報瀬
空洞内
何体のケルベロスを狩っただろう。
弾薬の尽きた報瀬は、途切れることなく迫るケルベロスを刀剣ひとつで霧散させていた。
そんな2番機も限界を超えていた。
バックアップシステムで再起動した誰もいないコクピットには、機体の異常を示すアラームが鳴り続け、モニターには異常箇所が次々と表示されて行った。
梅原と市ノ瀬は、時には報瀬を援護しながら傷ついた機体を走らせていた。
二人の目の前で、左右から飛びかかってきたケルベロスを報瀬が回り込みながら一気に切り捨てた。
右の膝から白い還流液が吹き出す。
「報瀬さん!右足から還流液が出てる」
気付いた市ノ瀬が叫ぶ。
「知ってる。ここで止めたら足が動かなくなる。バックパックに予備を背負ってるからまだ大丈夫」
これは1番機も同じだった。激しい動きに耐えられなくなった筋肉や靭帯が断裂し、さらに人工皮膚も破れ、あちこちで還流液が漏れ出していた。
「あと少しなのに・・・」
片付けたと思うとすぐにケルベロスの集団が押し寄せる。最後の空洞からシャフトに続く側道の前には、地上から進路を変えた多数のケルベロスが堤防のように立ちはだかっていた。
『・・・える・・・』
雑音の中、声が聞こえた。
『・・・、梅原・、市・・さん、聞こえる?』
二人を呼び続けていた上田の声がやっと届いた。しかし電波状況はすこぶる悪く、途切れ途切れの音声のみだった。
「聞こえます」
『回収の・・・、降下中。来て!』
上田の緊迫した声から、輸送機が無理に降下していることがわかった。猶予はない。
「わたしが道を開く。行くよ!」
報瀬は道を塞ぐケルベロスに向かって加速した。梅原と市ノ瀬もそれに続く。
次々に飛びかかるケルベロスを報瀬はバーニアを使い左右に避けながら切ってゆく。刀剣を避け後ろに回り込んだケルベロスは梅原が蹴り飛ばし霧散させた。
2機の関節の軋む音が、筋肉や靭帯の断裂する音が、途切れることなく空洞内に響く。
キィン!
甲高い音がした。
斬りつけた報瀬の刀剣が折れて飛んで行った。
「まだやれる!」
報瀬は折れた刀剣を握る手に力を入れると、ケルベロスに飛びかかった。
刀剣が折れて短くなった分、その距離を詰めなくてはいけない。
ケルベロスに機体をぶつけるよう近づく。
今まで以上の接近戦を仕掛けたことによって回避が間に合わず、ケルベロスの爪が右肩の装甲を吹き飛ばした。
その直後、折れた刀剣はケルベロスの腹を切り裂いていた。
さらに新たなケルベロスが報瀬を狙う。ケルベロスの足元に滑り込み折れた刀剣を突き刺す。しかし、ケルベロスの爪がそれを吹き飛ばした。刀剣が報瀬の手を離れ飛んでいく。
「報瀬さん!」
梅原は報瀬に覆いかぶさるケルベロスに、自分の機体をぶつけるためにバーニアを最大噴射させた。
バシッ。
ぶつかる直前で炸裂音が響き、目の前のケルベロスが霧散した。
さらに炸裂音は続き、周囲のケルベロスが次々と消えて行った。
「迎えに来たぞ。輸送機が待ってる。シャフトへ向かえ!」




