059⚫️並じゃない
撃てないレーザー銃なら、5人程度はどうにでもなる。
たとえ今の俺が、能力の底である’新月期’であったとしても、だ。
俺たちのテーブルに近づいた男の腹に、無造作に拳をめり込ませる。
声も出せずに崩れ落ちる男を、
俺は抱きかかえるようにして椅子に座らせた。
傍目には、執拗に検査を受けているようにしか見えないだろう。
「ほら、言ってるでしょう?何も持っていませんよ。ええっ?もっと念入りに見るんですかあ?」
俺はあえて、困り果てた一般客のような声をあげる。
「・・・ヒロ、椅子の下に隠れてろ。ちょっとばかり騒ぎになるかもしれん。」
ヒロが小さく頷くのを確認し、残りの4人の位置を把握する。
ひとりはテーブルの上で周囲を睥睨している。
マナーの悪い奴だ。
白いテーブルクロスが台無しじゃないか。
あとの3人は、他の乗客を脅して回っている。
俺は無音で動き、最も近いヤツをテーブルの下へ引きずり込んだ。
頸を軽く叩く。
はい、おやすみ。
続けて残りの2人も黙らせた。
「おい、どうした?おめえら、どこにいるんだ!」
テーブルから飛び降り、不審そうにこちらへ歩いてくるリーダー格の男。
その背後へ回り込み、スリーパーホールドを極める。
抵抗は一瞬。素直に落ちてくれた。
あとは接舷している海賊船だ。
ヒロの知識どおりなら、残りは最大でも27人。
接舷部へと足を向けた俺に、背後から小さな声がかかった。
「ボクも行くよ。道案内、できると思うから。」
普通、子どもを連れて敵陣に突入するなんて選択肢はあり得ない。
並の大人だったら絶対に無理だ。
だが、こいつは並の’大人’じゃない。
それ以上の’子ども’だ。
「いいだろう。行くぞ、遅れるなよ。」
その一言に、
ヒロは迷いのない足取りで、俺の隣へと並んだ。




