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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第四章~揺れる大陸~
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暗い森の戦い、その6~カレヴァン②~

 リディルが跳びかからんとする中、テトラスティンは冷静にカレヴァンを観察していた。


「リシー、わかるか?」

「ええ、道理で獣道がないはずだわ」

「あのカレヴァンの歩いた端から緑が育っている。この森自体があいつの城のようなものだ。かなり手こずるかもしれない」

「なら一つ決めてほしいのだけど」

「なんだ、今日の衣装か?」


 テトラスティンの軽口に、リシーが殺気のこもった目で睨み返す。


「テトラ?」

「・・・すまなかった。それで、『どこまでやるか』だな。そうだな、火は使っても良いだろう。その他は使わないに越したことはないが、万一私の身に危険が及ぶようなら使用してよいことにしようか」

「本当に万一ね。了解したわ、私も戦いに加わりましょう」

「ああ、さっさと終わらせよう。アノーマリーに取り入るためにも、多少点数を稼いでおかねばな」

「もう彼はいないのでは?」

「そんなタマか、あれが。今頃ニタニタと気持ち悪い笑みでも浮かべながら、こちらの様子を伺っているだろうよ」


 テトラスティンの言葉は極度にアノーマリーを皮肉ったものだったが、意外にも的を得ているかもしれないなどとリシーも考えた。そしてリシーが一歩をカレヴァンの方に向けようとした時、カレヴァンの口とでも言うべきところに穴が出現し、大きな木のうろを風が通過した時のような音が、大音量で流れたのである。


「ホェエエエエエエエエ!」

「くっ、雄叫びといったところか。何とも耳障りだな」

「オウサマ、クル!」


 カレヴァンが一歩を踏み出した時、その足が地に着かぬうちにリディルの高速の突きがカレヴァンを深々と貫いていた。一瞬全員が見失うほどのリディルの速度。ティタニアですら目を見張るその動きにカレヴァンも虚を突かれたのか一瞬その動きを止め、そして怒りを込めるかのように乱暴にリディルを横殴りにした。

 リディルは当然その動きを予測して防御したが、勢いを吸収しきれない。受け身を取り損ねて相当な距離を吹き飛ばされる。ドルトムントがその一撃を見て、意識を変えていた。


「全員防御を怠るな、一撃が致命傷になるぞ!」

「気をつけろ! そいつ、見た目より大きいぞ!」


 リディルが体勢を整えながら叫んだ。全てを忘れていようとも、もはや勇者の本能とでもいうべきか。何事かと全員が思っていると、カレヴァンの体躯がみるみるうちに大きくなっていくのだ。周囲にあった樹木よりも既にその体躯は大きくなり、まだまだ成長を続けるように見えた。

 ライフレスがその変容を見て、舌打ちをした。


「所詮は木偶。いかに大きかろうと、燃えることに変わりはあるまい」


 ライフレスが一際大きな火球を作り出し、カレヴァン目がけて放った。カレヴァンに命中した火球は大爆発しカレヴァンを炎で包んだが、カレヴァンはまるで意に介さないかのように歩き出した。既に足は大木のように太くなり、大人が10人くらいは手をつないで囲うくらいの太さはありそうだった。

 カレヴァンが歩くと、地面が揺れる。


「デカくなると鈍いのか?」

「それとも火が足らないのか。追加してみるか」


 テトラスティンが加えて小さめの火球を複数作り出した。それらを鳥の形に変形させると、鳥が木に止まるかのように炎で覆われていないカレヴァンの部分に器用に命中していった。

 ライフレスがその精度に感心する。


「やるな?」

「貴様ほどの大出力はないものでな。こんな小手先のことばかり上達する」


 テトラスティンが鼻を鳴らして自嘲気味に述べたが、カレヴァンは今度こそ燃え盛っていた。斬りかかろうとしたドルトムント、ティタニアも構えたまま、一度下がっていた。

 だが、それでもカレヴァンは歩みを止めようとはしなかった。


「業火に包まれて、なお歩くのか? 効いてないと?」

「それだけでもなさそうですね」


 ティタニアが最初に異変に気が付いた。カレヴァンは歩きながら、大量の樹液を噴出したのだ。業火は一瞬にして消され、カレヴァンはぶすぶすと煙を噴きながら、それでも歩みを止めなかった。ティタニアが逃さないとばかりに、その大剣を振るう。大樹すらまとめて薙ぎ払うティタニアの剣力だが、その一撃はカレヴァンの表面をわずかに傷つけるにとどまった。


「樹液か!」


 カレヴァンの体表は樹液で覆われ、緩衝材のようにティタニアの斬撃を吸収していた。すかさずリディルが直接剣を打ち込みにいったが、同じ結果だった。それどころか、剣を危うくからめとられそうになり、リディルは必死の思いで剣をはぎ取って後退した。


「剣もだめ、魔術もだめ。攻防一体の樹液だな。そもそもの性質に加え、魔術の作用もありそうだな」

「打つ手なしか?」

「それより、こっちのことを無視してない? さすがにこの面子を揃えて無視されるのは腹が立つんですけど」


 ドゥームがそんな愚痴を漏らした時、カレヴァンがその言葉に反応したかのようにドゥームの方を向いたのである。そして明らかに攻撃態勢に入ったことを示すかのように、枝を槍のようにして伸ばし始めた。

 一同がドゥームを非難の目つきで睨んだ。もちろん、筆頭はオシリアである。



続く

次回投稿は、9/15(月)9:00です。連日投稿になります。

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