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「規定値を超えた苦痛を感知したため、リンクを遮断しました」
VRの中でも気を失う事ってあるんだ、そんな事を思いながらVRタンクベッドの中で目を覚ました。いや、これは気を失っ上に死亡してしまったのでは? ギリギリを攻め過ぎたか、いやはや、やっちまったなぁ。
「再ログインまで15分間お待ちください」
そういえばVR内で死亡するのは初めてか、復活はカタコンベって言ってたけど、体はどうなっちゃうんだろう? 復活して自分の死体とご対面とかちょっとしたホラーだな。
そんな事を思いながら15分待つことにした、タンクベッドに出入りするにも15分だと忙しないし。遺品も回収できるし……遺品? 自分の遺品か~。
「ログアウト予定日まで2日ありますが何かありましたか?」
待っていたら担当さんからの連絡がタンクベッドの中に響いた。この人ずっとモニターしてるの?
「いえ~VRの中で無茶をしちゃいまして、リンク切られちゃいました」
「今日はお外で活動しますか?」
「いえ、このまま再ログインします」
「そうですか、残念です」
心底残念そうな声で担当さんは答えた。ん~お仕事って大変だなぁ。何時ログアウトするかも分からないのに張り付きで待機しなきゃいけないだなんて。夜にログアウトしたら交代の誰かが居るのかな? そんな事を考えているうちに再ログイン時間が来たので早速ログインした。
「青空だ」
知らない天井だって言い損ねた。お約束と言うかちょっと憧れてたんだけどな。起き上がろうとするとミーナちゃんが気が付いて「起きた!」と助け起こしてくれて皆が寄ってきた。辺りを見回すと今日突入した下水道西口前の原っぱに、マントと木の槍で作られた簡易タンカに乗せられていた。
「あ、このマントは」
ジグラートさんのマントがしわくちゃになってしまっていた。
「あ、今どきますね」
「すまなかった」
ガバッと来たジグラートさん。うわまた来たっと身構えたが30㎝位の距離で止まっている。よく見ると私はキラキラの光に覆われていて、それがジグラートさんを押し返している。なにこれ? 触ろうとするとそのまま抜けた私の手はジグラートさんの胸にそのまま触れた。エアハグ状態のジグラートさんと片手で押しとどめる私、絵面が奇妙過ぎる。
「やりすぎてしまった、申し訳ない」
「いえいえ、結果的に何もなくて良かったですよ」
私の手を頬ずりせんばかりに握りしめるジグラートさん、鳥肌が立つのでやめてほしい。
血反吐を吐いて倒れて気を失ったところにマスクで呼吸困難になって本当に死にかけたってバカみたいな自爆だし。そのマスクなのだが手に取ると汚れ一つ無く洗濯したてのように奇麗である。血汚れってタンパク質と油と水分の化合物なので、洗うのにも手間がかかって大変なのだが、何でこんなにきれいなのかしら?
「そのキラキラしたのって、精霊らしいよ?」
へ~そうなのか~。そう思って改めて確認してみると<浄化の精霊 Lv1>と表示されていた。浄化の精霊? 契約状態らしい、契約者は私。ホワイ? 何で??
「あ~君汚染の精霊くんが進化したのね」
浄化の精霊くん曰く、汚染の精霊に惜しげもなく魔力をくれる人が珍しくって懐いていたら、命がけで魔力をぶち込んでくれた(ここが重要らしい)事で、存在進化を果たしたらしい。
「って事で、このキラキラは私の契約精霊っぽいよ?」
試しに浄化魔法を浄化の精霊くんの助力込みで使ってみた、下水道から脱出したばかりの私を含めて皆さん、そこそこ汚れておいででしたからね。
ズバッと光ると、浄化の精霊くんも張り切ってくれたおかげで皆が一瞬で奇麗になる。おお凄い、以前と効果が段違いだ。当社比で倍近い効力がある、あ、<浄化の精霊Lv2>になった、重ねがけの必要すらないね。病気治療の魔法を範囲魔法にして皆にかけると、タンカから立ち上がった。
「ご心配をおかけしました、そろそろ帰りませんか?」
そう言うと、皆がワーッと歓声を上げた。
ああ、私たちはやり遂げたんだなぁ、そろそろジグラートさんは手を放してくれないだろうか、私はそう思った。




