戦争と平和、その405~統一武術大会ベスト16幕間、管理者たちの憂鬱③~
レイキ、ロックルーフがユグドラシルを見ると、ジャバウォックのように警戒心をあらわにする。だがそこにシュテルヴェーゼがするりと前に出ると、懐から硬貨を取り出してユグドラシルに寄越した。
「店主、これで串を人数分頼む」
「・・・あいよ」
「イル、小遣いをやるから少し向こうで遊んでまいれ。妾は少々この店主に聞くことがあるでな」
「うん、いーよ。ジャビー、行くよ!?」
「おい、だから俺を待てっての! ロック、お前はこっちに来い。このガキ、マジですばしっけぇ」
「しょうのない」
ロックルーフはジャバウォックについてその場を離れたが、レイキはシュテルヴェーゼと共に残った。そうしてシュテルヴェーゼが改めて人払いの魔術を張りなおすと、ユグドラシルが焼けた串を二人に渡した。
「ご注文の品ですよ、ご婦人」
「・・・臭い芝居はそこまでにしたらいかがですが、管理者殿。お会いするのは初めてかもしれませんが、妾にはわかるのです」
「さて、なんのことでしょうか?」
「とぼけられるおつもりですか? ですが――」
「その御方は管理者ではないよ、古竜の」
トゥテツが口を挟む。その姿にシュテルヴェーゼが驚いて、身構えた。
「お、お前は――大草原の管理者!」
「久しぶりじゃのう、三千年ぶりかな? いきなり飛びかかって来ないだけでも立派、立派」
「からかっているのか?」
「懐かしんでおるだけじゃよ。かつては竜随一の武闘派が、丸くなったものよ。これも時代の流れかのぅ」
「シュテルヴェーゼ様、こちらは?」
レイキは面識がなかったのでシュテルヴェーゼに質問したが、シュテルヴェーゼは苦い顔で説明した。
「・・・大草原の遺跡の管理者だ。名はトゥテツでよかったのか?」
「まぁ間違いあるまい。姿形は色々あるが、今はこの老人のものが気に入って使っておる」
「大草原の管理者ですか。私は大草原の遺跡に挑んだことはありませんが、ジャバウォックやロックルーフは挑んでいましたな。三階層までしか到達できなかったと嘆いていましたが。シュテルヴェーゼ様はさらに深く潜られたのでしょう?」
「五階層までは到達し、そこでこの管理者トゥテツと対峙した。そこが最終階層かどうかは知らぬが、挑むこと174回。一度も膝をつかせることができなかった」
シュテルヴェーゼの苦々しい表情とともに、ほっほっほとトゥテツが笑う。
「若い若い、まだそのような表情を見せてくれるとはな。なんでもかんでも力押しで来るからじゃよ。今ならもう少しマシな戦いになりそうじゃがな」
「・・・何がダメだったかは、妾なりに理解したつもりじゃ。じゃがそれでも全く勝てる気がせぬ。お主たち管理者とは一体なんなのじゃ? それに隣にいる少女は――」
「カレヴァンでいいわ。トゥテツと同じく、遺跡の管理者よ。まぁ戦闘用としてはこのトゥテツは最強。五階層で戦えるだけでも、誇りに思っていいと思うわ。いかに古竜といえど、その階層に到達できる者は他にはいないでしょう」
「遥か高みから褒められても嬉しくないのぅ。ではあの遺跡とは何階層あって、一体何のために作られたのじゃ? 古竜で突破できぬとなれば、魔人でも同じようなものであろう。しからば、誰が突破できるというのであるか?」
シュテルヴェーゼの疑問に対し、トゥテツは答えない。答えないのではなく、答えられないのではないかと。また自分がそれを知り得たとして、しょうのないことなのかとシュテルヴェーゼはため息をついた。
続く
次回投稿は、9/17(火)7:00です。




