへ魔力を譲渡。

 そしてアスカの肉球痣から南雲さんへ魔力を開放。

 これで魔力枯渇は無くなりました。

 ええ、南雲さんも外部魔力を吸収しているのですけれど、それよりも消費魔力が多いので今回は仕方ありません。

 その代わり、これで彼女の魔力の器は大きくなりますので結果オーライというところでしょう。


――シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 南雲さんが術式を起動してから15分後。

 無事に修復は完了。

 結界も輝きを失い、その内側が見えるようになりました。

 ええ、あのとんでもユーチューバーが生きています。

 しっかりと再生は完了し、私の鑑定でも問題なく生きていることが確認できました。


――ヘタリッ

 そして腰が抜けたように、南雲さんがその場に座り込んでしまいます。


「あ、あの、如月さん……私はどうだったのでしょうか、いえ、その人は生き返ったのですか?」

「生き返ってはいないなぁ。すべて元通りに修復したっていうところかしら。死者を蘇らせるには、神の力による死者蘇生が必要。でも、あなたの能力では死者蘇生はできない。貴方は、彼を構築していた物質の残滓から、彼を再構築しただけ。地球の法則性や倫理観で答えを出すと死者蘇生だけれど、魔術学や神秘学的には、『死者の魂を再構築し、複製を作り出した』だけに過ぎない。ここまでは分かる?」


 淡々と説明すると、南雲さんも何とか理解出来たようです。

 

「私の能力では、彼の死というものは覆す事は出来ない。でも、彼を元通りに修復してこの世界に呼び戻す事が出来た……いえ、作り直せたという事ですね」

「そ。だって、彼の魂は冥界に届いていると思うから。そして、今、目の前に存在する彼にも魂は存在する。後で冥界の神々に説教されそうなので、南雲さんは今後、私の許可なく死者の修復をする事を禁じます。貴方の師匠である七織の魔導師・如月弥生の名において」


 そう告げると、南雲さんはようやく理解してくれたようです。


「はい。これからよろしくお願いします、私は一織の魔法訓練生として、七織の魔導師・如月弥生さんに弟子入りします」

「結構。では、契約を……」


 ついでに、私の新たな弟子として彼女と契約します。

 うん、小笠原1尉のように成り行きで弟子入りさせたのではないので、ここで彼女に杖と無垢の魔導書を手渡し、そこに私と彼女の魔力を登録して契約は完了。

 ついでにマジックバッグと魔法の箒も渡し、この場で契約を結んでもらいます。

 まあ、それ以外の物品については、追々作り方を教える事にしましょう。


「さてと。それじゃあとっとと地上に戻りましょうか。あと、彼を再生したのは私の所持している魔導具によるものであり、もう予備はないので死者の蘇生は出来ないという事で口裏合わせをよろしく」

「はい、了解しました」

「あとは……南雲皐月に命じます。修復術式による死者の修復についての秘密の全てを秘匿し、口外しないよう。七織の魔導師・如月弥生の名において禁じます……制約(ギアス)


 彼女の額に指を当てて、修復術式(レストレーション)により死者再生についての秘密を秘匿するように魔術による制約を行いました。

 これで秘匿情報は彼女の口や意識から零れる事はありません。

 まあ、使用を魔術により制約したのではないので、使う気になれば使えるのですけれど。

 それは禁止しませんよ、後は彼女の意思に任せる気ですから。


 さて、どうせ地上では面倒臭い事になっているのでしょうから、とっととこいつを医療班にでも渡してしまいますかねぇ。

 それに、あのプレートに記された言葉も伝えないとなりませんからね。 


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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