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地味な悪役令嬢は卒業します!せっかくですから着飾ってやりますわ!  作者: 柊 花澄


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22 王都で流行りのカフェ

 今日は学園の休日。ディアナとエミリと一緒にお出かけする日だ。


 上級貴族の令嬢がドレスを作る際は屋敷にデザイナーを呼んでのオーダーメイドが主流だけど、やっぱり友人と買い物というイベントに心が躍る。


 訪れたのはシトレウム子爵家が経営するお店。

 建物全てがシトレウムの所有で、各階にドレス、靴、装飾品、化粧品などのお店がある。まるで前世のデパートみたいだわ。

 エミリは建物内の一室を貸切にしてくれていて、そこには新作のドレスや靴が用意されていた。


「わあ、たくさんあって迷ってしまうわね」

 感嘆の声をあげる私に、ディアナとエミリが次々とドレスを持ってきてくれる。


「これは最近流行りのマーメイドラインです。コルセットなしで着るのが主流なんですよ。スタイル抜群のロゼ様なら体に沿ったデザインの方が綺麗に見えると思います」

「ロゼ、このオフショルダーのドレスもお勧めよ。ロゼは肩を出したドレスを普段着ないでしょ。きっと似合うに違いないって、ずっと思っていたのよね。ねえ試着してみせてちょうだい」


 勧められるがままに試着してみて、ディアナとエミリの意見を参考にしてドレスを決めた。

 茶会用には爽やかな色で可憐なデザインを選んだ。

 そして夜会用のドレスは、以前の私では絶対選ばなかったような大人っぽくて大胆なデザインにした。

 タチアナ女史から指導が入るだろうけど、従う気はさらさらない。

 前世を思い出したのもあるけど、今まで反抗期のようなものがなかったので、その反動もあるのかしら。


 注文したドレスは、デザイナーが私に似合うアレンジと補正を加えてから屋敷に届けてくれるそうだ。

 前世でいうセミオーダーというものね。まもなく修道院行きになる身としては、オーダーメイドの完成を待っている時間はないからありがたいわ。

 

 その後は三人でアクセサリーや化粧品も見て回り、商品を手に取ってはあれこれ感想を述べ合った。


 このあとカフェで休憩しませんか? とエミリが提案してきた。この建物の一階にはカフェまで併設されているそうだ。ぜひ行きたいわ、と私は即答する。

 

 カフェの店内は白で統一された内装で、猫足の白いテーブルと椅子が配置されていた。大きな窓からは柔らかな日差しが差し込み、随所に生花や柔らかいタッチの絵画がセンスよく飾られている。


「エミリ、とても素敵なお店ね!」

 思わず感嘆の声をあげると、エミリが嬉しそうに微笑む。

「王都でも今話題のカフェなのよ。私もお気に入りなの」

 どうやらディアナも常連らしい。


「デートスポットとしても人気なんですよ☆ 奥にある個室も人気で、そこはすぐ席が埋まってしまうんですよね」

 女の子が好みそうな内装だと思ったけど、よく見渡すと恋人同士らしき男女二人組も結構多い。あの窓際のテーブルの男女なんて、ケーキの食べさせ合いっこをしているじゃないの!

 デートに無縁な生活を送っている私には眩しい光景だわ。


 スイーツが絶品らしいので、メニューを見て迷ったあげくフルーツタルトを注文する。

 サクッとしたタルト生地にベリーとオレンジがたっぷり乗ったフルーツタルトは、見た目も味も抜群だった。

 紅茶もフルーティでとても美味しい。茶葉も販売しているらしいので、屋敷の皆にお土産に買って帰ろう。

 

 三人でお茶しながら談笑していると、店内にクラスメイトの男子三人が入ってきた。その中にはクラス委員長のイバン様もいる。

「あらごきげんよう。貴方達とここで会うなんて珍しいわね」

 ディアナが男子生徒達に向かって声をかける。

「ジェフがデートの下見をしたいって言うから付き添いで来たんだよ。こんな可愛らしい店に男だけだと肩身狭いから、ここに座ってもいい?」

 イバン様が、隣の男子生徒を横目で見ながら答える。

「どうぞいいわよ」

 私は快諾し、空いている椅子を勧めた。


 そういえばイバン様以外の男子生徒とまともに話すのは初めてだわ。今まで私はどれだけ自意識過剰だったのかしらね。今後は自然体で学園生活を楽しみましょう。


 それから私達はこのメニューは美味しかったとか、デートではこれを頼んだ方がいいんじゃないか、とか和やかに意見交換をしながらスイーツを楽しんだ。


 そろそろ帰ろうかと席を立った時に、若い男女七人のグループが来店してきた。なんとうちの学園の生徒会役員だ。


 こんな偶然あるかしら?


「あれロゼちゃんだ、街で会うなんて珍しいな」

 アルフレッド様が陽気に声をかけてきた。

「ひょっとしてグループデートですか? なんだか青春って感じですね☆」

 デイジー様もテンション高めに話しかけてくる。


 私はちら、とフェリクス様に視線を向けた。

 彼の澄んだサファイアの瞳の奥が、一瞬濁ったように見えたのは気のせいだろうか。

「私達は他校との交流会の帰りなんだ。君達はもう帰るの?」

 フェリクス様はいつもの穏やかな笑みに戻っていた。

「生徒会のお仕事お疲れ様です。わたくし達はこれで失礼します。ディアナ、エミリ、行きましょう」

 私はフェリクス様に挨拶し、その場を立ち去ろうとした。


 アルフレッド様がひらひらと手を振る。

「ロゼちゃん、ディアナちゃん、エミリちゃん、気をつけて帰れよな〜」


 ディアナがツインテールを揺らしながら振り返る。そしてガーネットの瞳でアルフレッド様を軽く睨んだ。

「わたくし、その名で呼ぶ許可は出していませんわ」

 アルフレッド様はなぜだか嬉しそうに、琥珀色の瞳を輝かせている。

「あー俺、許可とらない主義なの。あと女の子は皆平等に()()()()()する主義。覚えといてな」

「あなたの主義主張なんてどうでもいいですわ」

 ディアナとアルフレッド様の会話に、エミリは黙って苦笑している。


 さっさと退散するにかぎるわね。私はイバン様達にも別れを告げて退店した。


 ああ紅茶を買い損ねてしまったじゃないの。


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