044⚫️しばしのアルバイトと突然の警報
店を開けた。
朝食を急ぐ出勤前の客、静かにカップを傾ける老夫婦。
ありがたいことに、店はそれなりの繁盛を見せていた。
ここに来て、もう三年。
アストラ・コンコードとノクティス・ドミナ。
銀河連邦テラの主導権争いに嫌気が差したころ、
ちょうど貯金も貯まって情報部退職、流れ着いたのが、この惑星だった。
中央でも辺境でもない。そこそこ繁栄し、そこそこ静か。
俺の性分にはちょうどいい。
「店長、次の仕入れの連絡です。いつもの分量でいいですか?」
「ありがとう、サラちゃん。変更なしで頼むよ」
次の客からのオーダー、ブルーマウンテンを淹れる。
いい選択だ。
サラちゃんがカップを運んだテーブルには、見慣れない若い男が座っていた。
ふたりは親しげに言葉を交わしている。
「サラちゃん、知り合いかい?」
「ふふ、子供の頃からずっと、私を見守ってくださっている方なんです。近くに来たついでに、寄ったんですって。」
ふーん。若い男だが、妙に落ち着いた感じだな。
’子供の頃から’と言われても、
俺の目にはふたりとも大して歳が変わらないように見えるな。
夕闇が近づき、客も途切れた。閉店時間だ。
「ありがとう、サラちゃん。今日はここまでにしよう。・・・引っ越しの準備はできてるのかな?」
「う〜ん、まだですねえ。意外と進まないものです。」
サラちゃんは銀河連邦テラの研究所に就職する。
若いうちにいろんな世界を見ておくのはいいことだ。
「テラの研究所って、すごいよね。」
「はい、自分でも運がいいと思っています。もともと民間の似たようなところで働いていましたけどね。でも、わたし、ここでのお仕事も気に入ってるんですよね。」
半年契約の臨時のアルバイト。急募に来てくれた。助かっている。
前職を辞めて、この惑星で少し、自分の時間を楽しんでいるところだったらしい。
「じゃあ店長、お先に失礼します。また明日、よろしくお願いします。」
エプロンを外し、身支度を整えて出ていく。
いい子だよな。
札を’CLOSED’にし、ロールカーテンを下ろす。
夕飯を食べて、明日の仕込みをして今日は終わりだ。
・・・ん? 何だ? 警報?
端末が勝手に開き、ニュースが流れた。
「臨時ニュースです。ノクティス・ドミナの急襲です。市民の皆さんはシェルターに避難してください!繰り返します、シェルターに・・・。」
ブツッ。
画像も音声も途切れた。
首都に攻撃か?!
こっちにも来るのか?




