表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/2

壊滅過ぎるレシーブと天才過ぎるレシーブ⁉

第2話スターート

「よし、お前ら。まずは全体で基礎練だ。対人パスとシートレシーブから入るぞ」


坂口の重い声が体育館に響く。

新入生が入ってきたとはいえ、今のバレー部は主要メンバーが抜け、基礎のすり合わせすらできていない状態だ。いきなりスパイクを打つのではなく、まずはチーム全体の足並みを揃えるところから始めなければならない。


「ええっ、キャプテン! スパイク打たないんですか!?」


翔が分かりやすくショックを受けた顔で声を上げる。


「当たり前だバカ。バレーはレシーブができなきゃ始まらねえんだよ」


俊樹が呆れたように鼻を鳴らすと、翔は「お前だってトス上げたくてウズウズしてんだろ!」と即座に噛みついた。


「そこ、静かにしろ。……原、1年のパスを見てやってくれ」


「了解」


坂口に指示された3年生セッターの原浩志が、ボールを一つ抱えて歩み寄ってきた。原は堅実なプレイスタイルで知られるベテランだ。俊樹と翔に優しくボールを投げ渡す。


「よし、刈谷、樋口。まずは二人で対人パスやってみろ。お互いのクセを見るにはそれが一番だ」


「はいっ!」


「よろしくお願いしまーす!」


コートの端で、俊樹と翔が向かい合って立ち、ボールを投げ合い始めた。


レシーブ下手くそ問題

アンダー、オーバー……


基本的な練習が進んでいく中で、2年生たちの視線が自ずと1年生コンビに集まり始める。


「なあ……あいつら、対照的すぎるだろ……」


そう呟いたのは、2年生ウイングスパイカーの田中竜だ。隣に立つ木下力や成田和仁も苦笑いしている。


俊樹はどんなレシーブが来ても、一瞬で手元に収めてきれいなオーバーハンドで返している。指先のタッチは柔らかく、完璧なコントロールだ。


……一方の翔はというと。


バンッ!!


「あッ!!」


俊樹がやさしく返したアンダーパスに対し、翔が腕を振って合わせた瞬間、ボールは明当違いの方向へ弾け飛び、体育館の天井近くのギャラリーに勢いよく突き刺さった。


「おい樋口!! お前レシーブ下手くそすぎだろ!! なんでただの対人パスで天井に撃ち込んでんだよ!」


「ち、ちげーよ! 手に当たった瞬間に弾けるんだよ! もっとこう、ふわっと投げてくれよ!」


「ふわっと返したろうが! 腕振るな、面を作って壁になれって中学で教わらなかったのかバカ!」


「バカって言うな! 俺は跳んで打つ専門なんだよ!」


コートの端でボールを追いかけ回す翔を見て、2年生のまとめ役・縁下久志が額を押さえた。


「樋口くん……ジャンプ力と身体能力はバケモノ級なのに、レシーブのセンスは壊滅的だな……」


「ああ、腕の力が入せすぎて全部ホームランにしてるな。レシーブは完全にゼロから叩き込み直しだ」


エースの東朝日が思わず「ぶはっ」と吹き出した。


「ハラ、あいつ面白すぎるだろ! スパイク打ちたくてウズウズしてんのに、レシーブで毎回ボール弾いて俊樹に怒られてんぞ」


「ははハ……。でも東、笑い事じゃないよ」


原は腕を組みながら、苦笑い混じりに二人を見つめていた。


「俊樹は指先の感覚も良くてレシーブもトスも器用にこなす。だけど、翔は完全な『攻撃特化型の単細胞』だ。レシーブが上がらなきゃ、俊樹のトスに繋がるどころか試合にすらならないからな」


繋がるバッシュの音

「おい樋口! 腕を振るなと言ってるだろ! 面を固定しろ!」


「分かってんだよ! でもボールが来ると身体が勝手に反応してバッて振っちゃうんだよ!」


「バッて振るな! 吸収しろ吸収!」


怒号を飛ばしながら、俊樹は何十本も翔にボールを送り続ける。

翔は何度もボールを壁や天井に弾き飛ばし、そのたびに「くっそー!」と叫びながら泥臭くボールを追いかけた。


「おい1年! 無駄口叩いてないで手ぇ動かせ!」


坂口の怒声が飛ぶ。


「「はいっ!!」」


俊樹と翔はびくっと肩を跳ねさせ、慌てて直立不動になった。


それからも地道なレシーブ練習が何時間も続いた。体育館に響くのは、キュッ、キュッと床を擦るバッシュの音と、翔がボールを弾く派手な音、そして俊樹の怒鳴り声。


かつて県ベスト8だった頃の華やかさは今はない。主要メンバーが抜け、残された先輩たちの顔にも疲れと不安が見え隠れしていた。


だが、どれだけレシーブが下手くそで弾きまくろうとも、翔の瞳から熱が消えることはなかった。何度失敗しても、ギラギラとした目でボールに食らいついていく。


その姿を見つめる2年生の田中、木下、縁下、成田、そして3年生の坂口、原、東の胸の中に、少しずつ……だが確実に、熱い感覚が戻り始めていた。


「……よし、今日の練習はここまで!」


坂口が大きく手を叩く。


「明日も基礎からじっくりやるぞ。ボールの片付けをして解散!」


「「「ありがとうございました!!」」」


体育館中に元気な声が響き渡った。


まだ見ぬ明日へ

片付けが終わる頃には、外はすっかり暗くなっていた。


靴を履き替え、校門に向かって並んで歩く俊樹と翔。練習中の喧嘩の熱が冷めやらないのか、二人はまだぶつぶつと文句を言い合っている。


「おい樋口。お前、家帰ったら壁に向かってアンダーの面作る練習100回やれ。お前がレシーブ上げなきゃ俺のトスも上げられねえんだよ」


「わかってるよ理屈っぽいセッター! 明日は絶対にお前の胸元にピタッと返してやるからな!」


「だーれが理屈っぽいセッターだ。返せるようになってから言え」


ふたりは互いに顔を背けながらも、同じ歩調で夜道を進んでいく。


レシーブが絶望的なアタッカーと、こだわりが強すぎるセッター。そして崩壊しかけたチーム。

しかし、静まり返っていた体育館には、間違いなく新しい風が吹き始めていた。


(第3話へ続く)


途中で入ってくる太文字は部分はいらないかな


フィードバックありがとうございます!途中の見出し(太文字のセクション)をなくし、物語の文章だけでスムーズに読めるように修正しました。


第2話:合わないタイミング、揃わない足音

「よし、お前ら。まずは全体で基礎練だ。対人パスとシートレシーブから入るぞ」


坂口の重い声が体育館に響く。

新入生が入ってきたとはいえ、今のバレー部は主要メンバーが抜け、基礎のすり合わせすらできていない状態だ。いきなりスパイクを打つのではなく、まずはチーム全体の足並みを揃えるところから始めなければならない。


「ええっ、キャプテン! スパイク打たないんですか!?」


翔が分かりやすくショックを受けた顔で声を上げる。


「当たり前だバカ。バレーはレシーブができなきゃ始まらねえんだよ」


俊樹が呆れたように鼻を鳴らすと、翔は「お前だってトス上げたくてウズウズしてんだろ!」と即座に噛みついた。


「そこ、静かにしろ。……原、1年のパスを見てやってくれ」


「了解」


坂口に指示された3年生セッターの原浩志が、ボールを一つ抱えて歩み寄ってきた。原は堅実なプレイスタイルで知られるベテランだ。俊樹と翔に優しくボールを投げ渡す。


「よし、刈谷、樋口。まずは二人で対人パスやってみろ。お互いのクセを見るにはそれが一番だ」


「はいっ!」


「よろしくお願いしまーす!」


コートの端で、俊樹と翔が向かい合って立ち、ボールを投げ合い始めた。基本的な練習が進んでいく中で、2年生たちの視線が自ずと1年生コンビに集まり始める。


「なあ……あいつら、対照的すぎるだろ……」


そう呟いたのは、2年生ウイングスパイカーの田中竜だ。隣に立つ木下力や成田和仁も苦笑いしている。


俊樹はどんなレシーブが来ても、一瞬で手元に収めてきれいなオーバーハンドで返している。指先のタッチは柔らかく、完璧なコントロールだ。


……一方の翔はというと。


バンッ!!と、俊樹がやさしく返したアンダーパスに対し、翔が腕を振って合わせた瞬間、ボールは明当違いの方向へ弾け飛び、体育館の天井近くのギャラリーに勢いよく突き刺さった。


「おい樋口!! お前レシーブ下手くそすぎだろ!! なんでただの対人パスで天井に撃ち込んでんだよ!」


「ち、ちげーよ! 手に当たった瞬間に弾けるんだよ! もっとこう、ふわっと投げてくれよ!」


「ふわっと返したろうが! 腕振るな、面を作って壁になれって中学で教わらなかったのかバカ!」


「バカって言うな! 俺は跳んで打つ専門なんだよ!」


コートの端でボールを追いかけ回す翔を見て、2年生のまとめ役・縁下久志が額を押さえた。


「樋口くん……ジャンプ力と身体能力はバケモノ級なのに、レシーブのセンスは壊滅的だな……」


「ああ、腕の力が入せすぎて全部ホームランにしてるな。レシーブは完全にゼロから叩き込み直しだ」


エースの東朝日が思わず「ぶはっ」と吹き出した。


「ハラ、あいつ面白すぎるだろ! スパイク打ちたくてウズウズしてんのに、レシーブで毎回ボール弾いて俊樹に怒られてんぞ」


「ははハ……。でも東、笑い事じゃないよ」


原は腕を組みながら、苦笑い混じりに二人を見つめていた。


「俊樹は指先の感覚も良くてレシーブもトスも器用にこなす。だけど、翔は完全な『攻撃特化型の単細胞』だ。レシーブが上がらなきゃ、俊樹のトスに繋がるどころか試合にすらならないからな」


「おい樋口! 腕を振るなと言ってるだろ! 面を固定しろ!」


「分かってんだよ! でもボールが来ると身体が勝手に反応してバッて振っちゃうんだよ!」


「バッて振るな! 吸収しろ吸収!」


怒号を飛ばしながら、俊樹は何十本も翔にボールを送り続ける。翔は何度もボールを壁や天井に弾き飛ばし、そのたびに「くっそー!」と叫びながら泥臭くボールを追いかけた。


「おい1年! 無駄口叩いてないで手ぇ動かせ!」


坂口の怒声が飛ぶと、二人はびくっと肩を跳ねさせ、慌てて直立不動になった。


それからも地道なレシーブ練習が何時間も続いた。体育館に響くのは、キュッ、キュッと床を擦るバッシュの音と、翔がボールを弾く派手な音、そして俊樹の怒鳴り声。


かつて県ベスト8だった頃の華やかさは今はない。主要メンバーが抜け、残された先輩たちの顔にも疲れと不安が見え隠れしていた。


だが、どれだけレシーブが絶望的で弾きまくろうとも、翔の瞳から熱が消えることはなかった。何度失敗しても、ギラギラとした目でボールに食らいついていく。その姿を見つめる2年生の田中、木下、縁下、成田、そして3年生の坂口、原、東の胸の中に、少しずつ……だが確実に、熱い感覚が戻り始めていた。


「……よし、今日の練習はここまで!」


坂口が大きく手を叩く。


「明日も基礎からじっくりやるぞ。ボールの片付けをして解散!」


体育館中に元気な「ありがとうございました!」の声が響き渡った。


片付けが終わる頃には、外はすっかり暗くなっていた。靴を履き替え、校門に向かって並んで歩く俊樹と翔。練習中の喧嘩の熱が冷めやらないのか、二人はまだぶつぶつと文句を言い合っている。


「おい樋口。お前、家帰ったら壁に向かってアンダーの面作る練習100回やれ。お前がレシーブ上げなきゃ俺のトスも上げられねえんだよ」


「わかってるよ理屈っぽいセッター! 明日は絶対にお前の胸元にピタッと返してやるからな!」


「だーれが理屈っぽいセッターだ。返せるようになってから言え」


ふたりは互いに顔を背けながらも、同じ歩調で夜道を進んでいく。


レシーブが絶望的なアタッカーと、こだわりが強すぎるセッター。そして崩壊しかけたチーム。しかし、静まり返っていた体育館には、間違いなく新しい風が吹き始めていた。

どうでしたか翔はレシーブが全然ダメでしたね。その代わり俊樹はレシーブがめちゃくちゃうまいんですよ対照的な二人がこれからどうなっていくのか楽しみですね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ