第24話:贈物
有限会社TIN(Toyata International Network)での夜間バイトも板についてきた頃。スマートフォンは、相変わらず氷結地獄からの凍てつく礫を投げつけてくる!
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MIKA@修行中:
立ち仕事はwww立ってるだけの仕事って意味じゃないwwwチン騎士団に囲まれてるだけで給料もらえるとか、究極の姫プ乙www #自立(笑)
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『何だとォッ! 姫プだとッ! 貴様、……ぐぬぬ、否定できんがッ! チンじゃねぇッ!!TINだッ!間違えんなッ!!……実際、俺が段ボールに触れようとすると、赤井君がマッハ3で飛んできて箱を奪い去っていくんだッ! それに、俺の膝は30分で限界なんだッ! 構造上の欠陥なんだよッ!それでも立つこの努力を認めんとはッ!だがしかし、それ以外の仕事などできるのかッ?!何か、何でもいいッ、この女を見返す手段をッ!!』
TINの休憩室、25分の休憩時間。のんびりした空気が流れ今日もいつも通り穏やかだ。
「ねぇ青山君、おなかすいちゃったよ~なんか食べたいよ~」
「やれやれ、いつも腹ペコかよ(笑)んじゃ赤井、ちょっとコンビニ出てくるわ。なんか要るか?」
「俺はいいわー。あいよ、姫は任されたぜ!?」
僕は隅の椅子に座り、事務員の桜井さんの隣で裁縫の練習をしていた。机の上には布地と糸、針が並び、桜井さんが優しく教えてくれている。
『合理的ではございませんが、書類作成用カーボンユニットのコマンド、室外待機命令が坊ちゃまの為となるのならば仕方がございません。ネームタグ:赤井による物理透過センサー障害率95%…光学式センサー障害率…貼付け式紫外線防止フィルム劣化による視認率低下…89%。内部の様子は伺えませんが…メリケン針による生命活動低下の可能性…0.1%。論理的に許容すべきか…』
「ここ、こうやって針を斜めに入れると、縫い目がきれいに揃うのよ。…まぁっ上手ね。姫様、手が細くて器用だからすぐ上達するわね。ハンカチの刺繍もあっさりこなしちゃうし、きっと天賦の才能があるのね!?」
『なにをしているんだッ!?いや、頼んだのは俺だが、姫ムーブが加速している…ある意味では姫プかッ?!だがッ!力仕事ができないからにはこれしか手段が…!!まさか自分にこんな才能があるとはッ!!だが…与えられた唯一の神の加護が裁縫スキルだとッ?!』
「あ……えっと……ありがとう……ございます……」
「レースをつけると素敵かしら?でも、手間がかかるから時間的に難しいかなぁ……」
その言葉を、事務所の外でエンジンを低く唸らせていたビギーが聞きつけた。
「マスター! レースのシートカバーを装着した車をレーシーでスポーティーって言うんだよ!!手編みな程DIY感が出てスパルタンなんだよ、ブォォォォン!!」
「ビギーちゃん、面白いこと言うわね。でも姫様のは、シンプルなステッチの方が似合うかも?」
「姫ー、これ誰にあげるんだ?パパさんか!?いいなー!!」
「……えっと……ないしょ……」
「マジか! もしかして、俺?!やった!!」
「赤井君!もう、からかわないの!」
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その頃、倉庫の中ではTIN社長が新しい軽バンBEV(バッテリー式電気自動車)の納車を終え、Clockに熱弁していた。
「ちょっと見りん、Clock君!いいだらぁこれ!これ近所の配達用に追加で買った新入り君だよ!?新入りって言っても形は古臭い軽バンの電気自動車だし比較的短距離しか走れんけど、モノコックの信頼性!キャブオーバーの積載性!!これ!運送会社じゃ鉄板じゃん!?うちの夜勤、お姫さんや騎士団も夜8時から11時の3時間勤務だらぁ?ほんだもんでこれで十分かと思ってな!しかも低圧電力だもんでガソリンより電気代のがお得だし、お得意さんの工場相手だと定時過ぎても荷物欲しがる会社が案外おるもんで、しかも倉庫の中に入れても排気ガスが出んで、空気が汚れんくて便利じゃん?!エコだらぁ?赤井君もついに免許取ったもんでちょうどいいかって買っちゃった!!3人とも免許持ちだし、社長車貸してくださいよ~ドライブ行きたいっすとかお願いされちゃうかもね!青春じゃん!?貸してくれてありがとう社長、太っ腹!!って言われちゃうもんで、誰がデブだ!?ってか?どうだかんClock君、インターナショナルだらぁ!?ガハハ!!」
満足げに白く輝く社用車のボディを撫でながら、社長は比較的早口で自慢げに語りかける。
――スチャッ。
『フム……電動ユニットの素晴らしさが分かるとは……ネームタグ:鳥屋多碧海社長、アナクロと思いきや…総合評価を少々上方修正すべきでございましょうか…』




