087⚫️まちがいだと思う?
ランチの最後の客が帰っていく。
「おいしかったよ」とパチパチと拍手までしてくれた。
ふう・・・少し休憩するか。
サラを空港で見送ってから、もう1年。
街は救援物資と義援金で急速に復興している。
死亡者が少なかったのは幸い、なんて、俺は言わん。
現役時代は、銀河連邦内の勢力争いを抑えようと頑張ってきたが、
結局、効果はなかったということだ。
カラン、カラン。レトロなドアベルが鳴る。これも店のウリだ。
若い女性だ。少し可愛いな。
「いま、入ってもいいかな?」
「もちろん、どうぞ。ウェルカムです。」
席へ案内し、オーダーを聞く。俺は対人サービスが好きだ。
機械や端末からの注文なんて味気ない。これも俺のこだわりだな。
「う〜ん・・・まず、トマトジュースを頼めるかな?」
ベジタブル・ファーストか。
「はい、少々お待ちくださいね。」
朝届いたトマトをミキサーにかけ、隠し味をひとつ。
「店長ひとりで、このお店やってるの?」
「そうですよ。小さいですからね。」
「ふ〜ん・・・アルバイトは雇わないの?」
「戦災まではひとりいたんですけどね。」
「じゃあさあ、格安でひとり雇わない?」
・・・は?
「もう、しょうがないなあ。じゃあ、みててよ!」
グラスを持ち上げ、えっ、一気飲み?!
「ふ〜。ほら、ちゃんと飲めたでしょ?ご褒美にイチゴのホールケーキ、と言いたいところだけど・・・それじゃなくて、ボクをやとってよ!」
えっ・・・お前・・・?
「お前・・・まさか・・・そんな・・・。」
「やだなあ。すぐにわかんないほど、ボク、きれいになった?」
喉に詰まった言葉が、ようやく出てくる。
「ヒロ・・・ヒロか?ヒロなんだな・・・。」
「ひさしぶり〜!ヤマト、夢が叶ったんだね。おめでとう!」
「・・・でも、お前・・・記憶消失じゃなかったのかよ・・・。」
「ふふ〜ん。ボクの脳はね、必要最小限の情報だけは残してくれてたんだよ。ちょっと取り出すのに時間がかかったけどね。ボクの記憶がそう言うんだから、これって、まちがいだと思う?」
「・・・思わん。絶対に確かだ!」
他に誰もいない店内で、俺たちはしっかりと抱き合った。




