暗い森の戦い、その7~カレヴァン③~
「ドゥーム?」
「僕のせいかよっ!?」
「口は禍の元だというだろう」
「お前だけには言われたくはないな、エルリッチ」
「それより、避けろ!」
リディルの叫びに全員が反応し、四方に散った。カレヴァンは枝を伸ばすと、そこに実を多数つけた。その実が何かをリディルは知っていたわけではないが、本能で危険を感じた。
カレヴァンがつけた実は、はじけたように中の種を飛び散らせた。散弾のように飛び散った種が地面を抉り、地面に大穴をいくつも作る。
「危ないなぁ」
「・・・それどころではないぞ、見ろ」
ドルトムントが指さす先には、抉られた地面から出現する無数の木偶。先ほどの種から成長したのか、動きこそ鈍いがすぐに歩み始めた。一つ一つは小さくとも、姿はほとんどカレヴァンと同じであった。
「攻撃と増殖、一石二鳥か」
「防げば増殖は防げるかもしれんが、おそらくきりがないだろうな。長期戦は不利だ」
「ならば、最大の一撃を以て速攻で終わらせるのみ」
ティタニアが黒の大剣を構え、呪印を解放する。その数、三つ。以前城壁を叩き壊した時よりも、多い数。
「皆、それぞれがあの敵に脅威を覚えるなら、今すぐに全力であの敵を攻撃してください。あの敵はかなりまずい。能力はいまだ底知れず、ドルトムントの指摘通り長期戦になればなるほど我々は不利になるでしょう」
「よかろう」
「承知した」
ライフレスとリディルはティタニアに賛同したが、ドゥームだけが沈黙を保っていた。ティタニアがドゥームを睨みつける。
「ドゥーム、何か不満でも?」
「・・・大ありだね。僕はお断りするよ」
ドゥームの発言に、ティタニアが再度怒りをあらわにした。カレヴァンも割って入るのを思わずためらうほどの殺気がドゥームに向けられたが、ドゥームも今度は正面からその殺気を受け止めていた。
「ドゥーム、返答次第では見逃せない発言です。心してその意図を述べなさい」
「協力してカレヴァンを倒すのは賛成だ。だが全力でというのは御免こうむる。僕は敵になるかもしれない相手の前で手の内をさらすほど馬鹿じゃあない」
「今はそんなことを言っている場合ですか!?」
「ならどうしてティタニアは全力を出さないのさ?」
ドゥームの指摘に、ティタニアが驚いた顔となる。ドゥームは逆にティタニアを睨み返しながら続けた。
「あまりボンクラだと思ってもらっちゃあ困るな。ティタニアが全力でないことくらい、僕も知っているんだ。自分は手の内を隠しておいて人に全力を出させようなんざ、随分と虫のいい話じゃないの、剣帝さん?」
「それは――」
「ドゥーム、よせ」
問い詰めるドゥームからティタニアをかばったのは、意外なことにライフレスだった。
「お前の言いたいことももっともだ。だが、誰しもそうだが相手を仕留める時にしか出さない必殺の能力というものがある。必ず殺すからこそ『必殺』であり、出すからには必ず仕留める確信が必要となる。俺はまだあのカレヴァンに対して確信を抱けん。それはティタニアもお前も同じだろう」
「それは――」
「・・・まぁね」
「それに俺の場合、攻撃の対象範囲が広すぎる。全力で放てば確かにカレヴァンも仕留めるだろうが、同時にこの一帯は焦土と化す。二つ目のクライアの砂漠地帯を作りたくはあるまい?」
ライフレスの言葉に肩をすくめるドゥーム。納得したという仕草だった。
「わかったよ、確かにそうだ。つっかかってすまなかったね、ティタニア。僕は僕のできる範囲で全力を尽くしてカレヴァンを攻撃すると約束するよ。それでいいかい?」
「・・・ええ、構いません」
「それなら、下に群がる雑魚共は任された。本体はティタニアやライフレスが向いていると思うんだけど、どうかな」
「その通りだろうな」
「ならば私も雑魚の掃討に回ろう」
ドゥームと共にリディルが進み出る。その行為にドゥームが目を丸くする。
「へえ? 自ら縁の下の力持ちをやってくれるんだ。さすが元勇者様は徳が高い」
「弱き者を助けるのは勇者の務めだ」
「・・・前言撤回、あんた空気読めないね」
「褒めるな」
リディルが飛び出してから、ドゥームが後に続く。そしてドゥームは心の中で、アノーマリーの調整が失敗しているぞ、と叫んでいた。
リディルとドゥーム、それにオシリアや変化したマンイーターが地面から際限なく生えてくるカレヴァンの分身と交戦に入ると、ティタニアとライフレス、ドルトムント、リシーがカレヴァンを打倒する一撃を加えるべく、準備を始めた。
続く
次回投稿は、9/17(水)9:00です。




