056⚫️陽気で腹黒いはず、なのに?
今日も乗客にスキャナーの青光を当てる。
手荷物も探査装置を潜っていく。
モニターには金属反応も異常波形もなく、
機密漏洩特有の‘濁りノイズ’も見当たらない。AI探知もクリアだ。
「はい、次の方どうぞ。」
列が進み、小柄な子どもと後ろに立つ男が視界に入る。
特に警戒すべき要素はない。
荷物をスキャン。青線が走り、表示は緑に変わった。
金属反応も生体ストレスの揺れもゼロ。
「どうぞ。良い旅を。」
わたしの言葉を受け、ふたりは静かにゲートを抜けていった。
ボクは呼吸を整え、ただ‘普通の子ども’として列に並ぶ。
青い線が足元を流れ、端末の隅が緑に灯る。
「どうぞ。良い旅を。」
ボクは声を出さず、検査官に軽い会釈だけ残してゲートを抜けた。
歩幅は乱さない。後ろも振り返らない。
何もない。それでいい。
ヒロの背を半歩ずらして追う。
‘叔父と小旅行’という設定だ。
まだ子どもだから、ヒロは少しキョロキョロしている。
めずらしいのだろう。
スキャナー前では迷いなく荷物を置き、検査官の鼻筋のあたりを見る。
青い線が足元を滑る。胸の鼓動を意図的に一拍落とす。緑が灯る。
「どうぞ。良い旅を。」
俺は小さく会釈して通過する。
ヒロの肩がわずかに緩んだのが見えた。ここまでは、何もない。
・・・あれ? こんなに簡単な任務なのか?
部長の大げさな依頼は、単にヒロの重要性のためだけ?
いや、あの陽気で腹黒い部長のことだ。
何か、あるんじゃない?




