表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱庭の百合  作者: Kibana
薄明時に星をみる
44/45

第三話 二度目

2024年11月20日 ??:??

 ――ぽたり。


 剥き出しの配管から落ちた冷たい水滴が額を打つ感覚で、翼はゆっくりと重い瞼を押し上げた。

 視界に飛び込んできたのは、つい先ほどまで自分たちを見下ろしていた杉浦の顔でも、清潔な病室の真っ白な天井でもなかった。

 無機質で、薄汚れたコンクリートの壁。不規則に立ち並ぶ雑居ビルの隙間から、細長く切り取られた空。

 夢見ヶ原市六丁目の、あの薄暗い路地裏だった。


「……ッ、ここは……?」


 翼は弾かれたように跳ね起き、周囲を見回した。

 全身の血液が逆流するような、強烈な目眩と吐き気が襲ってくる。つい数時間前、病室のベッドの上での杉浦との会話をし、黄花百合について布団の中で自問自答していた時間からの記憶が完全に断絶している。

 自分のすぐ横の冷たいアスファルトには、同じようにして倒れ込んでいた天下崎、結衣、そして凪が、次々と苦痛の呻き声を上げながら身を起こし始めているところだった。

 だが、彼らの目に映る世界は、決定的に狂っていた。

 時間が、完全に凍りついているのだ。

 風の音も、遠くの車の走行音も、一切聞こえない。宙を舞っていたはずの埃や小さな枯れ葉が、まるで透明なゼリーの中に閉じ込められたかのように、空中でピタリと静止している。

 さらに、その路地裏は完全に色を失っており、モノクロのような世界が広がる中、空だけが極彩色の虹色が覆い尽くしている。


「おい……これはいったい、どういう悪夢だ。俺たちはさっきまで、病室のベッドの上で寝ていたはずだろ……。なんで路地裏に転がってんだ。それにこりゃ……」


「あの占い師と話していた場所……?」


 巨体を揺らして立ち上がった天下崎が、信じられないものを見るように、静止した空間を鋭く血走った目で睨みつけた。結衣もまた、その空間を見て、違和感を覚える。その光景を彼らが一度見たことのある場所だったからだ。

 六丁目の占い師から、ペンダントを受け取った空間。


「……! 服を、見てください……」


 凪が震える声で自身の身体を指差した。

 彼が着ているのは、病室での寝巻きではない。夢見ヶ原高校の制服を着た姿だった。


「これは……俺たちが五日前に、初めてこの路地裏へやって来た時の格好……?」


 翼が自身の着ているコートの袖を、力強く握りしめる。


「傷が……あの化け物どもにつけられた傷が、全部消えてやがる。まさか、今までの全部夢だった…なんて事はねえよな」


 天下崎が顔をさすりながら、低く唸った。深田の血の棘に肩を貫かれていた凪の傷も、天下崎の顔に無数に刻まれていたはずの切り傷も、翼の頬の傷も、綺麗に消え去っている。


「……残念ながら、違うみたいよ」


 結衣が、自身の胸元をギュッと握りしめた。

 四つのペンダント。

 凪の赤い石、天下崎の青い石、結衣の黄色い石。そして、翼の無色透明な石。

 この石だけが、彼らが絶望の死闘をくぐり抜けてきたという絶対的な事実を、残酷なまでに証明していた。


「……おはよう、夢見る探索者達よ」


 突如として。

 音が死に絶えた路地裏に、ベルベットのように滑らかで、しかし人間の声帯から発せられたとは思えないほど多重に反響する、妖しい女の声が響き渡った。


「ッ!」


 四人が一斉に声のした方へ振り返る。

 路地裏の突き当たり。つい数秒前まで誰もいなかったはずのコンクリートの壁の前に、一人の女が立っていた。

 漆黒の豪奢なドレスに身を包み、顔の半分を精緻な黒いヴェールで覆った、年齢不詳の女。

 若くも老いても見える、人間という種の枠組みから完全に逸脱した、妖しくも冒涜的な美しさを放つ存在。

 

「六丁目の占い師……?」


 翼が疑問視を挙げたのは、その姿が前回会った時の姿から乖離していた為だ。


「ああ、イメチェンみたいなものですよ。本質は変わらないので気にせず」


 人の心情を見透かすような言葉に、翼は目の前の存在があの占い師だと確信する。


「……どういうことか、説明してもらおうか」


 天下崎が一歩前に踏み出し、獲物を狙う猛禽のような鋭い眼光で女を射抜いた。

 その威圧的な態度をどこ吹く風と受け流し、女はヴェールの奥で、クスリと優雅に笑った。


「前回の活躍、とても素晴らしかったです。あの海底邪神の紛い物を打ち倒し、見事に生き残ってみせた。……しかし、あなた方が真に求めてきた答えは、見つけ出すことはできていないようだ」


「ふざけるな」


 天下崎が、太い首の筋を張って低く唸る。


「この狂った街の危険な調査を、なんのヒントもなしにほっぽり出した奴が何を言ってやがる。俺たちをゲームの駒とでも思ってんのか」


「……そもそも、あなたの目的は何なの?」


 結衣も、警戒心を露わにして女へと問い詰めた。


「私たちにこんなペンダントを渡して、恐ろしい化け物たちと戦わせて……私たちをどうしたいの?」


「……それは『ルール』に抵触するので、お話しすることはできません」


 女はゆっくりと首を横に振り、ヴェールの奥から底知れない瞳で四人をねめつける。


「ルール?」


 翼が思わず疑問の声を漏らす。


「何なのかは知らないが……」


 凪が、苛立ちと焦りを隠せずに一歩前に出た。


「あんたは『六丁目の占い師』なんでしょ? 訪ねてきた客に、求める答えを何でも教えてくれるのが、あんたの都市伝説の所以だったはずだ!」


 その凪の必死の抗議に対し、女は全く悪びれる様子もなく、ただ不気味に肩を揺らして笑った。


「ふふっ……前にも言ったでしょう。あなた方をこの盤上に呼ぶ事が、私の役割だと」


 女の放った身も蓋もない言葉に、四人は絶句する。


「さて……私があなた方に言えることは、極めて少ない。ただ一つ、言えることは……あなた方には『やり直す時間』がある」


 女は黒い袖から白魚のような指を突き出し、翼たちの胸元にあるペンダントを指差した。


「私が言えるのはそこまでです。前にも言いましたが、そのペンダントには、『虹』の加護があります。……では、今回でより真実へと近づけることを、期待していますよ」


 その言葉を最後に。

 女の輪郭が、ノイズの走る古い映像のように乱れ、静止した路地裏の風景の中へと完全に溶けて消え去ってしまった。


「待て……! まだ話は終わってねぇぞ!」


 天下崎が手を伸ばすが、そこにはもう何もない。

 直後。

 ――ブウンッ!!

 世界が激しく明滅し、強烈な耳鳴りが四人の鼓膜を暴力的に打った。

 完全に停止していた空間が、時間を取り戻す。

 頭上でピタリと止まっていた分厚い雲が、早送りの映像のように急激な速度で流れ始めた。虹色の空はいつの間にか、普段の青空へと変わる。太陽が西の空へと一瞬にして転がり落ち、路地裏はあっという間に、血のように赤い『夕暮れ』の光に染め上げられた。

 風が吹き抜け、路地裏のゴミ袋がカサカサと音を立てる。遠くの道路を走る車のエンジン音が、一気に押し寄せてくる。

 世界は完全に、通常の『現実』へとその姿を取り戻していた。


【2907/2921】


「はぁっ、はぁっ……何が、どうなってるんだ……!」


 翼は胸を押さえて荒い呼吸を繰り返す。

 強烈な既視感が、四人の脳を焼き切らんばかりに支配していた。

 結衣は震える手でコートのポケットを探り、自身のスマートフォンを取り出して画面を点灯させた。

 そこに表示されていた日付と時刻を見て、翼の心臓が不気味な音を立てて大きく跳ねた。


「……2024年11月20日、18時00分」


 天下崎が横から画面を覗き込み、低く唸る。

 四人が初めてこの六丁目の路地裏を訪れ、あの女からペンダントを受け取った、あの日、あの時間。

 

「もしかして、僕らまだ夢を見てるんじゃ……」


 凪が、『ありえない』という表情で顔を抓るも、しっかりとした痛覚が頬に伝わってくる。


「……!」


 その時、四人は同時に路地裏の奥――建物の角の向こう側から、複数の微かな『息遣い』が聞こえてくるのを察知した。

 戸惑う結衣や凪をよそに、翼はスマートフォンの画面を落とし、強い決意を込めて顔を上げた。


「……行きましょう」


 脳が混乱する中、翼の静かな、しかし確固たる言葉に、三人も無言で頷く。

 四人は足音を殺し、薄暗い路地裏の曲がり角から、そっと向こう側の様子を窺った。

 そこに広がっていた光景は、彼らの時間を超えた記憶を激しく揺さぶるものだった。

 ダボダボの『黄色いレインコート』を深く被った一人の女性。

 そして、彼女を取り囲むようにして立ち塞がる、全身を分厚い『黒ローブ』で覆った三人の不気味な男たち。

 黄衣の教団。結衣の悪夢に現れ、そして、あのデパート跡地で不浄の生物を呼び出していた教団。

 そして、彼女を取り囲む黒ローブの三人組は、かつてこの路地裏で翼たちが戦い、凪たちの学校を地獄に変えた元凶の手駒である『深きもの』の化け物たち。


「……まさかな」


「夢じゃ、ないようですね」


 天下崎が目を丸くし、天海が驚きの表情を見せる。

 角の向こうで、黒ローブの一人が獣のような咆哮を上げ、黄色いレインコートの女へ向かって鋭い鉤爪を振り上げて飛びかかろうとしていた。


「ッ……!」


 翼が咄嗟に飛び出そうとし、胸の透明なペンダントに手をかけて結界を張ろうとする。

 だが、その肩を天下崎の丸太のような太い腕がガシッと力強く掴み、強引に引き留めた。


「待て、天海。動くな」


「天下崎さん!?」


「よく見ろ。奴らは『黄衣の教団』と『海還り』……敵対勢力同士だ。もし本当に時間が戻っているんだとしたら、今の状況で俺たちが下手に『手の内』を明かすことは、大きなリスクになるかもしれない」


「ですが……!」


「海還りは勿論危険だ。だが、教団とは一度は協力したとはいえ、まだ信用している訳じゃない。前みたいに下手に首を突っ込むより、一度状況を見た方がいいかもしれないだろ」


 天下崎の言葉に、結衣は壁に背を預けたまま、ひどく複雑な表情で唇を噛み締めていた。


「……見捨てろって事ですか」


 沈黙を破ったのは、凪だった。

 彼の瞳には、化け物たちが弱者を蹂躙しようとする光景に対する、強烈な嫌悪感が浮かんでいた。


「今は情報が足りねぇ。冷静になれ、凪」


「……嫌です」


「なに?」


「目の前で理不尽に命が踏みにじられようとしてるのを、見過ごせと。例えそれが怪しい教団だろうと、もう目の前で人に死んでほしくない」


 親友を喪った直前の記憶が、凪の感情を爆発させる。

 天下崎の制止の声を振り切り、凪は角から半身を乗り出し、真っ直ぐに黒ローブたちへ向けて右腕を突き出した。


『暴風』


 ドゴオオオオオンッ!!

 赤いペンダントの奥底から、漲る魔力が一気に解放される。

 突如として狭い路地裏に発生した凄まじい突風が、黄色いレインコートの女へ飛びかかろうとしていた黒ローブの三人組を、まとめてゴミ屑のように吹き飛ばした。


「グギャアアッ!?」


 黒ローブたちは悲鳴を上げ、コンクリートの壁に激しく叩きつけられて転がった。


「っ……!?」


 突如として放たれた不可視の攻撃に、黄色いレインコートの女は目を見開き、驚愕の表情で凪たちの方を振り返った。

 そして、その驚きを共有していた者が、もう一人。

 すぐ真上の雑居ビルの屋上から、その様子を密かに偵察していた白石柊生だった。


(……魔術使い? この街に、教団と海還り以外で魔術を扱える人間がいるなんて報告にはなかった。…………結衣!? なぜ、あいつがこんな裏路地に……!)


 レインコートを着た男は屋上のフェンスから身を乗り出し、眼下の四人の姿を凝視しながら、内心で激しく動揺していた。


「……チッ、やっちまったもんは仕方ねぇ!」


 凪が攻撃を仕掛けたのを見て、天下崎は忌々しげに舌打ちをした。

 もはや隠れている意味はない。天下崎は翼の背中を力強く叩き、素早く指示を飛ばす。


「天海! 結界で箱詰めにしてやれ!」


「分かりました!」


(俺のは、あの深田の野郎が使ってたモンと悪趣味なほど似てやがる。ここで俺の力を見せりゃ、あの黄色いコートの女に海還りの同類だと怪しまれるからな)


 天下崎の的確な判断を受け、翼は路地裏へと飛び出した。

 胸元の透明なペンダントを強く握りしめ、吹き飛ばされて立ち上がろうとしている黒ローブの三人組を視界に捉える。

 翼の意志に応えるように、ペンダントは確かな魔力を紡ぎ出した。


『多重結界』


 カキンッ、カキンッ、カキンッ!!


 硬質な音と共に、三人の黒ローブたちの周囲の空間がぐにゃりと歪んだ。

 無色透明の強固な立方体がそれぞれをすっぽりと覆い尽くし、彼らの手足を完全に封じ込めて、アスファルトの上へと無様に拘束した。


「!?」


 黒ローブたちが透明な壁を内側からガンガンと叩くが、翼の精密な結界はびくともしない。

 完全に無力化された黒ローブたちを見下ろし、天下崎がゆっくりと歩み寄った。


「……今回は、ゆっくり話が聞けそうだな。何故こんなところにいる。お前らのリーダー様の指示か?」


 天下崎が低い声で尋問するが、フードの奥の魚のように濁った目をした黒ローブたちは、ただ憎悪を込めて睨み返してくるだけで、一言も答えようとしない。


「おいおい、結界で口まで塞いだつもりはないんだがな」


 天下崎が威嚇するようにトレンチコートのポケットに手を入れた、その時だった。


「……お見事です。随分と手慣れたご様子ですが」


 背後から、ひどく丁寧で、しかし感情の読めない冷たい声が響いた。

 黄色いレインコートの女だった。彼女は警戒を解かないまま、翼と凪を値踏みするように見つめている。


「魔術使いの方ですね。一体、どこに所属している方々で?」


 その問いかけに、結衣は無言のまま、女からできるだけ離れるようにして天下崎の大きな背中の後ろへと隠れた。


(この女性は、俺たちのことを本当に何も覚えていないのか。じゃあ、俺たちだけがあの日々を覚えているのか……?)


 もし少しでも未来の記憶があるのなら、自分たちを初対面のように警戒する態度は取らないはずだ。本当に、自分たち四人だけが記憶を持ったまま、時間が巻き戻っている。そして、彼女は自分たちを『教団』でも『海還り』でもないと認識している。

 翼はわずかな沈黙の後、覚悟を決めて口を開いた。


「俺たちは……『海還り』の連中の計画を潰すためにこの街へ来ました」


 あえて自分たちの素性を明かさず、教団の目的と合致する『嘘』を告げる。


「…………海還りの計画を?……そうでしたか!」


 女は翼の言葉を聞くと、しばらく四人の全身を見た後、フードの奥の口元を僅かに歪め、ひどく嬉しそうに声を弾ませた。


「そこまでご存知なら話は早い。我々と一緒に、あの化け物どもの計画を止めましょう。共通の敵を持つ者同士、情報交換から――」


 女が一歩、翼たちへ歩み寄ろうとした、まさにその時だった。


 ――パキンッ!!


 甲高い破砕音と共に、結界に閉じ込められていた黒ローブの男たちが、自らの筋肉を異様に膨張させ、強引に翼の結界を内側からぶち破ったのだ。

 拘束を解かれた三人の怪物が、一斉に翼と凪の首を狙って、鋭い鉤爪を振り上げて襲いかかってきた。


(結界の強度が甘かった…? いや、わざと破壊せずにこの機を伺っていたのか!?)


「しまっ……!」


 翼が咄嗟に身構えた、その直後。

 彼らの頭上の空から、鼓膜を劈くような悍ましい羽音と共に、巨大な影が猛スピードで降下してきた。

 コウモリと昆虫を掛け合わせたような異形の怪鳥――三体の『ビヤーキー』が、途轍もない速度で黒ローブたちへ向かって突進してきたのだ。


「ギャアアアアッ!?」


 ビヤーキーの強靭な顎が、飛びかかろうとしていた黒ローブの男たちの頭から、容赦なく噛みついた。


「グ、ギャァ……ディープ、ワン様ァッ……!!」


 メチャッ、グチャッ。

 凄惨な破砕音。黒ローブたちはビヤーキーの鋭い牙に肉を引きちぎられながら、その醜悪な肉体を風船のように『破裂』させた。

 飛び散った血と肉片。

 だが、三体のビヤーキーはそれを貪欲に、一滴残さず飲み込んでいく。

 その血肉を喰らったビヤーキーたちの身体は、ドクン、ドクンと不気味に脈打つと、一瞬にして一回り以上も巨大で悍ましい姿へと変異を遂げた。

 あまりにも圧倒的で、残虐な捕食の光景。


「結衣さん……! 助かりました、ありがとうございます」


 間一髪で窮地を救われた凪が、背後にいる結衣に向かって感謝の言葉を述べる。

 だが。


「……違うわ、凪くん。私じゃない……」


 天下崎の背後に隠れた結衣は、青ざめた顔で首を横に振り、ガタガタと震えていた。

 彼女の胸元のペンダントは、一切の光を放ってはいない。


「……これは、先ほどのお礼です」


 血肉を貪るビヤーキーたちの向こう側から、黄色いレインコートの女が、まるで美しい花でも愛でるような恍惚とした声で言った。


「あなた方の所属する教団は知りません。しかし信奉は違えど、同じ共通の敵を持つ者同士。これからも協力しましょうね」


 女はそう言うと、血に濡れたくちばしを鳴らす一体のビヤーキーの背へと、恭しく跨った。


「よければ、後ろにどうぞ?」


 首だけをこちらへ向け、女が不気味に問いかける。その瞳は、先ほどまで口を紡いでいた結衣を見つめていた。


「……遠慮しておくわ。私たちは私たちのやり方でやらせてもらう」


 結衣が、底知れぬ嫌悪感を隠そうともせずに吐き捨てた。


「ふふっ……そうですか。では、また」


 女の指示を受け、巨大化した三体のビヤーキーが、強烈な突風を巻き起こして夕暮れの空へと飛び立った。残された四人は、夕焼け空へ消えていく黄色いレインコートの影を、ただ黙って見上げていることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ