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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1871/2685

戦争と平和、その408~統一武術大会ベスト16幕間、黒の魔術士の焦燥①~

***


「ドゥーム!?」


 オシリアがドゥームの帰還に驚いていた。なぜなら、その隣にはミルネーを担いだライフレスと、オーランゼブルがいたからだ。

 オシリアはオーランゼブルを見ればその首をねじ切って殺そうと心に誓っていたが、この状況がさすがに飲み込めず、ただ戸惑うばかりだった。

 ライフレスがどさりと無造作にミルネーを下ろすと、ドゥームが無機質に言い放った。


「オシリア、『それ』をよろしく。しばらく勝手なことをしないように見張りをつけておいて」

「え、ええ」

「で、お師匠様。わざわざこちらに来たってことは、何か重要なことが起きるのでしょう?」

「うむ。少しお前たちに働いてもらう必要が出てきた。占星術でよ良くないものが浮かんだのだ」


 オーランゼブルが両手を前に出すと、闇の中にすうっと光が浮かび、立体的な地図のようなものが浮かんできた。


「これは?」

「ここアルネリアの地下にある遺跡だの詳細図だ。かつて私も潜ったことがある」

「広いな」


 ライフレスが唸る。地図が本当なら、地上にあるアルネリア施設のゆうに数百倍がある構造だ。

 その中ほどに、赤く光る点が表示された。


「おそらくはここだ。占星術での予測だから、確たることは言えぬが」

「ここに何が?」

「神話の上での大魔獣、ウッコがいる。まだ私が若い頃の話だ。古竜と魔人の大戦に分け入り、双方に大打撃を与えた伝説の魔獣ウッコとアッカの二体の片割れになる」

「古竜と魔人を? そんな化け物を僕たちにどうしろって?」


 ドゥームが口をとがらせて不平不満を述べたが、オーランゼブルがじろりと睨むと萎縮した。


「私も詳しくはこの魔獣のことを知らぬ。まだ若かりし頃遠目に戦いを見ただけだし、先達のハイエルフに断片的な記録を語ってもらった程度だ。全盛期のウッコが相手ならとうてい倒すべくもないが、そんな力があればとうにこの大陸は滅びておる。

 感じられる魔力の奔流からも、おそらくは瀕死の状態をようやく脱出した、というのが正確なところだろう。だがそれでも大きな脅威には違いない。本来ならしばらく放置しておくのがよいのだが、抜き差しならぬ事情ができた」

「あー・・・ティタニアか」


 ドゥームが想像した。ドゥームは拠点を一時的にアルネリアの近郊の廃屋にしたが、ティタニアはどこに作っていたのか。そもそもアノーマリー、ドラグレオ、そして自分ですらある程度の拠点を作って休息する場所などを作るのに、ティタニアはどこで寝起きしているのかすら定かではなかった。このアルネリアに来た時ですらそうだ。宿をとってはいたが、大会に入る前はどうだったのか。

 だが最初から遺跡に拠点を置いているのなら――覚醒と休眠を繰り返すティタニアが安全に過ごせる場所。活動休止中に「絶対に襲われない」場所として遺跡を選んでいても不思議ではない。ティタニアは最初からこのアルネリアの遺跡のことを知っていたのだろう。

 そして封印が解けかかっている今、強引な活動を開始したのだ。馬鹿正直に大会に出場したのも、レーヴァンティンを探していて、遺跡を下手に刺激しないようにするためではないだろうか。もしかすると、ウッコの存在にも気づいていたのかもしれない。

 ドゥームの頭脳は目まぐるしく回転すると、一つの結論を導きだした。


「ティタニアがウッコを刺激したらまずいから、その前に消せってことですか?」

「消すのもまずい。ティタニアの中にいる大魔王ペルパーギスの性質がウッコにも有効だった場合、このアルネリアは間違いなく消滅する。それは現時点で避けねばならぬ」

「つまり、ウッコとティタニアが遭遇する前に、ティタニアを力づくで拘束して連れて来い、と」

「うむ。ティタニアごとき放っておいても影響ないと考えていたが、ここにウッコがいて、さらにレーヴァンティンがあるとなると、話は別だ。再度強力に精神束縛をかける必要がある」


 オーランゼブルは精神束縛という単語を隠そうともしない。おそらくはライフレスとドゥームを既に洗脳下に置いているからだとオシリアは考えた。

 なんて恐ろしい――オシリアは心胆を寒からしめる予測に、無表情に務めるのが精一杯だった。なぜなら、ここまでドゥームの考え通りに話が進んでいるからである。

 オシリアがそんなことを考えているとは露知らず、オーランゼブルはオシリアなどいないがごとく話を進めていた。そこにドゥームが気付いたように、指をぴっと上げたのだ。


「でもお師匠様、一つ肝心なことが抜けていますよ」

「なんだ?」

「ティタニアの封印は限界です。もう一両日以内に解けるって自分で言ってました。そうなったら、洗脳しようがどうしようが、関係ないのでは?」


 その言葉に、オーランゼブルが初めて驚いたように目を見開いた。そしてドゥームの両肩を鷲掴みにした。ここまで狼狽するオーランゼブルを見るのは、ドゥームも初めてのことだ。思わず大笑いしそうになるのを堪えるので必死だった。


「なぜだ? なぜそうなった!?」

「いてて・・・俺だって知りませんよ」

「そうか、それで占星術が狂って・・・そんな予定ではなかったはずだ。誰だ、誰が介入している?」

「で、どうするのだ? ティタニアを捕獲しただけで不足なら、最悪復活した大魔王を始末するだけの戦力を確保する必要がある。今からどこにいるかわからないドラグレオを捕まえることは不可能だろう。カラミティとブラディマリアはここにいるだろうが――」


 ライフレスの言葉に、オーランゼブルが首を横に振った。



続く

次回投稿は、9/23(月)6:00です。

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