三十八、しょうわるおのこ
「んむっーーーんんん!?」
口元を手で覆われ、入り口の真横の暗がりに引き寄せられ。
深月は混乱の中、背後から自身を抱き竦め拘束する、下卑た笑みをこぼす何者かを見る。
「ふ、ふひっ……や、やわっ、深月さんやっぱやわらかっ」
「おい、ずるいぞ! 早く代われ!」
「ま、待て待て。まず先に手足を縛って動けなくして……あぁ、その前にガムテ、ガムテ使え。騒がれたら人が来るだろ」
「おい、そっち押さえろよ!」
暗闇の中で蠢く、四つの人影……見覚えのある声と顔に、深月ははっと息を呑む。
度々深月に絡んでくる、あの四人組だ。
面皰面と猿顔が鼻息を荒くして左右から手足を押さえ、ひょろ長が口を押さえ、小太りが足の間に立って無理矢理に開いてくる。
目的が明らかな四人組の突飛な行動に、深月は慌てふためきながら身を捩り、暴れる。
「ん、んんんんん! ん~っ!」
しかし、深月の細腕では身動ぎ一つ叶わない。相手がそれぞれ運動不足が目立つ貧相な体つきとはいえ、四人で一斉に押さえつけられてしまっては、どうする事もできない。
「んーっ! んんん~っ!」
「ふ、ふひっ、泣いてる深月さんも可愛いなぁ……むしろ泣き顔が一番可愛い……!」
「だからお前、手伝えっつってんだろ! 立ってるだけだろでぶ!」
「早くガムテ持ってこいって! 深月さん、結構力強いぞ」
あれよあれよという間に、深月を押さえた四人組は校舎から離れ、冷たくひっそりとした空間に連れ込む。
塵置場と資材置き場がごっちゃになった、雨の日は誰も近づかない人気から離れた場所。素行の悪い生徒が頻繁に屯ろする空間だ。
ちょうど資材が四方を囲う柵のようになったその中心に、深月は乱暴に引き摺り倒される。
「はっ……何すーーーんんっ!?」
「よし、口塞いだ!」
「ひ、ひひっ、み、みみ深月さんの柔肌……!」
「どけ! 俺が先だってじゃんけんで決めただろ!」
濡れた地面に仰向けに押し倒され、口を塞がれた深月の上に小太りが覆いかぶさろうとして、猿顔が横から割って入る。
ひょろ長と面皰は腕を上から押さえつけたまま、抵抗によって弾む深月の胸をまじまじと凝視していた。
全員、だらしなく鼻の下を伸ばし厭らしく嗤う。日頃から狙っていた獲物をようやく捕らえ、心底愉しんでいる醜悪な笑みだ。
「すっげ、すっげ! 寝てんのにすげぇ迫力!」
「は、張りがすごいんだろうな」
「お、おい!早く剥いちまおうぜ!」
「待て! あの人がまだ来てねぇ、勝手にやったらぶっ殺されるぞ」
面皰の手が深月の胸に伸びそうになり、深月の顔が真っ青に染まる。
以前に唐突に襲われた光景と恐怖が蘇り、がたがたと全身を震わせて呻く。あの時は一人で、今度は四人だ。恐れと絶望感は比べ物にならない。
あの時は何やら、妙なものに取り憑かれていたようだったが、今回そういったものは見えない。自ら深月を襲っているのだ。
「んん…!」
「ーーーん、ちゃんと言われた通りできたみたいだね、偉い偉い」
目に涙をためて怯える深月……その耳に、またも聞き覚えのある声が届く。
「せ、先輩! いいんすよね? いつもは先輩が先に味見してから楽しませてもらってるのに……」
「今回はね。初物は無理矢理すると具合が良くないから……君らに慣らしてもらってからの方が丁度良くなるんだよ」
困惑し、硬直する深月をよそに、ひょろ長がやってきたその人物……大嶋に遜った卑屈な笑みを浮かべ、迎える。
深月は只管に困惑し、青年を凝視するしかない。なぜ彼がここにいるのか、この状況を前に平然としているのか。
不埒者と親しげにしている時点で答えは明らかだが……突然の事すぎて、深月は上手く思考を纏められないでいた。
「やぁ、昼間ぶりだね。どう? 反省……してくれたかな?」
「……!? っ……」
「びっくりしたよ。俺の誘いを断る子ってあんまりいないからさ……そういう無礼な子にはお仕置きしなきゃと思って、彼らに手伝ってもらったんだ。いい奴らだろ?」
悪びれるどころか、深月に原因があるような物言い。
どちらが無礼だ、と胸の内で怒りが湧くが、拘束され何もできない以上、きっと鋭く睨む以外にない。
それを見て、大嶋は深く溜息をこぼして肩を竦める……どうしようもない馬鹿を見るような視線だ。
「俺はね、不動さん……虚仮にされるのが一番嫌いなんだ。むかつくんだよ、俺に靡かない無駄に気の強い女は」
「っ……!?」
「顔と金しか見てない屑な女共は、俺が甘い声をかけてやればすぐに股を開く。でもさ、誘っても堕ちない奴って割といるんだよね……そういう奴は、こうして痛い目を見せてやると大人しくなるんだよ」
そう言って、大嶋の足が掲げられ、深月の胸に置かれぐにぐにと踏み躙ってくる。大きく柔らかい膨らみがパン生地のように捏ねられ、深月は痛みにびくっと身を震わせる。
そんな苦痛に悶える深月を囲み、四人組が犬のようにだらしなく涎を垂らし出す。
「あぁ、彼らは俺の大事な手駒ね? こいつらこの見た目で、結構な事やってる札付きでさ……匿ってやる代わりに、色々手伝わせてんの。ついでに上手くやれれば、こうして甘い蜜も啜らせてやってんだ。いい上司でしょ、俺」
「っ…!?」
「はっ、まだそんな反抗的な目ができるんだ。大人に知らせたら全部解決するとか思ってる? 無駄無駄……大勢からの信頼の厚い俺とぼっちの君じゃ、話にならないよ。それに、これから君が余計なこと言えないようにしちゃうわけだし」
にやにやと笑いながら、制服の内側から携帯電話を取り出し、撮影機能を使用する大嶋。それに合わせて、四人組が四方から深月の制服に手をかけ、強引に素肌を露わにさせようとしてくる。
無論、深月は抵抗し脱がせまいと暴れる。しかし大嶋の足が胸を押さえつけ、動く事もままならなくさせられる。
できる事は精々、相手を憎々しげに睨みつけ、威嚇するぐらいだった。




