057●ケーキのサイズ
中型宇宙艇は定刻どおりに離床した。
俺たちは2等キャビン。
個室だが、トイレとシャワーは共用だ。目立たない、が最優先だ。
ノクティス・ドミナ圏から、アストラ・コンコードの観光惑星へ。
ただの旅客、という顔を崩さない。
「もっと食べないと、大きくなれないぞ。」
「糖分摂取は心がけてるよ。」
「子どもの偏食はダメだ。トマトも食べなきゃ。」
「トマト、きら〜い!」
レストランの窓に流れる星の光は細い糸みたいだ。
2等客のざわめき。笑い声も聞こえる。穏やかな航海だ。
「野菜は食べるサプリメントだ。」
「じゃあ、ヤマトは小さい時からなんでも食べたの?」
うっ。痛いところを突く。
「・・・実は・・・俺もトマトは苦手だった。」
「ほ〜らぁ。じゃあ、ボクも食べなくていいんじゃない?」
「いや、俺は母の特訓で克服した。トマトを食べると卵豆腐が出たんだ。」
「それはまた、ジャパニーズ由来の食べ物だね。」
「だ・か・ら!今は俺がヒロの親代わりだ。トマトを食べたら、苺のショートケーキを注文してやる。」
「え〜!交換条件なの?・・・じゃあ、ホールケーキにしてよ。」
その時、壁面モニターの海や山の映像が途切れた。
音声のみが出力される。
「・・・ザァー・・・ブツ、ブツ・・・あー、諸君!この船は我々が乗っ取る!抵抗すれば、遠慮なく砲撃するぞ!」
窓の外を見る。あの艦は・・・船体にドクロが大きく描かれている。
「・・・宇宙海賊?」
誰かが小声で言った。フォークが落ちる音がした。




